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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

幼児教育の集大成としての受験を

第863号 2023年7月7日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏休みを過ぎると、年中児の皆さまは1年後に控えた入試に向けて本格的に動き出します。 塾選び、家庭学習用の問題集の選択、非認知能力を高めるための方策等を真剣に考える時期になってきます。こぐま会でも、ゆりクラスや11月から始まる新ばらクラスへの入会が多くなります。1年間しっかりと準備して、入試に備えたいと考えているからです。3歳ごろから準備してきたご家庭にとっても、最後の1年間の学習を有効に進めるためにどうしたらよいかを考える時期になります。長くもあり、また短くもある1年間ですが、この限られた時間でどのように学習を進めたらよいか、皆さまが直面する課題です。

上級学校の入試と違って、小学校受験の対策はなぜ難しいのでしょうか。

1. 教科書のない入試であること
中学校受験には小学校の教科書が、高校受験には中学校の教科書があり、それを徹底して学習することが求められ、何を準備すればよいのかは明確です。しかし、小学校受験には教科書がありません。そのために何をどう準備したらよいのかが分かりません。唯一明らかである、各学校の入試問題(過去問)を教科書代わりにするという、とんでもない発想がまかり通っています
2. 学校側から入試に関する情報があまり開示されていないこと
上級学校の試験では、どんな問題が出されたのかが公表されています。しかし、小学校受験では、最近になって東京都立立川国際中等教育学校附属小学校のように出題内容をあらかじめ公開する学校も出てきましたが、ほとんどの学校で情報の開示はありません。塾向けの説明会では多少の説明はありますが、受験生には直接届きません。そのため幼児教室に通わないと入試情報が取得できないようなおかしな構造になっています。学校側は幼児教室ありきで考えているのでしょうか。学校と塾が持ちつ持たれつの構造はどう考えてもおかしいと思います。本当に情報が必要なのは、受験生の保護者です
3. 合否判定の基準がわかりにくいこと
ペーパーテストや個別テストは点数で客観的に測れますが、行動観察の評価はどうなっているのかあいまいです。しかし、あいまいであるからこそ、塾側の情報操作がまかり通ってしまうのです。その結果、「型」を教え込むことが対策だと勘違いされていますが、学校側はそんな「望ましい型」を求めてはいません
4. ペーパーテストで満点を取れば合格できるといった学力主義の試験ではない
合否の評価があいまいなため、初めて小学校受験を経験される方はペーパー試験で高得点を取ればよいという親自身の体験に照らして判断してしまっています。しかし、仮にペーパーテストで満点を取ってもそれだけでは合格はできません。学力試験・行動観察・三者面接の総合点で合否が決まります

こうした状況下で行われている試験であるため、子どもの成長発達を踏まえない入試対策が行われてしまいます。その最たるものは、「難しいことに早いうちから取り組んで、誰よりも一歩前に出て入試を勝ち抜く」という発想です。3歳ごろから過去問に取り組ませ、できない問題は徹底して解き方を教え込んでいきます。また、最近の入試で重要視されている行動観察に関しては、どんな場合にどう対処するかを「ロールプレイング」で「型」を教え込み「役を演じる」ことが有効だと勘違いしている方が多くみられます。そんな対策をして型にはめてしまったら、学校側からすぐに見抜かれてしまいます。入学試験を受ける子どもたちがなぜ同じような反応をするのかと、学校も困惑しているようです。学校が求めているのは「かけがえのないその子らしさ」です。

私はこうした状況をすでに20年前から感じ取り、拙書「間違いだらけのお受験」(講談社)の中で指摘してきましたが、今でも状況は変わっていません。明らかに「おかしいな」と思いつつ、「受験だから仕方ない」と間違った受験対策をしているご家庭が多いのに驚いています。

しかしちょっと立ち止まって考えてみてください。
  1. 小学校入試の対策は訓練であってはなりません。かけがえのない大事な幼児教育です
  2. 合格は「ゴール」ではありますが、次に続く「スタート」であるということも考えてください。「合格さえすればどんな方法でも構わない」と、将来に続く大事な幼児教育であるということを忘れてしまってはいないでしょうか
  3. 子どもの考える力は教え込んで身につくものではありません。物事に働きかけ、試行錯誤して自ら獲得していくものです。
  4. 幼児期の教育で大事なことは、学ぶことの楽しさをどう伝えるか、主体的な学びの姿勢をどう身につけるかです。ペーパー主義の教え込みの教育では、こうした姿勢は決して身につきません
小学校入試に向けた学習は、幼児期の教育を充実させる動機づけとして大変意味のあるものだと思います。しかしやり方を間違えると、子どもの主体的な学びを阻害する結果になってしまいます。まともな幼児教育の集大成として受験対策を受け止めてください。受験対策は訓練ではありません。入学後に始まる教科学習の基礎として意味のある学習を徹底してください。

間違った受験対策にならないためには、スタート時の選択が大事です。どんな考え方で1年間の学習を進めるのか、その方針をしっかりと持つことが大事です。考える力が求められている入試に対応するために、「なぜペーパートレーニングだけではだめなのか」「どのような考え方で家庭学習を進めたらよいのか」といった、年中児の皆さまのご質問に答える形の対面セミナーを7月17日(月・祝)に実施いたします。昨年も行いましたが、入試の傾向が変わりつつある今、最新の入試問題を紹介し、一緒に解きながら、何が子どもにとって難しいのか、その難しさを乗り越えるために何が必要なのか・・・以下のような内容でお話をさせていただきます。


 年中児の保護者様対象「最新入試の難問解決 考える力を育てる3段階学習法」

7月17日(月・祝)開催
10:30~11:10 対面セミナー/11:10~12:30 入試相談会

いよいよ、来年秋の入試に向けた受験対策が本格化します。最近の小学校入試では、過去問のどの型にも当てはまらない、「解答までの道筋を自分で考え、作業する力を求める」洗練された問題が増えています。こうした問題を自分の力で解けるようになるためには、試行錯誤しながら答えを導き出す過程を繰り返し経験することが必要です。難問であればあるほど、この経験が生きてきます。1年も前から過去問に取り組み、繰り返しのペーパートレーニングによって解き方を教え込むような学習では、決して解決することはできません。
こぐま会では、ペーパー学習に入る前の「体を使った経験」と「手を使った事物操作の経験」を重視し、どんな問題にも対応できる応用力が身につくように指導しています。今回のセミナーでは、最新の入試分析を踏まえ、来年秋の受験に向けてどんな準備をすべきかをお伝えするとともに、こぐま会が実践している「3段階学習法」について、具体的にご紹介いたします。

【対象】年中児の保護者さま
【日時】2023年7月17日(月・祝)
 10:30~11:10 対面セミナー/11:10~12:30 入試相談会
【講師】こぐま会代表 久野泰可
【会場】恵比寿本校
【費用】無料
 詳細・申込方法はこちらをご覧ください

 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

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子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
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