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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試速報(3) 一音一文字の発展問題が増える

第792号 2021年11月26日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 前回のコラムでは、女子校10校のペーパー試験の内容をご紹介しました。今回からは入試問題をより詳しく分析し、多く出された課題を数回に分けて領域別に取り上げていきます。今回は、言語領域の出題の一つである「言葉の理解」に関する問題です。言語領域の入試問題は大きく分けて3つあります。1つ目は「話の内容理解」で、ほとんどの学校で出されます。2つ目は「お話づくり」です。ペーパー中心の学校ではあまり出題されませんが、今年は行動観察や面接において表現する力が重視されました。その意味で今年の入試は以前と比べ「話す力」が求められています。そして3つ目は「言葉の理解」に関するものです。その中でも一番よく出題されるのが「一音一文字」に関する問題です。一音一文字という考え方は、日本語の特徴である、一つの音が一つの文字を表し、それがいくつか組み合わさって言葉を形成しているという日本語理解の基本であり、文字指導の最初に行う学習です。この課題は、ある時期まで入試では全く出されることはなかったのですが、こぐま会の授業では基礎教育の内容として重視し、最初から取り入れ、問題集も発行してきました。今では多くの学校が入試で取り上げるようになり、言語領域の中心的な課題となりました。小学校入試において、国語科につながる典型的な問題が出題されているという事実は大事です。今年は女子校10校中7校で出題されています。その中味をよく見ると、いくつかの段階があるのがわかります。
  1. 基本的な一音一文字の考え方を問うもの
  2. 同頭音・同尾音の発展としての「しりとり」
  3. しりとりの変形としての「言葉つなぎ」
  4. 言葉つなぎの発展としての「言葉づくり」
この4つが基本ですが、基本から応用へと発展しています。今年はそれぞれの観点での出題が見られましたので、まずそれをご紹介しましょう。

1. 一音一文字の考え方

2022年度入試 「一音一文字(A校)」
《れい》のお部屋を見てください。「シカ」の「し」の場所のが塗ってあります。このようにある音の場所を塗ります。
  • 下の3つのものの名前の中には、3つとも同じ音が入っています。その音がつく場所を探して、そのを塗ってください。
2022年度入試 「一音一文字(B校)」
ここにあるものの中から、これから言うものを探して印をつけてください。
  • 「リンゴ」「ゴリラ」のように「濁る音」がつくものにをつけてください。
  • 「ロケット」のように「つまる音」がつくものに◎をつけてください。
  • 「おーさま」のように「のばす音」が入るものに×をつけてください。

4つある課題の中の一番基礎となる問題です。A校の問題は、3つの絵を見てどこに何の音がつくのかを調べ、同じ音を探してその場所のを塗るという課題です。シマウマ・カマキリ・ゆきだるまの中で、「ま」が共通して使われている同じ音と判断し、その場所を塗る問題ですから、やや応用的な問題です。B校の問題は、濁音・促音・長音について聞いています。特に長音表記は1年生でも難しい課題ですが、それが入試で出題されています。一音一文字の問題は他の学校でも出題されています。

2. しりとり

2022年度入試 「しりとり(C校)」
《れい》のお部屋を見てください。下から順にしりとりでつなぐには、星のマークのところには何が入ればいいですか。「スイカ」と「目玉焼き」の間に「カモメ」が入ると、「スイカ − カモメ - 目玉焼き - キツネ」としりとりでつながります。なので「カモメ」に星の印がついています。
  • 同じように、下の絵からしりとりでつながるようにするには、印がかいてあるところに何を入れればよいですか。右の絵に、それぞれ印をつけてください。

一音一文字の発展として次の課題は、「同頭音・同尾音」です。「最初に『あ』のつく言葉をたくさん言ってください」、とか「最後に『ん』のつく言葉をたくさん言ってください」といった課題ですが、それが発展して「しりとり」につながります。前のことばの最後の音を次のことばの頭に持ってくる「言葉遊び」ですが、その基礎は一音一文字です。しりとりの問題は、ルールの理解を前提に、後ろにつなげるだけでなく、空欄を埋めたり、最後から戻って並び方を考えるなどいろいろ工夫されて出題されます。上の問題も、言葉のつながりを考えて空欄を埋める課題ですから、やや論理性が求められます。楽しいしりとり遊びが、ペーパー問題になると相当難しい問題に発展していきます。いろいろな問題の対策として一番良いのは、後ろから戻る「逆しりとり」を繰り返し練習することです。しりとりの問題は他の学校でも出題されています。

