ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「代表のコラム」

2023年度 第3回 全国幼児発達診断テストが終了しました

第874号 2023年11月3日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 今年度最後となる第3回全国幼児発達診断テスト(受験期間:9月23日~10月1日)が終了しました。参加者の皆さまには個人の成績等はお送りしていますが、ここでは、今回のテストの分析と意図お伝えしたいと思います。

今回の参加者は1,800名でした。前回より減少した理由は、第2回の問題が年中児にとっては難しかった結果だと思います。そのため、今回は難易度を少し下げて実施しました。その結果、全体の平均点が50点から54点に上がりましたが、年長児だけを見ると平均点は60.7点と、我々が予想した60点とほぼ同じになりました。それに比べ、年中以下の平均点は42点ですから、ここに1年間の差が見られ、見方を変えれば、これからの学習で理解を深めていくことができるということです。
領域別にみると、数・図形・生活他の領域は全体の平均点を上回りましたが、未測量・位置表象・言語領域の平均点が全体の平均点を下回っています。特に位置表象の領域が43.3%と低くなっています。

具体的に見てみましょう。平均点が50%に届かなかった問題は、次の7問です。

領域問題正解率
1未測量量の移し替え48%
2言語同音異義語40%
3生活他図形系列33%
4位置表象回転推理24%
5交換44%
6位置表象飛び石移動32%
7位置表象地図上の移動49%

特に今回は、左右関係の発展問題としての「回転推理」「飛び石移動」「地図上の移動」の問題が難しかったようです。また、これまでもそうでしたが、今回も空間認識の課題の正解率の低さが目立ちました。空間認識は生活の中で学ぶチャンスはたくさんありますので、ぜひ実行してください。それでは平均点が50%を下回った問題の解説と学び方のポイントをお伝えします。

1. 量の移し替え
左側の黒い線に囲まれた「見本」を見てください。ちらし寿司が最初、入れ物いっぱいに詰められていました。このちらし寿司5つを、それぞれ上の入れ物から下のお皿に取り分けました。さて問題です。
  • 上のどの入れ物から、下のどのお皿に取り分けたのでしょうか?黒い鉛筆で、近くにある点と点を線結びしてください。

ちらしずしが入った入れ物から食べるためにお皿に移し、その移した量と入れ物に残ったおすしを対応づける問題です。たくさん移せば残りは少なく、少なく移せば残りは多いということは生活感覚でわかりますが、2番目、3番目になると論理的思考が必要になります。「残りが多ければ多いほど、移した量は少ない」という論理性が理解できるかどうかが問われます。生活感覚で解ける質問と論理で解く質問とが混在し、広い視点で考えれば「関係づけ」の問題の一つです。

2. 同音異義語
左側の黒い線に囲まれた「例」を見てください。こねこの忍者オハナが、右手を「あげて」います。こぐまの忍者ハルも、ふでまる先生にプレゼントを「あげて」います。どちらも「あげる」という言い方をしているのでを書きました。さて問題です。
  • 「例」の右側に、ある行動をしている絵が6つあります。この中から「あげる」という言い方をすることをしているものを選んで、青い鉛筆でを書いてください。答えは一つではありません。

同じ言い回しで意味の違う言葉「同音異義語」を探す問題です。例にあるような「手を挙げる」「プレゼントをあげる」はわかりやすいと思いますが、今回の問題は幼児には少し難しかったかもしれません。こうした同音異義語はたくさんありますので、生活の中でしっかり身につけてください。

3. 図形系列
  • あるお約束の通りに並んでいる模様が3つあります。それぞれどのようなお約束で並んでいるかをよく考えて、空いている四角いお部屋の中に、黒い鉛筆でその形を書いてください。3種類の模様、すべてについてこたえてください。

並び方の法則性を発見する問題です。最初の部分に、法則性がわかる並び方がでていれば問題ありませんが、最初の模様が消えていたり、最後の問題のように位置の変化に気がつかないとかなり難しい問題になります。約束事を発見する問題の基本です。図形系列の問題では「口ずさんでみる」「指送りで探す」という2つの方法がありますので、問題によって解き方を工夫してみてください。

4. 回転推理
絵を見てください。動物たちが回転テーブルを囲んで、お食事をしています。
  1. ウサギさんが、カレーを食べようと回転テーブルを回すと、パスタは誰の前にいきますか?画面右側のその動物の横の四角いお部屋の中に、赤い鉛筆でを書いてください。
  2. コアラさんが、お寿司を食べようと回転テーブルを回すと、カレーは誰の前にいきますか?画面右側のその動物の横の四角いお部屋の中に、赤い鉛筆でを書いてください。
  3. ブタさんが、パスタを食べようと回転テーブルを回すと、タヌキさんの前にくる食べ物は何ですか?画面右側のその食べ物の横の四角いお部屋の中に、赤い鉛筆でを書いてください。
  4. ネズミさんが、サンドイッチを食べようと回転テーブルを回すと、サルさんの前にくる食べ物は何ですか?画面右側のその食べ物の横の四角いお部屋の中に、赤い鉛筆で×を書いてください。

