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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第2回 全国幼児発達診断テストの結果速報

第823号 2022年7月29日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 7月14日~16日の3日間にわたって行われた 第2回 全国幼児発達診断テスト では、合計2,629名の方にご解答いただきました。

申込者数3,772名
試験実施者数2,748名
最終解答者数2,629名

5月に行われた第1回と比べるとおよそ倍の人数の方が参加されたことになります。今回のテストは年中2月~年長4月に学習する内容にあたり、「ひとりでとっくん365日」の05~08(基礎課題の後半)に即したものです。そのため難易度は第1回目よりも高くなり、特に年中児の皆さまにとっては、予想通り前回よりも難しい内容になりました。ところで、今回のテストの平均正解率は以下の通りです。

全体62%
年中児52%
年長児68%

年中児の皆さまがよく頑張ったと思います。また、領域ごとの正解率は以下のようになりました。

領域全体年中年長
未測量52%44%57%
位置表象61%48%68%
60%48%66%
図形73%60%81%
言語75%68%79%
生活 他64%55%69%

第1回同様、未測量領域の課題が難しかったようです。では問題ごとの正解率を見てみましょう。

領域テスト内容正解率
年中年長
1. 未測量順対応 量の系列化68%82%
2. 未測量広さくらべ 個別単位16%19%
3. 位置表象方眼上の位置51%71%
4. 未測量量の3等分58%55%
5. 数数の4等分60%76%
6. 図形同図形発見46%65%
7. 図形点図形59%79%
8. 言語話の内容理解58%77%
9. 生活 他二重分類38%56%
10. 生活 他仲間あつめ82%89%
11. 未測量話による関係推理35%51%
12. 未測量シーソーの四者関係24%32%
13. 位置表象四方からの観察67%86%
14. 位置表象つみ木を使った四方からの観察35%44%
15. 数一対多対応 かけ算の考え方17%33%
16. 数包含除 わり算の考え方57%79%
17. 図形図形分割60%81%
18. 生活 他同じ並び方を発見する51%80%
19. 生活 他並び方の法則性68%79%
20. 生活 他回転推理53%70%

以上の結果を踏まえ、今回のテストでわかったことを整理してみます。

1. 難易度は適切であったのか
問題を作成するにあたって考慮したことは、年長児の正解率が70%前後になる難易度にすることでした。実際の正解率は68%でしたから、適度な難易度だったといえます。ただ、小学校受験をされる方にとっては、今は応用段階の学習が終わった時期ですから、少し物足りなさはあったかもしれません。年中児の皆さまにとっては、どこまで正解できるか、内容が難しすぎるのではないかと心配していました。年中児966名の正解率が52%と前回よりも下がりましたが、予想以上に頑張った結果が出たと思います。テスト参加者2,629名のうち、通塾していない方が63%という数字を踏まえると、いかに生活や遊びの中で多くのことを学んでいるかということがわかります。訓練された子どもだけができる問題になっていないということも、お分かりいただけると思います。

2. 年長児にとっても難しかった問題は何か
今回のテストで、年長児の正解率が50%に届かなかったのは次の4つです。
  • 個別単位の考え方による広さくらべ
  • シーソーの四者関係
  • つみ木を使った四方からの観察
  • かけ算 一対三対応の考え方
未測量や位置表象というのは、普段あまり意図的に学ぶことのない領域だと思いますが、将来の学習にとってはどれも大事な課題です。機械的なトレーニングによって解ける問題ではなく、「考える力」が求められています。広さくらべは真四角を1単位としたときに、どれが一番広いか(狭いか)を考える問題ですが、今回は三角2つで真四角1つ分という図形的なセンスが必要になる点が難しかったようです。シーソーの四者関係は三者関係の発展ですが、やはり四者になると関係が複雑になり、難しかったように思います。四方からの観察は、違った視点でものを見ることができるかという大切な課題ですが、具体物でできても、つみ木のような半具体物になると難しくなることがわかります。最後の一対三対応の問題は、串団子にさしてあるお団子の総数を当てる問題ですが、「なくなってしまったものをあると仮定して考える」点が難しかったのかもしれません。このあたりは小学校の入試でよく出題されるものです

3. 年中児と年長児の正解率に20%以上開きがあったものは何か
年長児にとって難しい問題は、当然年中児にとっても難しい問題ですが、今回のテストで正解率に20%の開きが出た問題は次の通りです。この点をしっかり把握しておく必要があります。ある程度時間が解決する問題といえるかもしれません。ものの見方が備わってくれば、多くの場合解決すると考えられます
  • 方眼上の位置
  • 点図形
  • 図形分割
  • 包含除の考え方
  • 同じ並び方を探す

4. 逆に年中児もよくできていた問題
  • 順対応
  • 仲間あつめ
  • 図形系列
  • 四方からの観察(具体物)
  • あまりのある等分
  • 図形分割
年長児にとって難しいとされる「四方からの観察」や「あまりのある等分」が、60%以上の正解率であることには少し驚きましたが、生活的な課題であるため、意図的な学習をしなくても考え方は身についているのでしょう。訓練によってではなく、生活経験や遊びの中で考え方の基本が身につけば、通塾しなくても十分対応できることがわかります

5. これから何を教育課題にしていったらよいのか
5月と7月に行った2回のテスト結果を見て、まず抱く感想は次の通りです。
  • 年長児を対象に作成した問題だったが、年中児にとっても意味のあるテストであった
  • 年長児の正解率が低いのは、論理的思考力が求められる問題であり、機械的なトレーニングによってできてしまう問題ではない。ということは、小学校入試のための準備教育も「考える力」を育てる教育に重点を置かなければいけない
  • 1年間の差がありながら、年長児が課題としている問題を、年中児でもある程度解決可能だということがわかれば、年中クラスで行う学習内容をもう少し難しいものにしても学習は可能だといえる。しかし、だからといってすべてをペーパーで行うのではなく、具体物やカードを使った試行錯誤する時間を保障し、自ら答えを導き出す学習をしなければならない。そう考えると、学習するテーマだけでなく、学習の方法もよく検討する必要がある

今回のコラムでは、第2回全国幼児発達診断テストの結果を速報の形でお伝えしましたが、次回はなぜこうした学習が将来の教科学習の基礎として大事かをお伝えします。第1回目のテスト結果分析の際にもお伝えした通り、このテストは小学校受験のための模擬テストではありません。しかし、入試で取り上げる内容も多く含んでいます。50年前、知能テストが小学校入試の問題であった時代から幾多の変遷を経て、今や入試問題はとても洗練された「教科学習の基礎を問う」問題に変わっています。機械的なペーパートレーニングは、今の時代の入試には適合していないのです。次回、第3回目のテストは10月に行う予定ですが、問題はより難易度を高めた応用問題になると思います。ひとりでも多くの皆さまが参加されることを願っています。

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