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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試改革のきっかけになるかもしれない

第789号 2021年11月5日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 都内の入試が11月1日から始まり、すでに合格発表も行われています。コロナ禍の中での2回目の入試になりますが、幸い感染者数が減少し、学校側も感染対策を万全に取りながら昨年とは違う雰囲気で入試を実施できたのではないかと思います。出題された問題が昨年とどのように違うのか、その総括はしっかり分析してこの場で報告するつもりです。

私が1972年に幼児教室の教師として現場に立ってから、来年で50年を迎えます。この50年間の小学校入試の変遷を現場で見てきた私にとって、最近の動きは小学校入試が大きく変化していく予兆を感じさせます。それは次の2点です。
  1. 受験するご家庭の考え方の変化
  2. 試験を実施する学校側の、入試に対する考え方の変化

これを簡単にまとめると次のようになります。
  1. 伝統校の教育に対する期待だけでなく、これからの時代を生きる子どもにとって何が大事かを考え、学校に期待する価値観が多様化してきている。特に将来の受験に対する期待と、外国語教育に対する取り組みなど、教育内容に対する期待で学校を選ぶ流れができている
  2. 多くの子どもたちに受験してもらうために、学校は広報活動を強化し、働く母親に寄り添った改革を実行している。また、合格者の辞退をなくすために第1志望校であるかどうかを見極める対策をとっている。そのために願書や面接を重視し、行動観察で「子育ての成果」を見ようとしている
  3. 長い間念願であった「入試情報の開示」が始まるかもしれない。来年4月に開校する東京都立立川国際中等教育学校附属小学校 が情報を開示したため、それに多くの学校が続くことになればと期待している

この50年間、入試情報を可能な限り学校側から開示していただきたいと私は言い続けてきました。情報が開示されないと、どのような準備をして入試に臨めばよいのかが分からず、その結果誤った情報で子どもたちが振り回され、受験のための間違った対策で成長の芽を摘み取られていくことも多くありました。まともな教育によって「受験対策」を行い、そのことが将来の学びの基礎になっていくためには、正確な情報開示が必要です。それがなされてこなかったのは、「小学校入試の不思議」の一つですが、都立立川国際附属小のホームページ には、「学校案内」だけでなく、「入学案内」メニューの中に「入学者決定方法」のページが設けられています。そこには適性検査問題の出題方針や問題例まで紹介されており、何を準備すればよいかが明確に示されています。小学校入試は教科書のない特殊な入試です。ですから、このような出題方針や出題例を示すのは当然だと思いますが、これまでの私立小学校の入試では一切なされてきませんでした。こちらのほうが異常です。受験者の数すら公表してこなかったわけですが、都立立川国際附属小においては、一般枠の応募状況が11月1日付で掲載されています。約31倍の倍率です。適性検査問題例を実際に解いてみることができる動画も配信されており、そのきめ細かさに驚きます。なぜこうした情報開示が私立ではできなかったのか。いろいろ理由があると思いますが、都立初めての小学校入試をきっかけに、私立小学校においても情報開示が進むことを期待しています。

「都立小中高一貫教育校入学者決定における適性検査問題(例)の出題方針等について」(「入学案内/入学者決定方法」内) の中の、「2. 出題の基本方針」では次のように述べています。

"
1. 情報を整理し論理的に物事を考えたり、道具などを適切に使用したりする力をみる 2. 集団で取り組むことをとおして、協調性、伝える力や発想する力などをみる 3. 指示を正しく理解し、体を動かす力をみる "

また、「3. 検査方法及び出題の方針」では、第1日の筆記試験と第2日の集団活動・インタビュー・運動遊びについて説明があります。「4. 適性検査問題(例)の解答」も示されています。内容分析に関しては今年の入試が終わった段階で行うつもりですが、出題方針を見る限り、私たちが取り組んできた「セブンステップスカリキュラム」にすべて含まれ、幼児期の基礎教育として大事な内容が網羅されています。特に第2日の内容に関する出題方針を見ると「行動観察」がどのように行われ、非認知能力として何が大事なのかも示されています。そうした観点から見ると、今盛んに行われている「型を教え込む」行動観察の訓練がいかに間違っているかを暗示しています。

こうした情報開示の動きは今後広まっていくと思います。特に新設校や中学校受験を目指す学校等においては、すでに合否判定の方法や出題された問題の解説が行われ始めています。こうした動きの中で、小学校受験の在り方が改革されていくことを願っています。

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