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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

がんばれ受験生 最後のオンライン授業

第741号 2020年10月16日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 神奈川県の本試験はもうすぐ始まり、首都圏の私立小学校でも面接試験が始まりました。今年は筑波大学附属小学校の試験が1カ月前倒しになり、すでに1次抽選も終わりました。11月半ばに子どもの試験がある関係で、例年に比べ忙しい11月を迎えることになりそうです。すべての学校を調べたわけではありませんが、今年は多くの学校で志願者が増えているようです。「Withコロナ」の時代の入試は志願者が減るのではないかと思っていましたが、増加しているとしたら原因はどこにあるのでしょうか。休校期間中に教育を止めない努力をどの学校もしてきたはずですが、公立と私立の取り組みの違いだけでなく、教育環境の違いが明確になり、私立小学校の環境の良さが浮き彫りになったように思います。もちろんそれだけではありませんが、多様化した時代の中で社会のニーズを早く取り込み、教育改革を行おうとしている私立小学校の姿勢が多くの保護者に伝わった結果かもしれません。私立小学校を目指す方の絶対数が増えたのか、それとも併願するご家庭が多く、実数はそれほど増えていないのにひとりの子が志願する学校数が増えた結果かもしれません。これは、最終的には入試終了後に学校が発表する志願者の実数を見てみないとわかりませんが、リーマンショックや東日本大震災後に志願者が一時期減ったことを考えると、予想外の出来事かもしれません。社会人になるまでの学校選択については、昔と比べると選択肢が増えたのは事実です。特に大学への進学については、一貫校であるからといってそのまま上に上がるケースは減り続けています。多様化した学校選択の最初の一歩が小学校選択ですから、受け入れる学校側も、時代の要請に答えるためにさまざまな改革を行っています。その代表が「英語教育」ですが、それだけでなく「主体性を育てる教育」「非認知能力を高める教育」に積極的に取り組んでいる私立小学校の取り組みが高い評価を得ているのも事実です。

今年は2カ月間の休校措置があった関係で、教育現場では今まで実施したことのないオンライン授業に取り組みました。私たちも毎日準備に多くの時間を割きましたが、その経験がいろいろな意味でこれからの教室運営に活用できるのではないかと思います。オンライン授業そのものは、年齢によっていろいろな工夫が必要ですし、幼児期の子どもたちの教育にとって手放しで喜べる現状ではありませんが、運用の仕方によっては教育効果を上げる方法の一つとして評価されていくと思います。それは、「対面授業」と「オンライン授業」をどう組み合わせて運用していくかということです。オンライン授業だけを切り離して行う方法は、幼児期の子どもたちには向いていません。事物に働きかけ、対話を通して教育活動をしていくことが基本ですから、オンライン授業は補助的な手段として活用していくべきです。それは、幼児期の教育に必要な「繰り返しの学習」を可能にする手段として極めて有効だからです。一度だけの学びで身につくほど幼児期の教育は簡単ではありません。こぐま会の場合、教室での学びをしっかり身につけてもらうために、これまでは家庭用教材を準備し、保護者の皆さまの協力を得て、1年間のプログラムを実施してきました。しかし、どう導いたらよいのか、学習の系統性をどう守ったらよいのかという点で、保護者の皆さまも相当苦労されてきたはずです。挙句の果てに過去問だけをやれば手っ取り早いといって、1年後にできればいい課題を1年前倒ししてやり、その結果できないことを心配して教え込みに走る。こんな受験対策をしても、何も身に付かないまま入学を迎えることになってしまいます。そうした課題を抱えながら、なんとか教室とご家庭が連携して子どもの学習を見守れないか・・・これまでもさまざまな工夫をしてきましたが、今回経験したオンライン授業を組み合わせれば、そうした問題はある程度解決するのではないかと期待しています。

こぐま会の日常授業は今週土曜日(10月17日)で終了し、受験生は入試までの2週間、家庭での学習に力を入れて試験に臨みます。普段どおりの生活をして入試を迎えるのが一番いいのですが、やはり今まで決まった曜日に通っていた教室から離れてしまうと子どもも保護者の皆さまも不安になり、幼稚園や保育園を休ませて家庭で最後の特訓をするということをこれまでたくさん見てきました。しかし、子どもたちの生活リズムを崩すことになってしまい、あまり良い結果は得られていません。そうしたこれまでの経験を踏まえ、今年行ったオンライン授業を最後の2週間でもう一度行い、子どもたちに寄り添った声掛けをしながら入試本番を迎えてもらおうと考えています。10月19日から1週間は、普段通りの授業時間に合わせてクラスごとにオンライン授業(ライブ)を行い、それ以降は、入試直前レッスンとして3回のオンライン授業(収録)を行う予定です。すでに収録授業の撮影は終わりましたので、あとは配信をするだけです。また、来週行うライブ授業はいろいろトラブルもあることを承知の上で、子どもたちと会話することを最大の目的としながら、事物を使った最後の授業を試みるつもりです。扱うテーマは、「折り紙を使った課題」「しりとり」「魔法の箱」「飛び石移動」の4つです。子どもたちの間違いやすい所を意識して取り上げ、基礎的な作業がしっかりできるかどうかを点検しながら授業を進めます。そこで使う具体的なカード教材は前もってお渡しし、ペーパーを使った一方的な授業ではなく、カードを操作しながら進める新しい授業の試みをしようと思っています。オンラインでの事物教育は難しいと思いますが、私たちの経験の蓄積としても意味があるはずです。新たな挑戦として最後の授業に臨みます。

コロナ時代の初めての入試として行われる2021年度の入試が無事終わることを願いながら、さまざまな困難がありながら乗り越えてきた子どもたちに最大限の拍手を送ります。そして受験生を見守り、また教室運営にご理解くださった保護者の皆さまに深く感謝申し上げます。



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