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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「入試分析セミナーが始まりました」

第706号 2020年1月24日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年12月8日に行った「私立小学校入試結果報告会」に引き続き、学校別入試分析セミナーを1月19日より開始しました。19日は、聖心女子学院初等科・東洋英和女学院小学部・横浜雙葉小学校・田園調布雙葉小学校の4校について、それぞれ1時間ずつのセミナーを行いました。私が担当した聖心女子学院初等科では、以下のような観点で2020年度の入試を分析しました。

  1. 学力試験はどんな内容であったのか
  2. その中で子どもたちにとって難しい問題は何で、そうした問題で学校側が何を求めているのか
  3. また、どんな学習を積み上げていけば、そうした難しい問題が解けるようになるのか
  4. 補欠合格者の動きと、そこから読み取れる学校に対する保護者の評価
  5. 行動観察はどのような内容であったのか
  6. 行動観察で何が評価されたのか
  7. 三者面談はどのように行われたか
  8. 面談で何が評価されるのか
  9. テスト分析から見られる合格者の成績推移と、そこから確信できる実力主義の試験

こうした観点から2020年度の問題を分析し、2021年度の入試対策をどのように進めればよいかをお伝えしました。今回の問題を見ても、学校側が大事にしている「聞く力」「考える力」「作業能力」が随所に見られます。この学校に合格するために一番必要なのは、自分の力で解くことを日ごろから行っているかどうかです。与えられた解き方で解くような練習では、「作業を通して考える力を育てる」ことはできません。今回の問題には、難しい問題が3つ含まれています。おそらくこの問題の出来不出来が合否に関係したと思います。一方で、易しい常識問題も3問ほど出されています。難易度が相当違う問題が、どうして混在しているのか・・・いろいろ考えられますが、問題作りをする学校側のある種の配慮も見えてきます。難しすぎてもいけない、易し過ぎてもいけない・・・子どもたちにある程度点を取らせる配慮も見られます。そして、外部の者には分からない点数配分についても、相当考えられているのではないかと思います。平均点が7割から8割になるような問題作りに工夫を凝らしています。ですから、みんなが得点できるところで点を落としたのでは合格につながりません。その意味で、難しい問題ばかりに取り組ませる対策はナンセンスです。1つの問題をどれだけ深く考え、自分の力で解けたか・・・その経験が意味を持つのです。毎日50枚も100枚もペーパーをやらなければ受からないという馬鹿げた宣伝に足元をすくわれてはいけません。
以前のコラムでご紹介した「回転推理」(歯車)の問題も、どの子にとっても初めての問題だったと思います。その初めての問題を完璧に解ける子とそうでない子の違いは、問題の意図を聞きとる力と、約束に従って作業する力が備わっているかどうかです。どこに目をつけて解答の糸口を探すか・・・これこそ試行錯誤を重ねて問題を解決してきた力の蓄積が意味を持つのです。ペーパーのみのパターン学習では決して身につかない思考力です。子どもにとって難しいとされる問題の多くは、「考える力がどれだけ身についているか」という本質的な問いかけが含まれています。

聖心女子学院初等科の行動観察や面接は、多くの女子校の典型的な出題内容になっています。行動観察は、体を使った模倣体操と集団絵画です。指示された内容を理解し、みんなで協力して1つの作品を完成させる課題です。そのプロセスに、家庭における子育てのありようを読み取るのでしょう。面接と行動観察はセットのもので、いわばその家庭の子育てのありようを見ようとしているのです。面接でどのように答えたかが問題ではなく、その子の子育ての背景、つまり「どんな家庭なのか」「どんな親子関係なのか」を知るきっかけを探しているのです。だからこそ三者で話し合う場面を設定したり、父親に質問しているときにも母親の表情が見られていたりするのです。どんな答えをしたのかではなく、どのような家庭なのかが見られているのですから、面接本を読んで答えを刷り込んでいっても、それは見抜かれますし、そうした受け答えでは必ず失敗しています。受験塾で真逆なことが指導されているということを知るにつけ、同業者として悲しい気持ちになります。教育が商品化されていくこと自体に矛盾があるなかで、受験指導をビジネスと割り切って行うような風潮が見られるのは残念なことです。受験といえども大事な幼児期の基礎教育として行われていって欲しいと思います。

セミナーの最後には過去10年間の問題を一覧表にして、どの領域から多くの問題が出されているか、またその内容に特徴があるのかなどをお伝えしました。今年受験する皆さまの家庭学習の参考にしていただければと思います。

2020年度「学校別入試分析セミナー」スケジュール

1月26日(日) 会場:恵比寿本校
10:00~11:00 白百合学園小学校
11:30~12:30 日本女子大学附属豊明小学校
14:00~15:00 雙葉小学校
15:30~16:30 光塩女子学院初等科
1月26日(日) 会場:大森校
10:00~11:00 洗足学園小学校
11:30~12:30 慶應義塾横浜初等部
14:00~15:00 青山学院初等部
2月2日(日) 会場:恵比寿本校
10:00~11:00 東京女学館小学校
11:30~12:30 立教女学院小学校
14:00~16:30 学習院初等科/早稲田実業学校初等部/目黒星美学園小学校/成蹊小学校
1月19日(日)・・・終了
聖心女子学院初等科、東洋英和女学院小学部、横浜雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、暁星小学校、慶應義塾幼稚舎

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