ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第2回 全国幼児発達診断テストで見られた子どもの学力の現状

第864号 2023年7月14日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 2023年度 第2回 全国幼児発達診断テスト が終了し、結果が出ました。今年2回目となるテストは、前回よりも難易度が高い問題を出題しました。全20問中、どの年齢の子どもたちも難しいと感じている10の課題について、この内容が将来の教科学習の基礎としてなぜ大事かをお伝えいたします。決して意味のない難問奇問を出題したわけではありません。何が難しさの原因かもお伝えしますので、今後の家庭学習の参考にしてください。また今回参加された皆さまには、同じ趣旨のもう少し易しい問題をオンラインで配布いたしますので、ぜひ練習してみてください。

1. 単位の考え方(長さ)
左側の黒く太い線に囲まれた「例」を見てください。こぐまの忍者ハルが、黒い太線の道を通ってお家に帰ろうとしています。「例」の右側でも、ハルの4人のお友だちが、それぞれ黒い太線で書かれた道を通って、自分のお家に帰ろうとしています。
さて問題です。 右側のお友だちが帰る4つの道の中で、「例」の中のハルが通る道と同じ長さになる道はどれですか?その道の絵に、赤い鉛筆を使ってを書いてください。答えは1つではありません。

小学2年生で学ぶ単位(L,dL,m,cm,㎏,g)は、普遍単位といって世界共通の単位です。その考え方に至るまでには、直接比較・間接比較・個別単位・普遍単位の4段階があり、今回は「個別単位」の考え方が問われています。あるものを1としたときそれがいくつ分あるかを考え、道の長さを考える問題です。正方形の一辺を1と考え、それがいくつ分あるかで判断する「個別単位の考え方」をしっかり身につけてください。


2. 方眼上の位置
絵をよく見てください。これは、それぞれのお部屋の中に動物たちが暮らしている動物マンションです。
  • 上から3番目で右から2番目のお部屋には誰がいますか? その動物に、赤い鉛筆を使ってを書いてください。
  • 下から2番目で1番左のお部屋には誰がいますか? その動物に、赤い鉛筆を使ってを書いてください。
  • 下から4番目で右から2番目のお部屋には誰がいますか?その動物に、赤い鉛筆を使って×を書いてください。
  • 上から4番目で左から3番目のお部屋には誰がいますか?その動物に、赤い鉛筆を使ってを書いてください。

生活空間におけるものの位置を表現する方法の一つです。靴箱であったり、マンションであったり、自分の生活に関係のあるものの位置関係を表すものとして必要です。「上下関係の理解」と「左右関係の理解」が前提になりますが、中でも「左右関係の理解」が難しいと思いますので、右手・左手の理解を確認してから練習してください。


3. 点図形
左側の、黒く太い線に囲まれた「例」を見てください。上のお部屋に描かれた「鳥」を、同じように星を結んで下のお部屋に書きました。
さて問題です。「例」の右側にある「お花」と「ロケット」も、それぞれ上のお部屋と同じ形になるように、下のお部屋に黒い鉛筆で星を結んで書いてください。

斜めの線が多い点図形は難易度が高くなりますので、基礎練習は点の数が少ないもの、斜めの線が少ないものから取り組んでください。図形模写の一つと考えて練習してください。


4. シーソー
4つのシーソーの絵をよく見て、重さの順番を考えてください。
  • 1番重いものはどれですか?下の絵の中から選んで、赤い鉛筆でをつけてください。
  • 1番軽いものはどれですか?下の絵の中から選んで、赤い鉛筆でをつけてください。
  • 3番目に重いものはどれですか?下の絵の中から選んで、赤い鉛筆で×をつけてください。

