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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第2回 全国幼児発達診断テスト 出題意図の解説

第824号 2022年8月5日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 7月14日から3日間にわたって行われた「第2回 全国幼児発達診断テスト」 の結果につきましては、前回のコラムでお伝えしました。今回はそれぞれの問題の難しさや、なぜこの問題が幼児期の「考える力の育成」に必要なのか、また小学校の学習とどうつながっているのかなどを解説したいと思います。

1. 旗づくり(順対応)
大きさの違う5枚の旗地と長さの違う5本の棒を組み合わせて旗を作ります。「ちょうどよい旗」といっているのは、長い棒には大きな旗地、短い棒には小さな旗地をつけるという意味ですが、これは大きさと長さを系列化し、量の多いものから順番に結びつける問題です。ここで問われるのは長さと大きさの系列化で、数概念を構成する順序数の考え方につながる大事な学習です。
2. 広さくらべ(個別単位)
方眼を使って作った芝生の庭の中で、同じ広さの庭を探す問題です。単位の学習は小学2年生で行い、長さ・量・重さなどの単位を学びます。センチメートル・リットル・キログラムといった普遍単位を学ぶ前に、直接比較~間接比較~個別単位~普遍単位の流れはしっかり把握しておく必要があります。今回の課題は、あるものを一単位としたときに、それがいくつ分あるかによって比較できるという「個別単位」の考え方に基づくものです。今回は広さで行いましたが、長さや量でも同じような学びが可能です。
3. 方眼上の位置
下駄箱の位置などを表す場合、「下から~番目の右から~番目」といった表現を使います。方眼上の位置を表す方法を身につけることによって、生活の中における位置関係をしっかり捉えることができますし、将来の図形的課題を解決する場合に役立つはずです。また、縦軸と横軸の関係で、一つの場所が決まるという学びも大事です。
4. 量の等分(3等分)
等分には、量の等分と数の等分があり、数の等分はわり算の考え方につながっていきます。今回は量の等分で、しかも3等分です。量の等分は、2等分をまず学び、そのあと半分のまた半分で4等分を学びます。ここまでは生活の中でよく経験することですが、3等分となるとやや難しくなります。今回は、の形を食べ物や折り紙に見立て、それを3等分する方法を考える問題です。将来の図形学習でも役立つ考え方です。
5.数の等分
ミカンを4人で仲良く分けると、1人がいくつもらえていくつ余るかという「あまりのある数の等分」です。わり算の等分除につながる考え方です。生活や遊びの中にあるこうした経験が四則演算の基礎になっていくわけですが、あまりが出る場合と出ない場合では、難易度に違いがあります。1人に1個ずつ配ることの繰り返しで、配る人数と手元にある数を常に意識して配る操作ができれば、あまりがある場合でも問題なく解けると思います。
6. 同図形発見
似たような絵の中からお手本と同じ絵を探す問題ですが、どこが同じでどこが違うかを判断するという意味で、観察力が問われる問題です。答えが出たら、どこが違うかを言語化できるかどうかやってみてください。
7. 点図形
お手本と同じ形を、点を結んで描く課題です。点の数が多ければそれだけ難しくなりますが、それ以上に斜めの線をどれだけ使ってあるかどうかが難易度を決める要素になります。最初は縦横で構成された見本に取り組み、そのあと斜めの線が多い形に挑戦してください。難しい課題の場合は、何に見えるかといった見立てをするとよいと思います。
8. 話の内容理解
お話を聞いて、話の中味と描かれた絵の違いを探す問題です。難易度はいろいろありますが、今回の問題はかなり易しい課題です。「聞く力」を高めておくことは、すべての学習の基礎となります。
9. 分類(二重分類)
縦軸と横軸の交差したところは、縦の仲間にも入り、横の仲間にも入ることになります。残り2つ(左右か上下)の共通点を探し、縦と横のどちらの仲間にも入るものを探さなければなりません。2つの観点で共通性を探す課題ですから、方眼上の縦軸・横軸の意味をしっかりと把握しておかないとできません。複数の視点を持つという意味で、ものの見方を鍛える大事な課題です。
