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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「考える力を求める入試問題(4) 言語領域の課題」

第713号 2020年3月13日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 小学校入試における言語領域の問題は、大きく分けて3種類あります。まず、将来の読解力につながる「話の内容理解」では、聞く力が求められます。次に、話す力が求められる「お話づくり」があり、これは将来の作文教育につながる内容です。もうひとつ、日本語の理解に関する「ことばの理解」があります。この3つが中心になって入試問題は作成されています。この中でも「話の内容理解」はどの学校でも必ず1問は出されると考えておいてください。「お話づくり」はペーパーテストの形式ではできないため、すべての学校で・・・というわけにはいきませんが、個別テスト中心の学校でよく出され、将来の話す力を見るうえで大切な内容です。この「話の内容理解」と「お話づくり」の他に、最近になって増えてきたのが「ことばの理解」に関する問題です。

「ことばの理解」には、大きく3つの課題があります。ひとつは「一音一文字」の理解です。2つ目は、その発展としての「しりとり」の問題です。最後は「動詞の理解」に関する問題で、同音異義語などがその典型です。一音一文字というのは日本語指導の最初の課題で、「日本語は一つの音が一つの文字を表し、それがいくつか集まって言葉を形成している」という考え方です。この課題は「日本語の理解」の基礎ですから、幼児期の言語学習には欠かせません。これが入試問題になったのはある時期からで、昔からあったものではありませんが、こぐま会の授業では35年以上前から扱ってきました。保護者の中には、試験で出されない課題ならばやる必要はないと批判される方もいらっしゃいました。しかし、幼児期の基礎教育にとって大事な課題であるため、たとえ入試に出なくても必要と考え、今日に至っています。私たちが予想した通り、ある時期から入試問題に取り上げられるようになり、今や毎年必ずどこかの学校で出されるほど一般的な問題になりました。そこで今回は、言語領域の大事なひとつである「ことばの理解」に関する問題を取り上げ、何をどう学習したらよいかをお伝えします。

また、この「ことばの理解」に関しては、学校側も相当工夫した問題を作り始めています。例えば2020年度の入試で出された次の問題はその典型です。

1. 一音一文字・言葉づくり
  • 左の絵の真ん中の音を使うとどんな言葉ができますか。右から選んでをつけてください。

真ん中の音を組み合わせて新しい言葉を作るという問題です。同じように、一番上の言葉を組み合わせたり、最後の音を組み合わせたり、上から2番目の言葉を組み合わせて新しい言葉を作る問題もあります。どこに何の音がつくかという「一音一文字」の考え方が求められ、その上で組み合わせを考えなくてはなりません。今回は言葉づくりですが、以前は言葉つなぎの問題として、以下のような問題が出されたこともあります。

2. 言葉つなぎ
左のお部屋を見てください。まず練習をしてみましょう。ここにかいてあるものの名前の最後から2番目の音ではじまる言葉を探しましょう。エンピツの最後から2番目は「ぴ」ですね。「ぴ」からはじまる言葉はピアノなので、エンピツとピアノを線結びしてください。次にピアノの最後から2番目は「あ」なので、アヒルと線結び・・・というようにつなげていきます。
  • 右のお部屋にあるものを今練習したお約束で、できるだけ長くつないで、青で線結びしてください。はじまりは分かりません。使わないものもあります。

いくつの音でできているか、どこに何の音がつくか・・・の理解が基本で、その応用問題が入試で問われています。次に「しりとり」の問題です。これは昔からある典型的な入試問題ですが、最近の問題は、後ろにつなげる言葉あそびだけでなく、しりとりのルールの理解を前提に、「考える力」が求められる問題へと難問化しています。今回は次のような問題が出されています。

3. しりとり
(れい)のお部屋を見てください。ここにある絵はしりとりでつながります。「つき − キツネ − ネズミ − みみ」とつながって、最後になった「みみ」にがついています。
  • 同じように横に並んでいる絵をしりとりでつないだとき、最後になる絵にをつけてください。

これは、最初が分かっていて後ろにつなげる問題ではなく、順序を考えさせ、最後の言葉を探す問題です。最初が分かっているかいないかは、「しりとり」をする上で難易度に相当差が出てきます。順序性を考える思考力が求められています。

4. 同頭音・同尾音・しりとり
  • 1つのお部屋です。上と下で最初の音が同じものを線結びししてください。
  • 2つのお部屋です。上と下で終わりの音が同じものを線結びしてください。
  • 3つのお部屋です。上と下で真ん中の音が同じものを線結びしてください。
  • のお部屋です。しりとりでなるべく長くなるように線繋ぎしてください。

この問題は、一音一文字の理解としりとりがセットになった問題ですが、最後の「しりとりでなるべく長くつながるように」という問題も、子どもたちにとってはかなり難しい問題です。最初も最後も分からない、その上使わない言葉も入っているという点が難易度を高めています。後ろに進んだり前に戻ったり・・・というように、しりとりのルールがしっかり理解できているかどうかが決め手です。

これまで紹介した「一音一文字」や「しりとり」の問題は、どちらかというと名詞が中心の問題でした。言葉の理解に関する問題の中には、もうひとつ大事な「動詞の理解」があります。例えば、2020年度入試では次のような問題があります。

5. 一音一文字・動詞の理解
左の絵を見てください。
  • この中で「フォーク」のように、伸ばす音が名前につくものはどれですか。の中にをかいてください。
  • この中で「バケツ」のように「ばびぶべぼ」の音がつくものはどれですか。の中に×をかいてください。
  • この中で「プリン」のように「ぱぴぷぺぽ」の音がつくものはどれですか。の中にをかいてください。
右の絵を見てください。
  • この中で「はく」という絵はどれですか。の中にをかいてください。
  • この中で「しぼる」という絵はどれですか。の中に◎をかいてください。
  • この中で「たたむ」という絵はどれですか。の中に×をかいてください。

左は一音一文字の問題ですが、右は動詞の理解に関する問題です。「はく」「しぼる」「たたむ」と表現する絵を探すものです。また、次のように「かける」という言い回しを探す同音異義語の問題もあります。

6. 動詞の理解(同音異義語)
  • この中で「かける」というものはどれですか。赤いをつけてください。

以上、言語領域の3つの大事な課題の中で、「ことばの理解」に関する問題をいくつか紹介しました。文字の読み書きに集中しがちな幼児期の言葉の学習を、こうした問題まで広げて学習することが大事です。私たちが大事にしてきた基礎教育の内容が、「一音一文字」に代表されるようにある時期から入試問題として取り上げるようになったのは、学校側もきちんとした根拠のある入試問題を作りたいと考えているからにほかなりません。入試に出た - 出ないの判断ではなく、幼児期の基礎教育にとって何が大事かを考えた学習が大切です。

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