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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

学校別入試分析セミナーが始まります

第752号 2021年1月8日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年秋に行われた私立小学校の2021年度入学試験の分析に関しては、昨年12月に「2021年度 私立小学校入試結果報告会」として会員の皆さまにオンラインで配信いたしました。本来ならば会場にお集まりいただき、講義形式のセミナーで行うはずでしたが、新型コロナ感染拡大の現状を踏まえ、オンラインセミナーの形をとらざるを得ませんでした。これまでは会員のみならず広く一般の皆さまにも情報を公開し、正確な入試情報を受験生の皆さまに提供することを、こぐま会の大事な仕事の一つとして実施してきました。1月から開始する予定だった「学校別入試分析セミナー」も、従来の形式での開催は難しいと判断し、会員の皆さまに限定してオンライン配信することに決めました。一般の皆さまに私たちが集めた情報と独自の分析をお届けできないことを大変残念に思っていますが、形を変えて子どもたちや保護者の皆さまから聞き取った情報を正確にお伝えしたいと考えています。学校側からの情報未公開の現状を何とか打破するために、大事な仕事だと思っています。決して塾側に都合の良いように情報を操作することがあってはなりません。

本日からセミナー収録を開始し16日から順次配信の予定ですが、大体以下のような内容で分析しお伝えするつもりです。

1. 2021年度入試はどのように行われたか
(ア)入試に関する情報
(イ)入試問題の解説/学力試験/行動観察/面接
(ウ)何が求められていたか
2. 合否判定はどのように行われたか
(ア)合格者数・受験者総数
(イ)合格者の1年間のテスト成績推移
(ウ)最後のテスト結果と合否の相関関係
3. 2022年度の入試を予想する
(ア)10年間の問題の変遷
(イ)注目すべき傾向を読み取る

1.(ア)の入試に関する情報では、説明会の時期・願書提出方法・試験のやり方・筆記用具・間違った時の訂正方法・倍率・補欠合格の出し方など、入試に関する細かな情報をお伝えしました。1.(イ)では、ペーパー試験の内容と解説を1問1問行い、何が求められているのか、どこが難しいのかなどを分析し、その上で行動観察や面接の内容なども紹介し、そうした問題を通して何が評価されたのかを分析しました。
2.(ア)では、こぐま会からの受験者総数と合格者数を発表し、合格と不合格の分かれ目は何であったのかを分析するために、合格者の中から数名を選び、1年間の成績推移を分析したり、最後の学校別模擬テストの成績と合否の関係を明らかにすることによって、どのような方法で合否を判断したのかを分析しました。もちろん数値化されているものだけで合否判断がなされるわけではありませんので、教室内での態度や性格なども加味しながら分析しました。特に、今回はコロナ禍での初めての入試ということもあり、「行動観察」や「面接」がどのように行われるのかを入試前から注目していましたが、やはり以前とは違う内容になっていることに気づきます。昨年までは小集団で課題を与えられ、問題解決のために相談し、決まったものをみんなで協力して作り上げ、それを使って最後に「ごっこ遊び」風に楽しむというものでしたが、今回は予想した通り「密」をつくらない試験、つまり個人個人の物事に取り組む姿勢を見るテストに変わっています。たとえばある学校では3つの視点に分けて行われました。

  1. 体を使ったじゃんけんゲーム 映像で示される先生とじゃんけんをする、そのなかには後出しじゃんけんもあり、「勝ってください」「負けてください」といった指示で、自分は何を出したらいいのかを考えさせる課題もありました
  2. 手先の巧緻性としてのぬり絵
  3. ぬり絵をしている間に1人ずつ呼ばれ、先生の質問に答える。たとえば、「もうすぐお母さんの誕生日です。お誕生日にお花のプレゼントをしようと思ってお花屋さんに言ったら、お店が閉まっていました。あなたならどうしますか。」「それはどうしてですか。」

1. は楽しいゲームへの取り組み方、2. は丁寧さと集中力、3. はコミュニケーション能力、つまり今世の中全体として話題になっている「非認知能力」を個人の取り組みに光を当ててみようとしています。その学校の教育方針として重視されている「主体性」を、さまざまな角度から見ていたといえます。

また面接試験の内容に関しても、コロナ禍だから大きく変わったということはありませんでした。しかし、やはり2カ月間の休園期間、家でどんな過ごし方をしたかを問いかける意味で、子どもには「好きな遊びは何ですか」「家族一緒に何をして遊びますか」といった遊びに関する質問が多く、答えた内容に関して発展した質問をするという方法で行われました。
また、母親に対しては以下のような質問がありました。

  1. 本校では主体性を大切にしていますが、ご家庭で主体性を大切にしていることがありますか。
  2. 今後ますますIT化・情報化した社会となる中、どのように教育をなさいますか。
  3. お子さんの自己肯定感を高めるために、どのようなことをしていますか。

また、父親に対する質問の中には以下のようなものがありました。

  1. 本校の教育方針の3つの中から1つを選んで、どのようなお考えかお聞かせください。
  2. ご家庭独自の教育方針をお話しください。
  3. この学校を選んだ決め手はなんですか。
  4. グローバルマインドをどうお考えですか。

特に父親に対する質問に注目してください。従来、このような内容は母親に対して聞かれることが多く、逆に父親には社会的な課題であるIT化や情報化などについて質問されることが多かったのですが、今回は何か逆転しているようにも思えます。それだけ、父親が受験を含めた子育てにどれだけ参加しているかが問われているのです。グローバルマインドに関しても、英語をしっかり勉強すればいいなどと答えてしまったら、この学校の教育を理解していないと思われてしまうでしょう。

行動観察の内容や面接試験の質問等を見ていると、やはりコロナ禍の試験の変化ということが読み取れます。2度目の緊急事態宣言が出されることになった首都圏の今年の入試がどのように行われるのか、注目していかなければなりませんが、コロナの感染状況が収束しない限り、2022年度の試験も同じように行われる可能性は高いと思います。その意味でも、2021年の入試がどのように行われたのかしっかり把握しておいてください。

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