3. 言葉つなぎ

2022年度入試 「言葉つなぎ(D校)」
1番上のお部屋を見てください。名前の下から2番目の音を使って、しりとりのようにつなぎます。左の「ジャガイモ」の下から2番目の音は「い」なので、右の「イタチ」とつながります。「イタチ」の下から2番目は「た」なので、次に「タケノコ」につながります。このようにつなぐと「タケノコ」が最後になるので、「タケノコ」にがついています。
  • 同じように、左のお部屋のものからはじめて、下から2番目の音でつないだとき、最後になるものにをつけてください。絵は全部使います。

しりとりは、前のことばの最後の音が次のことばの頭にくるようにつないでいくものですが、この問題は「下から2番目」の音でつないでいく、しりとりの発展問題です。下から2番目が何の音かを素早く発見し、つないでいかなければなりませんが、「上から2番目の音でつなぐ」「真ん中の音でつなぐ」など、入試ではいろいろ出されています。上の問題では、機械的につなぐのではなく、つないだ時に最後になる言葉だけを答えるため、より正解率が下がります。

4. 言葉づくり

2022年度入試 「言葉づくり(E校)」
左側を見てください。練習してみましょう。
左上のお部屋にあるものの名前を、まわりにあるものの最初の音を使って作ります。何を使えばいいですか。使うものにをつけてください。
そうですね。「サクラ」を作るには、「サメ・クジラ・ランドセル」の最初の音を使います。をつけられましたか。
  • では、同じように右の問題をやってください。

どこに何の音がつくかを考えさせるもう一つの応用問題は「言葉づくり」です。上の問題は、名前の最初の音を使って「バケツ」や「滑り台」をつくる時、どの絵を使ったらよいかを考えさせるものです。今回は最初の音であるため比較的わかりやすい課題ですが、「上から2番目の音を使って」とか「真ん中の音を使って」となると、そこにつく言葉を探すことから始めなければならず、かなり複雑な問題に変化します。

以上、4つの柱の典型的な問題をご紹介しましたが、こうした将来の国語科につながる課題が入試問題になるということは大変好ましいことです。基礎教育の課題がそのまま入試問題になっていく、こうした学校側の問題づくりを歓迎したいと思います。基本は「一音一文字」ですが、その基本を踏まえながら、入試では思考力が必要な工夫した問題づくりをしていることがよくわかります。応用課題はいくつもありますが、まずその基本となる「一音一文字」の考え方をしっかり身につけることが大事です。こぐま会では、すでに年中(ゆりクラス)10月の授業で、以下のような内容の授業を行っています。

Step1-5 言語「同頭音・同尾音、しりとり」
(1) 一音一文字
  1. 物の名称がいくつの音でできているかを判断する。
  2. どこに何の音がつくかを考える。
  3. 例:最初に「あ」のつく言葉をさがす。(同頭音)
  4. 例:最後に「ん」のつく言葉をさがす。(同尾音)
(2) しりとり遊び
  1. しりとり遊びのルールを確認し、全員でしりとり遊びをする。
  2. 黒板に貼られた10枚のカードをしりとりでつながるように、全員で考える。
    ・最初のカードを指定したとき
    ・最初のカードを指定しないとき
(3) 聞き取りの練習
カセットテープの指示を1回で正確に聞き取る練習をする。
  1. おはじきを使って
    • 赤いおはじきを7個、お皿の中に入れてください。
    • 青いおはじきと緑のおはじきを3個ずつお皿の中に入れてください。
    • 赤いおはじき2個と黄色のおはじき4個をお皿の中に入れてください。
    • 青いおはじき6個を横1列に並べてください。
    • 緑のおはじきを机の上に6個出し、それを半分ずつに分けてください。
  2. 学習ボードを使って
    • を緑に塗ってください。
    • を半分だけ青く塗ってください。
    • を青に、◇を赤く塗ってください。
    • ミカンのお部屋に赤いを4個かいてください。
    • リンゴのお部屋に緑のを3個、青のを4個かいてください。

「言葉の理解」に関しては、ほかにも動詞の理解・反対言葉・副詞の理解、助詞の理解などありますが、やはり一番多いのが、この「一音一文字」ですのでしっかり身につけてください。


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