動物たちが回転テーブルを囲んで食事をしている生活的な場面を使って、いくつかの質問をしています。典型的な問題は次の2パターンです。
  1. ウサギがカレーを食べようと回転テーブルを回すと、パスタは誰の前に来ますか
  2. コアラがお寿司を食べようと回転テーブルを回すと、タヌキの前に来る食べ物は何ですか
テーブルが右に1つ動くと、全部の食べ物が右に1つ動くという法則性を踏まえた、回転推理の問題です。これは観覧車の応用問題ですが、法則性をどう理解し、それをどう応用するかが問われています。2つの異なる問いかけにしっかり答えられるかが問われます。

5. 交換
上側の黒い線に囲まれた「見本」を見てください。ケーキ1個は、ドーナツ2個と交換できます。またドーナツ1個は、クッキー2枚と交換できます。これがお約束です。さて問題です。
  • 下の四角いお部屋の上に書かれたお菓子を、お部屋の中の「?」のついたお菓子と交換する場合、いくつと交換できるでしょうか?「?」がついたお菓子の書いてある右のお部屋の中に、交換できる数だけ赤い鉛筆でを書いてください。

ケーキ1個はドーナツ2個と交換でき、ドーナツ1個はクッキー2枚と交換できるという約束を踏まえ、いくつかの問いに答える問題です。かけ算の考え方(一対多対応)とわり算の考え方(包含除)が問われる問題です。最後の質問は、クッキーをケーキに変える場合、ドーナツを仲立ちに考えなければなりません。この置き換えの発想ができるかどうかがポイントです。かけ算とわり算の考え方につながる大事な問題です。

6. 飛び石移動
上側の黒い線に囲まれた「見本」を見てください。池の上に置かれた石を、こぐまの忍者ハルは1回に1つずつ進み、こねこの忍者オハナは、1回に1つ飛ばして2個ずつ進みます。これがお約束です。
  1. 「見本」のすぐ下の絵を見てください。ハルとオハナが、池の両岸から矢印の向きに、お約束の通りに池の真ん中に向かって同時にスタートします。2人はどの石で出会いますか?出会う石に、黒い鉛筆でを書いてください。
  2. 一番下の絵を見てください。オハナは左側の岸から、ハルは池の上の今いる石のところから、お約束の通りに矢印の向きに同時にスタートします。2人はどの石で出会いますか?出会う石に黒い鉛筆でを書いてください。

小学校高学年で学ぶ「旅人算」的な考え方を幼児に問いかけると、このような問題になります。早さを飛ぶ石の数に置き換え、向かい合ってスタートするとどこで出会うか、追いかけていくとどこで追いつくかを考える問題です。いずれにしても、飛ぶ回数の約束を踏まえ、「作業して答えを導き出す」点がとても大事です。計算で行うわけではありませんので、この作業能力を高めておくことが必要です。

7. 地図上の移動
今からお話しをします。そのお話を聞きながら、ハル、オハナ、サクの3人が、それぞれに歩いた通りに線を解答用紙に書き、最後にたどり着いたおうちにを書いてください。
  1. 赤い鉛筆を手に取ってください。お話を聞きながら、解答用紙にハルがたどった道を赤い線でなぞってください。そして、最後に辿り着いたおうちに赤い鉛筆でを書いてください。ではお話を始めます。
    こぐまの忍者ハルは、今いる場所からまっすぐ進んで、最初の交差点を右に曲がり、次のポストのある交差点を左に曲がり、そこから2番目の交差点を右に曲がって、本屋さんの前を通り、お友だちのおうちにつきました。ハルがついたおうちに、赤い鉛筆でを書いてください。
  2. 青い鉛筆を手に取ってください。お話を聞きながら、解答用紙にオハナがたどった道を青い線でなぞってください。そして、最後に辿り着いたおうちに青い鉛筆でを書いてください。ではお話を始めます。
    こねこの忍者オハナは、今いる場所からまっすぐ進んで、最初の交差点を左に曲がり、次の交差点を右に曲がり、ポストに手紙を出して、そこから2番目の八百屋さんがある交差点を右に曲がり、次の交差点を左に曲がって、お友だちのおうちに着きました。オハナがついたおうちに、青い鉛筆でを書いてください
  3. 黒い鉛筆を手に取ってください。お話を聞きながら、解答用紙にサクがたどった道を黒い線でなぞってください。そして、最後に辿り着いたおうちに黒い鉛筆でを書いてください。ではお話を始めます。
    メガネをかけた子犬の忍者サクは、今いる場所からまっすぐ進んで、最初の交差点を右に曲がり、そこから2番目の交差点を左に曲がり、次の交差点でお菓子屋さんをのぞいて左へ曲がり、そこから2番目の交差点を右へ曲がり、次の交差点を左に曲がって、お友だちのおうちへ着きました。サクがついたおうちに、黒い鉛筆でを書いてください。

お話を聞いて地図上を移動する問題です。このような問題の場合、お話を最後まで聞いて移動するパターンと、お話を聞きながら動くパターンの2通りがあります。今回はお話を聞きながら動く問題ですが、こちらの方が間違いが目立ちます。動く動物の立場に立って即座に左右を判断しなければならないからです。間違いが目立つようでしたら、最後までお話を聞いてから動く練習をしてください。基本は交差点での曲がり方ですから、一つの交差点を4つの方向から入り、それぞれの方向から右・左に曲がれるかを確認してください。

(全20問の意図は、コラム870号に書きましたので参考にしてください)

※次号は11月17日掲載予定です
 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

読み・書き・計算はまだ早い!

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ
お求めは、SHOPこぐまこぐま会ネットショップ 全国の書店・各書籍ECサイトにて

PAGE TOP