10. 仲間あつめ
提示されたものを2つの仲間に分ける問題です。この場合も、必ずしも一つの基準ではなく、複数の基準が持てるものがあります。今回は同じものを使って「乗り物と生き物(虫)」あるいは「飛ぶものと走るもの」というように、違った視点で仲間分けできます。この「視点を変える」という見方が大事です。
11. 関係推理(言葉による関係推理)
3人がせいくらべをした結果の説明をお話で聞き、それに基づいて3人の高さの関係を考える問題です。シーソーのように、映像になっていないところで関係を考えなければなりませんから、聞き取りの練習にもなります。
12. 関係推理(シーソーの四者関係)
3つの場面から4つのものの重さの関係を考える課題です。重い順や軽い順を考えたり、2番目に重いものだけを探したり・・・といろいろ質問の仕方はありますが、物事を関係づける論理性を身につけるためには、いい課題だと思います。
13. 四方からの観察(具体物)
家を描いた4枚の絵を見て、どこから描いた絵かを考える問題です。煙突の位置やドアの位置などがどのように見えるかを手掛かりに、描いた場所を考えなくてはなりません。一つのものが、場所が違うと見え方が違うということがこの課題の理解の前提になります。違う視点でものを見ることの大切さを、こうした問題を通して身につけたいものです。
14. 四方からの観察(半具体物)
積まれた6個のつみ木の見え方を、その場に行かないで判断する問題です。つみ木の場合、重なって見えたり隠れたりするものがありますから、その点をしっかり判断することと、つみ木が平面的に描かれている場合がありますので、その対応ができるかどうかが問題になります。つみ木の場合は、前後左右の4つの視点だけでなく、上下も可能になりますので、6つの方向からの見え方が問題になる場合もあります。
15. 一対多対応
1つの串に3個のお団子が刺さっている場合、4本の串では全部で何個のお団子が刺さっているかを考える問題で、かけ算の考え方(3×4)の基礎学習となります。3個のお団子をまとめて1本分と考えることができるかどうかがポイントです。このようにかけ算の考え方は、ひとまとまりにしたものがいくつ分あるか考える問題ですので、かけ算の式は(一当たり量)×(いくつ分)であらわすことができます。その基礎をこうした課題を通して学んでいくのです。
16. わり算の考え方(包含除の課題)
16本の鉛筆を4本ずつ箱に入れるには箱はいくつ必要ですかという問題で、これは小学3年生で学ぶわり算の包含除の考え方です。数式は使いませんが、このように具体的な場面で数のまとまりを作るという経験は大事です。
17. 図形分割
の形を4片に切った時、できる形とできない形を判別する問題です。小学校高学年で学ぶ図形問題において、どのように分割すればよいのかが問われることが多いと思います。そうした際に役立つ「図形分割」のセンスを、こうした問題を通して身につけたいものです。
18. 同じ並び方を探す
方眼上にたくさん並んだそれぞれのマスに×の形が描かれていて、その中からお手本(2×2の4つのマスの中にそれぞれ形が描かれている)と同じ並び方をしているところを探す問題です。どの形に着目して作業するかが問われます。
19. 図形系列(並び方の法則性を発見する)
ぐるっと1周つながっているマス目の中に、×の形が描かれています。規則正しく並んでいる形の並び方の法則性を見つけ出し、それをあてはめて空欄を埋める問題です。規則性を判断する練習として最適です。
20. 回転推理(つみ木の回転)
立方体つみ木の周りの4つの面に果物の絵が描いてあり、右や左に何回か回転した時、上にくる果物を探し当てる問題です。4回回すと元に戻るという規則性と、右に回した時と左に回した時に現れる果物の順序が違うということなどを踏まえ、回転の意味をしっかり捉えることができるかどうかが問われます。「右に3回回すことは、左に1回回すことと同じ」という置き換えができるかどうかも大事です。

以上、第2回テストの内容について何が大事か、将来の教科学習とのつながりが何かなど、簡単に説明いたしました。こうした問題を解いていく力は、生活や遊びの中で身につけていくものですから、ぜひそうした目で普段の生活を見直し、自己教育の場として活用してください。


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