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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年の入試はどのように行われるのか

第735号 2020年9月4日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月に入り、首都圏の入試まで残り2カ月となりました。神奈川県の学校では願書の提出が始まり、これから面接も始まります。コロナ感染症対策を考慮しながらの今年の入試は、いろいろな変更点がすでに明らかになっています。
  1. 試験日程の変更
  2. 試験方法の変更
  3. 面接時間の十分な確保
  4. 行動観察変更への兆し
今年は、学校説明会が中止になった5月~6月の間に、多くの学校が個別に私たちのインタビューに応じてくださり、学校側が今年の試験をどう考えているのか少し分かってきました。それだけでなく、学校側もどのように試験を行うか困惑している様子も伝わってきました。会員の皆さまには、学校側の許可を得てインタビューの様子を録画したものを配信したり、それを踏まえて今年の入試がどのようになるのか、こぐま会なりの分析をお伝えしてきました。その分析が正しかったかどうかは今年の入試が終了し、その総括をする中でお伝えすることにしたいと思います。

はっきりしていることは、3密をつくらないでどのような試験を行うかということについてさまざまな議論をしているということです。新しい時代の入試に変わっていくきっかけになるのか、コロナが収束したらまた元に戻り、同じような試験が行われるのか・・・そこは少し時間をかけてみないと何とも言えませんが、どの学校もこれからの入試の在り方に関して検討するきっかけにはなるはずです。

コロナ対策があるなしに関係なく、試験を担当される先生方は、もう少し子ども一人一人をしっかり見ることができる試験にしたいと考えているのは確かです。限られた時間の中で結果を出さなければならない事情に制約されて、今の試験の形式、すなわち学力試験・行動観察・面接試験の3本柱で合否を決めているわけです。しかし、ペーパーでの学力試験では答えを出すプロセスが分からず、本当に思考力が身についているか判断できません。そのため、作業をさせて答えを出させる試験方法を採用する学校が増えていますが、本来ならば、具体物を使い言葉で説明させることができるような個別・小集団テストを実施したいと考えているはずです。現在もペーパーを使わない試験を行っている学校もありますが、そうした方法で考え方のプロセスを評価したいと考えている学校が多いのは事実です。年間行事の中で限られた時間で合否を出さなければならない事情から、今のテスト形式に落ち着いていますが、コロナ対策をしながらの試験を工夫する視点として「個別テスト」が復活するのではないかとひそかに期待しています。

いろいろな学校の動きが伝わってきている現状で、今年の入試がどう変わるのか・・・まだ多くの学校側では最終決定はしていないと思います。いろいろな可能性を考えて、感染症の現状を踏まえながら一番良い方法を編み出してくると思います。その中で一番悩ましいのは行動観察の方法です。変更しなければならないけれど、さてどうするか・・・いろいろな案を準備しているはずです。幼稚園や保育園などで感染する幼児が増えてきている現状で行う試験ですから、神経を使わざるを得ないのは当然です。今年の行動観察の方法がどうなるかを考えた場合、過去30年ほどさかのぼってどんな試験が行われてきたかを見ると、そこにヒントがあるかもしれません。なぜなら、行動観察も今の形式になるまで、さまざまな変遷を繰り返してきたからです。

ところで、子どもたちの現状を見てみると、やはり2カ月間の休園とそれに続く分散登園、子どもたちが楽しみにしていた行事の中止などが、子どもの成長に何らかの影響を与えているのではないかと思われる変化を実感しています。昨年と比べ、子どもの発達で明らかに違うのは、コミュニケーションの取り方や、自分の想いや考えを言葉で表現することにやや抵抗感を持っているように思えることです。答え合わせの時に行う教師と子どものやり取りなどの場面で、積極的に自分の考えを伝えようとする姿勢が弱いように思います。一方で、ペーパー問題はよくできています。きっと家庭学習の時間が十分確保できたからだと思いますが、反面ある種のプレッシャーを感じているのか、学ぶことへの積極的な意欲が昨年と比べると少し落ちているように思います。「コロナで休園の時、お家でどんな楽しいことをしていましたか」と問いかけると、「勉強ばかりで楽しくなかった」という子が多いのが気になります。「お母さんとどんな遊びをしましたか」と聞いても「お母さんは遊んでくれない」という子が目立ちます。

今年の入試は、基本的には従来の形式で行うことになると思いますが、行動観察が十分にできない現状を考えると、やはり「面接」を重視する学校が増えてくるはずです。その際、三者面談で聞かれる内容を予想すればやはり、休園期間中の家庭での過ごし方が話題になるでしょう。実際に、今年のある幼稚園の入園テストの小論文提出課題が「新型コロナウイルスによる自粛生活の経験を通して得た「気づき」について教えてください」でした。子どもにとって、休みがどういうものだったのか、親にとってどういうものだったのか、そして家族にとってどんな時間だったのか・・・今年の面接も同じようなテーマで、たくさんの質問が用意されているはずです。その時どう答えるのがよいのか・・・模範解答を考えるのではなく、実際の経験をそのままお話しするのが一番良い答えになるはずです。その中に「家庭らしさ」が表現できれば、それが子育ての方針として一番いい答えになるはずです。借りものの答えはすぐに見破られてしまいます。

現時点での学校側の動きなどを踏まえ、今年の入試に臨む皆さまに、残りあと2カ月間の過ごし方について、ぜひ実行していただきたいことをお伝えします。

  1. 今年の入試は、問題が難問化することはないと思います。基礎学力がしっかり身についているかを確認し、やさしい問題で点を落とさないようにしなければなりません。
  2. その意味で、ペーパー学習は1枚1枚を大事にし、答えの根拠を説明できるようにしてください。特に、逆からの質問はいろいろ工夫してやってみてください。
  3. 個別テストが採用されることも考えられますので、ペーパーだけの学習はいけません。具体物やカードを操作し、答えを自分で導き出すプロセスを大事にしてください。その際も、答えの根拠を必ず説明させてください。
  4. 自信を持たせること。そのためには、10月に入ってからあまり難しい問題はやらないことです。自信を失うと必ず横を見ます。決してカンニングするのではありませんが、不安の表れの一つです。そこは学校側もよく見ています。試験中、横を見たりするそぶりを見せると大変大きなマイナス点になるはずです。
  5. 話の内容理解と暗算練習は、必ず毎日行ってください。間をあけてしまうと感覚が鈍ります。
  6. 常識問題が増えるはずです。過去の入試でどんな問題が出されているか、良く調べて繰り返し練習してください。理解しているようで結構点が取れない子が目立ちます。
  7. 面接のために、休園期間中に家庭で過ごした楽しい経験を、話したり絵で表現したりしておいてください。
  8. 1回の指示をしっかり聞き、作業して答えを導き出すトレーニングをしてください。その際のテーマは「飛び石移動」の問題が最適です。

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