シーソーを使った重さの関係推理は、三者関係が基本です。今回は四者関係ですので難しかったと思います。間違えた場合は、三者関係のシーソーに戻って練習してください。


5. 反対からの見え方
左側の絵を見てください。鉛筆を中に斜めに立てかけた、全体が真っ白なマグカップがテーブルの上に置かれています。これを、三角耳の子猫の忍者オハナがテーブルの手前から、丸耳のこぐまの忍者ハルはテーブルの向こう側から、それぞれスケッチしています。 オハナが描いた絵は、画面の真ん中の「見本」のようになりました。
さて問題です。テーブルの向こう側からハルが描いた絵は、どんな絵になりますか?「見本」の右側のお部屋の中に、黒い鉛筆で描いてください。ものの向きに気をつけて書いてくださいね。

「四方からの観察」という課題です。特に今回のように反対から見る場合は、自分とは左右関係が逆になる関係ですから、その点が難しいと思います。同じものを見ても「見る位置が違うと違って見える」ことが理解できるか、そして「視点を変えてものを見ることができるか」という点でも大切な課題です。


6. つみ木を使った四方からの観察
こぐまの忍者ハルとその友だちが、4人でつみ木をスケッチしました。それぞれの描いた絵が、画面右側に置かれています。子猫の忍者オハナが描いた絵は、4枚の絵のうちの右下の絵だったので「例」のように、オハナと右下の絵を線で結びました。
さて問題です。画面右側にあるそれぞれの絵を描いたのは、誰でしょうか?「例」のように、それぞれの絵とその絵を描いたお友だちを黒い鉛筆の線で結んでください。

難易度の高い問題です。四方からの観察は、まず生活用品を使って行うのが良いと思います。今回のようなつみ木を使った課題が難しいのは、一つのつみ木を平面的に描く時の表現方法にあります。これに慣れないといけません。その絵を見て立体をイメージすることができるかどうかがポイントです。


7. 一対多対応
左側の黒く太い線に囲まれた「例」を見てください。料理人のトラジさんが、エビを3つずつ入れた生春巻きを4本作り、矢印の右側のようにこぐまの忍者ハルたちにあげました。
さて問題です。使ったエビは全部でいくつですか?その数だけ、下のエビのお部屋の中に、赤い鉛筆でを書いてください。

小学2年生で学ぶかけ算では、九九を暗唱するだけでなくかけ算の考え方を身につけなくてはなりません。かけ算は、「一あたり量×いくつ分」で表されますが、その一あたり量を考えるのが、一対多対応の学習で大事な点です。「お客さん4人に、1人あたり3個あげるには全部でいくつあればいいですか」とか「車3台分のタイヤの数はいくつですか」と問われた時の考え方をしっかり身につけることが大事です。生活場面に合わせて1人あたり何個、1台あたりタイヤは何個というように、一あたり量をしっかり捉え、それがいくつ分必要かを考え、全体の数を考えさせてください。


8. 図形分割
一番上の黒く太い線に囲まれた「例」を見てください。左のお部屋の中の形を黒い線の通りに切ると、矢印の右側のお部屋の中の形に分かれました。
さて問題です。「例」の下にある左のお部屋の中の形をどう切ったら、矢印の右側に並んでいる形ができますか? 左のお部屋の中の形の切る場所に、黒い鉛筆で線をかいてください。

基本図形をどのように切ればいいのかを考える問題です。指示のように切ったらどんな形ができますかという問題とは逆の問いかけになり、切ってできた形からどのように切ればいいかを考える問題ですので、逆思考の課題となります。図形構成との関係を考えて、こうした図形分割の質問に答えられるようにしてください。分割線を入れて考える習慣は、小学校に入ってから学ぶ図形学習に役立つはずです。


9. 三角形の構成と分割
ふでまる先生が、砂漠でラクダを引いています。画面右側の黒く太い線に囲まれた「見本」の三角パズル7枚を使ってラクダの形を作るには、どのような組み合わせになりますか? ラクダの体に、三角パズルの線を黒い鉛筆で書いてください。

