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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年の入試はどのように行われたか (1)

第835号 2022年11月11日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 コロナ禍3回目の入試もすでに多くの学校で発表があり、残すところ一部の私立と公立・国立の入試となりました。今年の入試の総括は、12月11日の「入試結果報告会」にて行うつもりですが、聞き取り調査などで今まで集めた情報の中から、女子校を中心とした入試の様子を第一報としてお伝えいたします。

結論からお伝えすると、予想した通り学力試験は過去2回よりも難しくなりましたし、行動観察もすべてではありませんが、運動系の命令指示行動中心の内容から、集団で一つの課題に取り組む内容に変わりました。以前のように話し合う時間はまだまだ少ないですが、一つの目標に向かって行動を共にせざるを得ない課題が増えました。これは昨年、一昨年とは様子が違います。各学校の詳しい内容につきましては、年明けに行う学校別分析セミナーでお伝えいたします。

学力試験に関しては、以前のコラム(第829号)で、最近の傾向を踏まえて予想される問題を次のように書きました。

(前略)学力試験の対策として次の内容をもう一度理解できているかどうか確認してください。

未測量単位の考え方/シーソー/つりあい
位置表象左右の理解/四方からの観察/飛び石移動/地図上の移動
一場面を使った総合問題/数のやりとり/交換/暗算
図形図形構成―分割/対称図形/重ね図形/回転図形
言語一音一文字/しりとり/言葉つなぎ/言葉づくり/話の内容理解
生活 他常識問題/魔法の箱/回転推理/図形系列

各学校の入試問題を分析していくと、ほとんどがこの中から出題されています。ただ、今年の学力試験の難しさは、コロナ禍以前の難しさと少し違うように思います。それは、ここにあげた「飛び石移動」「交換」「回転推理」のように、時間があっても解けるとは限らない難問は減り、それほど難しくないにもかかわらず、制限時間が短くて全部は終わらない問題が多かったように思います。この出題の仕方は昔からある「知能検査」的な方法で、処理スピードを見る問題です。以前のような思考力を問う問題にはなっていないものが多かったように思います。集中力を見るために「時間」の要素が入るのは当然ですが、幼児期の子どもの学力を測る方法として「時間で切る」方法が適切なのかどうかは大変疑問です。コロナ前までは試験担当の先生方が、幼児の思考力を測る良い問題をたくさん作っていましたが、今年の入試問題を見る限り、その水準までには戻っていないように感じます。しかし、いずれそこまでは戻るはずです。

では、今年の学力試験はどんな傾向があったのでしょうか。少しまとめてみましょう。
  1. 「話の内容理解」がこれまで以上に重視され、問題も充実している
  2. 「しりとり」に代表される「一音一文字」にからむ問題は、ほとんどの学校で出されている。ただし、同じ「しりとり」でありながら、すべて質問の仕方が違う
  3. 思考力を問う問題の重要な一つである「法則性の理解」の中では、「図形系列」の問題が多く出され、しかも形を変えて工夫された問題が多い
  4. 数の問題は、予想通り「一場面を使った数の総合問題」が中心であり、「数の多少」「数の増減」「一対多対応」「等分」など、四則演算につながる課題が多い
  5. 図形課題については、図形構成・図形分割の中に工夫された問題が多くみられる
  6. 手先の巧緻性課題は制作課題と絡むケースが多いが、生活に密着した形で出されたものも多い
  7. 昨年に比べ運動系の命令指示行動は少なくなったが、その代わり、制作課題も含め指示作業が増えている。指示がしっかり聞けるかどうかは、運動課題だけでなく、こうした形で問われることが多い

すべての学校がこれに当てはまるわけではありませんが、全体の傾向として押さえておく必要はあります。基礎をしっかり身につけ、繰り返し練習し、短い時間で処理できる力をつけないといけません。「集中力」につながる学ぶ意欲を育てる教育は、教え込みのスパルタ指導では実現できません。


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