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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

シンガポール在住日本人向けオンラインセミナー

第755号 2021年2月5日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 シンガポールで「KUNOメソッド」による教室実践が始まって、今年で4年目を迎えます。2017年2月より学習塾KOMABAと提携し、幼児を対象とした「KOMABAキッズ」 での指導が始まりました。コロナ禍で渡航が難しくなる前までは1年に2~3回現地に赴き、体験授業や教育セミナーを行ってきました。3年間の実践が皆さまに評価され、現在60名近い子どもたちが、日本で行っている教育と同じ内容で「考える力」を育てるための楽しい授業に参加しています。今年はこれまでの指導に加え、小学校受験を目指す子どもたちの講座も始まります。こぐま会では、現在シンガポールの他にもベトナム、タイ、インドネシア、台湾、中国、韓国で教室指導や教材出版事業を行っていますが、大勢の皆さまに支持され、KUNOメソッドで学ぶ子どもたちは増え続けています。中でもシンガポールでの受講者拡大には大いに期待しています。

2月1日の新年度開講に向けて、1月30日(土)の現地時間16時から1時間半ほど、オンラインセミナー(リアルタイム配信)を実施しました。70名近くの方が参加されたようです。これまでは現地に出向き、日本人会館や学習塾KOMABAの教室にお集まりいただいて講演会を行ってきました。コロナ禍で一般的になったオンラインセミナー形式で講演会が実施できたことを評価し、コロナ終息後も続けられる新しい時代の取り組み方法として定着させていきたいと思っています。今回は「幼児期に大切な10の思考法」という演題で、幼児期の基礎教育の大切さをお話しさせていただきました。その内容は以下の通りです。

1. 今の子どもたちが社会人になる頃の社会はどうなっているのだろうか
  1. AI社会の到来
  2. 予測がつかない社会の到来を控え、教育の在り方も議論されている
2. ジェームズ・ヘックマン氏の主張が注目され、世界中で新しい幼児教育の取り組みが始まっている
  1. 著書「幼児教育の経済学」でヘックマンが主張したこと
  2. 新しい社会に必要な人材育成のために、さまざまな教育改革が始まっている
3. 日本でも取り組みが始まった幼児教育の改革
  1. 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿
  2. 幼児教育の無償化だけでは改革できない
  3. 小学校とのつながりを考えた保育を
4. 幼児教育が大事だということは誰もが認識していながら、系統だったカリキュラムが確立されていない
  1. 「幼稚園では遅すぎる」(井深大氏)の主張
  2. KUNOメソッドはどのようにして作られてきたのか
5. 幼児期に大切な10の思考法について
  1. ものごとの特徴をつかむ
  2. いくつかのものごとを比較する
  3. ある観点に沿って、ものごとを順序付ける
  4. 全体と部分の関係を把握する
  5. 観点を変えてものごとを捉える
  6. ものごとを相対化してとらえる
  7. 逆に考える
  8. あるものごとを、ひとまとまりにして捉える
  9. 規則性を発見する
  10. AとB、BとCの関係から、AとCの関係を推理する
6. KOMABAキッズでの取り組み
  1. 3つの教育理念
    (1) 教科前基礎教育
    (2) 事物教育
    (3) 対話教育
  2. 6領域指導
    (1) 未測量
    (2) 位置表象
    (3) 数
    (4) 図形
    (5) 言語
    (6) 生活 他

講演会の後にはたくさんの質問を受け、私の考えをお伝えしました。
  1. 幼児期の言語学習について
  2. 絵本の読み聞かせについて
  3. 主体性を育てるための工夫
  4. 家庭学習の課題と方法について
  5. オンライン授業の今後の可能性について
  6. コロナ禍の小学校入試はどう変わったのか
  7. 海外からの小学校受験について

そのほかにも子育てに関する質問がいくつかありました。海外在住の幼児を持つご家庭の一番の関心事は「言語学習」の在り方です。母国語をしっかり身につけなければならない幼児期に海外で生活を送る場合、日本語の習得について心配されるのは当然です。これまでも、多くの海外講演でいつも受けてきた質問です。「言語で論理を育てる」という国語科の考え方を紹介した後、家庭で実践できるいくつかの方法をお伝えしました。逆に考えれば、日本の子どもたちの英語教育をどうするかという問題でもあり、しっかりとした方針を持たないといけません。特異な環境の中で、言語を習得するために大事なことは、使う機会をどう増やすかにあると思います。海外における日本語習得も、日本における英語習得も、使う機会がない語学学習は効果が期待できません。そのために適切な環境をどうつくるか。私がこれまで海外在住の日本人から受けた相談を踏まえて、私の考えをお伝えしました。

最後に、コロナ禍で行われた初めての小学校入試の様子を少しお伝えしました。海外から小学校受験をする方も多くいらっしゃるようでしたので、時期を改めて海外在住の方の小学校受験に向けた準備の在り方等についてお伝えするセミナーを開催することをお約束して、セミナーを終えました。今回のセミナーは私にとっても貴重な経験でした。これまでも多くのオンラインセミナーを会員向けに行ってきていますが、リアルでのセミナーは初めてであり、質問等を受け付け、それに対して答えるといった双方向のセミナーの有効性を強く感じました。この方法で、今後ベトナムやタイ、中国向けに「オンラインセミナー」の可能性を探っていきたいと思います。

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