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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「海を渡るKUNOメソッド」

第696号 2019年11月8日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 幼児期の基礎教育の方法として、実践を通して開発した「KUNOメソッド」を普及させるために、この10年間、日本国内のみならず東アジア・東南アジアを中心に講演会活動を積極的に行ってきました。韓国・中国・ベトナム・タイ・シンガポール・インドネシアではすでに教室運営も始まっており、韓国では幼稚園にもメソッドを提供しています。同時に海外在住の日本人の皆さまにも提供し、帰国後に日本の小学校に自信を持って進学できるように教科学習の基礎を指導してきました。今年も試験休みを利用してバンコクを訪ね、現地の方向け教室(KOGUMAKAI Thailand )と駐在する日本人の方向け教室(学びの王国NEWS内 こぐま会タイ校 )において、2日間にわたり講演会・公開授業・発達診断テストなどを行ってきました。幼児教育の重要さと正しい指導のあり方について映像を使って具体的にお話しし、たくさんの質問にもお答えしました。

バンコク現地の方向けセミナー「考える力を育てる幼児教育」
1. 今、幼児教育が注目されている
2. 将来、社会で活躍できる人間になるために、幼児教育は何をすべきか
  1. AI 社会の到来 - 人間の果たすべき役割
    ・ 付加価値を創造できる人間
  2. 自ら考え、判断し、行動できる人間になるために
    ・ 考える力をどう育てるか
  3. 学校教育の基礎をしっかり作る
    ・ 幼小一貫教育による系統学習の基礎づくり
3. KUNOメソッドによる幼児期の基礎教育
  1. 教科前基礎教育
    ・ 6つの学習領域「未測量」「位置表象」「数」「図形」「言語」「生活 他」
  2. 事物教育
    ・ 3段階学習法
    ・ 物事に働きかけ、試行錯誤することによって、認識能力は育つ
  3. 対話教育
    ・ 言葉を介して論理を育てる
4. 数概念を育てるために - 「未測量」「数」
5. 図形感覚を育てるために - 「位置表象」「図形」
6. 聞く・話す力を育てるために - 「言語」

日本人対象のセミナーにおいては、帰国後に小学校受験を希望される方もいらっしゃるため、日常的な学習法についてアドバイスさせていただきました。また、タイ人対象のセミナーにおいては専門職に就かれている方が大勢参加され、教え込みの多い幼児教育法に代わって、生活や遊びを土台としたKUNOメソッドを高く評価していただきました。今回は、教育工学を専門とされる大学教授にもお話をしていただき、タイにおいて「KUNOメソッド」を広める活動をどう展開するかについても話し合ってきました。政治も教育のあり方も違う異国で、KUNOメソッドがどれほど有効か見守っていかなければなりませんが、集まった方々の反応や意見を踏まえると、どの国においても通用するメソッドであることを確信しています。

現地校の先生によるモデル授業を私が解説し、授業意図をしっかり伝えることによって、参加された皆さまに授業内容を納得していただけたように思います。異なる言語で日本と同じ授業を行うという感動的な場面を多く目にし、言語の違いを乗り越えて、子どもたちの考えるプロセスは全く変わらないということを確信しました。日本の子どもたちがつまずくところは、タイの子どもたちにとっても同じように難しいということを見るにつけ、世界共通のカリキュラムで十分対応できると感じました。日本の子どもたちの方が進んでいるということは全くありませんし、興味関心の示し方も同じです。

また、指導内容に付随する教具・教材にも大変関心があるようです。すでに韓国では、1万人近い子どもたちに幼稚園を通して教材を提供しています。今年4月からは、中国で「ひとりでとっくん365日」の販売を開始しました。シリーズ全12冊を4冊1セットとして3巻に分けていますが、日本のように1冊単位に換算すると、約7カ月で45万2,000部が販売されたことになります。また、8月から販売開始になった「おけいこカード」も3カ月で4万8,000セット、1冊単位に換算すると19万2,000部が販売され、その勢いは止まらないようです。
子どもの数が桁違いに多い中国において、大勢の皆さまの支持を得られれば、問題集の根拠になっている「KUNOメソッド」が日本に逆輸入される日もきっと来ると期待しています。それだけ日本の幼児教育は、教育内容の議論に乏しいのです。幼児教育の無償化ですべて解決したような雰囲気は、他の国では見られない奇妙な現象です。無償化したところで教育の環境や教育内容の質は何も変わらないということをみんなが認識し、子どもの将来にとって必要な教育内容をどう構築するかをもっと議論すべきです。そのためには、幼児教育に対する親の関心を高め、形だけの教え込みの教育では駄目だということを、みんなが理解しないといけません。海外に出てみると、親の関心度において日本は遅れているということを痛感します。

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