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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

2021年度私立小学校入試総括 (3)
法則性の理解が激減

第751号 2020年12月25日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年までの入試で良く出されていた難しい問題の一つに「法則性の理解」がありました。思考力や作業能力が求められ、毎年難しくなっていく象徴的な問題でした。今年の入試でどの程度出されるか注目していましたが、予想通り問題が基本に戻る中で減少しました。主要校の入試問題を分析してみると、現在判明しているものの中で、図形系列が4校、回転推理が2校、魔法の箱が1校という具合です。これまでの流れから見ると大きな変化があったといえます。

法則性の理解として括っている内容は、主に「図形系列」「観覧車(回転推理)」「魔法の箱」の3つに集約されます。これら3つの課題は、考える力が相当求められることや作業能力が求められる点において、入試問題の中では難問化しやすい問題でした。昨年まではいろいろに工夫された「法則性の理解」が出題され、特に「回転推理」に関しては、各学校独自の問題が出されていました。また、魔法の箱は数の変化に対する法則性を発見する問題で、数の増減に絡めて出題されており、出てくる数だけでなく、入れた数を求めるといった逆思考の問題も出始めていました。今年はいま判明しているだけで、回転推理が2校、魔法の箱が1校と減少していますし、問題の難易度も依然と比べると相当易しくなっています。まず、回転推理の問題を見てみましょう。

1. 回転推理(観覧車)
  • サルがネコのところへ行くと、イヌは誰のところへ行きますか。右のお部屋から選んでをつけてください。
  • ウシがブタのところへ行くと、ウシのところには誰が来ますか。右のお部屋から選んでをつけてください。

2. 回転推理
動物たちを乗せた風車が、右に回っています。
  • クマさんがウサギさんのところに来たとき、ゾウさんのところには誰がいますか。右から選んで指さしてください。

風車の問題は考え方は観覧車と同じですが、2つとも基本的な問いかけになっています。これまでは観覧車だけでなく、回転テーブル、タイヤの回転、歯車など、いろいろ応用された問題が出されていましたが、今回は2校とも回転推理の基本である観覧車とその類似問題だけでした。次に、魔法の箱の課題を見てみましょう。1校だけ次のような問題が出されていました。

3. 魔法の箱
  • 上の四角を見てください。星と丸とハートの箱を通るとそれぞれの数が変わります。下の問題を見てください。それぞれの箱を通るとどのように数は変わりますか。その数だけ右のお部屋にを描いてください。

この問題も、魔法の箱を学習する際に一番最初に取り組むレベルの問題ですから、簡単にできたのではないかと思います。逆から問いかけたり、連続した魔法の箱の数の変化を考えたり、通過するトンネルが何かを問いかけたりする応用問題は出されていません。

ところで、今回一番多く出されたものは「図形系列」です。4校で出されていましたが、例えば以下のような問題でした。

4. 図形系列
  • 形がそれぞれあるお約束で並んでいます。どんなお約束か考えて、あいているところに入る形をかいてください。

5. 図形系列
  • 並んでいる順番のお約束を考えて、星とハートに入る果物を下のそれぞれのお部屋から選んでをつけてください。

図形系列の問題としては極めて基本的な問題で、口ずさむか指送りをすればできる問題です。

「法則性の理解」の問題がどこまで難しくなるか注目していましたが、今年は基本的な問題が多く、この領域の問題としては目新しい課題はほとんど見られませんでした。しかし、このままのレベルで来年度の試験が行われるとは思いません。やはりこれまでの流れがありますから、工夫された問題が出されると予想して、家庭学習を積みあげていく必要があると思います。

今回が2020年最後のコラムになりました。今年も多くの皆さまにお読みいただき感謝申し上げます。コロナ禍の中で休校措置があり、9月入学の議論が盛んに行われましたが、ほとんど議論が深まらないまま今日に至っています。私は、大切な幼児期の基礎教育の在り方を「小学0年生」として提案し、その考え方をコラムでも書いてきました。また、朝日新聞社の新しいウェブメディア「みらのび」の中で、「小学0年生の考える力」と題したインタビュー連載 も11月よりスタートしました。来年は、多くの皆さまに幼児期の基礎教育について一緒に考えていただけるよう、「小学0年生構想」をさまざまなところでお伝えしていきたいと思います。

どうか皆さま、良いお年をお迎えください。
こぐま会代表 久野泰可

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