三角パズルは図形構成の基本です。小学校で学ぶ図形学習は、図形の性質を理解するのが基本ですが、その前に図形感覚を養わないと、面積や体積の学習になった時に壁にぶつかります。図形のセンスは、図形の特徴を覚えることでは養えません。パズル・つみ木・粘土・折り紙といった素材を使った遊びを豊富にすることによって、図形のセンスを磨いてください。今回の問題が難しかった場合は、実際の三角パズルで作ってみてください。


10. 立方体の回転
最後の問題です。それぞれの面に果物の絵が書いてある積み木があります。よく見てください。
  • このつみ木を右に2回回すと、一番上にはどの果物の絵が来ますか?右下から選んで、その果物の絵の下の四角の中に赤い鉛筆でを書いてください。
  • つみ木を元の場所に戻しました。次にこのつみ木を、左に5回回すと、一番上にはどの果物の絵が来ますか? 右下から選んで、その果物の絵の下の四角の中に赤い鉛筆でを書いてください。

立方体の側面に描かれた果物の絵を使って、右や左に何回か回した時、上に来る面にはどんな果物が描いてあるのかを考える問題です。ペーパーでの出題のためイメージがしづらく、かなり難しい問題になっています。実際のつみ木を使って同じような質問をゲーム化して行うことによって、問題の意図や考え方がよく理解できるはずですのでやってみてください。回転をテーマにした問題は、観覧車・回転テーブル・回転図形とありますが、今回行った立方体の回転が基本となりますので、実物を使っていろいろ試みてください。

今回のテストの出題に当たっては、幼児教室に通わなくても、生活や遊びの経験の上で取り組むことができる問題を可能な限り選びました。ただ、生活感覚で解ける問題だけでなく、問題の意味を理解できなかったり、「考える力」が必要な問題もいくつか含まれていますので、その点が難しかったと思います。また、年長児が取り組むことを前提に問題を作成しましたので、年中以下の子どもたちにとってはやや難しい面もありました。今回解決できなかった問題も、今後継続してテストを受けていただくとお子さまの成長の様子がつかめるはずですので、ぜひ次回も挑戦してください。どこまでわかっていてどこからわからなくなっているかを把握し、適切な声掛けをして経験を蓄積してください。そのためには、どんな課題があるのかを保護者さまが把握しておくことが大事です。小学校の教科学習の基礎は、生活や遊びの中に学びのチャンスがたくさんあることをぜひ知っておいてください。


 年中児の保護者様対象「最新入試の難問解決 考える力を育てる3段階学習法」

7月17日(月・祝)開催
10:30~11:10 対面セミナー/11:10~12:30 入試相談会

いよいよ、来年秋の入試に向けた受験対策が本格化します。最近の小学校入試では、過去問のどの型にも当てはまらない、「解答までの道筋を自分で考え、作業する力を求める」洗練された問題が増えています。こうした問題を自分の力で解けるようになるためには、試行錯誤しながら答えを導き出す過程を繰り返し経験することが必要です。難問であればあるほど、この経験が生きてきます。1年も前から過去問に取り組み、繰り返しのペーパートレーニングによって解き方を教え込むような学習では、決して解決することはできません。
こぐま会では、ペーパー学習に入る前の「体を使った経験」と「手を使った事物操作の経験」を重視し、どんな問題にも対応できる応用力が身につくように指導しています。今回のセミナーでは、最新の入試分析を踏まえ、来年秋の受験に向けてどんな準備をすべきかをお伝えするとともに、こぐま会が実践している「3段階学習法」について、具体的にご紹介いたします。

【対象】年中児の保護者さま
【日時】2023年7月17日(月・祝)
 10:30~11:10 対面セミナー/11:10~12:30 入試相談会
【講師】こぐま会代表 久野泰可
【会場】恵比寿本校
【費用】無料
 詳細・申込方法はこちらをご覧ください

 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

読み・書き・計算はまだ早い!

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ
お求めは、SHOPこぐまこぐま会ネットショップ 全国の書店・各書籍ECサイトにて

PAGE TOP