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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

年中9月からの入試対策

第682号 2019年7月12日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会の通常授業は今週で終了し、来週からいよいよ夏季講習会が始まります。8月23日まで、月曜日から金曜日までの5日間を1単位とし、A~Fクールまで続きます。今年の受験生にとっては最大の山場に突入します。ばらクラスの皆さまは、今週までの授業で入試関連のすべての単元を学習し終えたことになり、これからはいくつかの単元が複合されて出される問題のトレーニングに入ります。基礎をもう一度確認し、難しいとされる過去問にも挑戦しなければなりません、自分の力で問題を解き、解き方のプロセスを言語化できるような深い学びをしなければなりません。

ところで来年秋に受験される年中児の皆さまも、そろそろ受験対策を始めなければなりません。幼稚園受験が終わったあと、すぐに小学校受験対策に取り組んできたご家庭も多いかと思いますが、最低1年間の準備期間が必要だとすると、はじめての方はそろそろ入試対策を始めなければなりません。こぐま会でも、年中の4月と9月の入会が一番多く、特に8年ほど前から始めたセブンステップスカリキュラムのスタートが年中9月からとあって、最近では、新期の始まりである11月よりも9月からの入会が目立ちます。9月から入試対策を始めようと準備されている方を対象に、「年中9月からの受験対策」としたセミナーを7月7日に開催しました。今回は、学習のスタートに当たって現在の学力を把握しておくための「チャレンジテスト」を同時並行で行い、テストが終わるまでの時間を使って、準備教育のあり方についてお話しさせていただきました。

室長連続セミナー 第2回「年中9月からの受験対策」
1. セブンステップスカリキュラム 9月開始に当たり
  1. 来年秋までの指導の流れ
  2. セブンステップスカリキュラムのらせん型構造
  3. 事物教育・対話教育の実践
  4. 家庭学習との連動
2. 学校選択と学校別学習対策の方法
  1. 首都圏の入試日程
  2. 学校選択のポイント
  3. いつまでに第一志望校を決めるべきか
  4. 基本クラスと連動した学校別対策のあり方
3. 受験において合否を分けるいくつかのポイント
  1. 学力だけでは決まらない・・・学力だけを高めておくという発想は間違い
  2. 考える力が求められている・・・ペーパーだけの学習では身につかない
  3. 行動観察がなぜ重視されているか・・・非認知能力がどれだけ身についているか
4. チャレンジテストの内容
5. 入試で求められる10の思考法
  1. ものごとの特徴をつかむ - 観察力
  2. いくつかのものごとを比較する - 比べることは学びの始まり
  3. ある観点に沿ってものごとを順序づける - 量の系列・位置の系列・時系列
  4. 全体と部分の関係を把握する - 変化するものの中で、変化しないものを探す
  5. 観点を変えてものごとを捉える - ピアジェが可逆的思考で一番大事にしたこと
  6. ものごとを相対化して捉える - お話による関係推理
  7. 逆に考える - 出発点にもどる・逆対応
  8. あるものごとをひとまとまりとして捉える - あたり量×いくつ分
  9. 法則性を発見する - 変化の法則性を発見する
  10. AとB、BとC の関係から、AとC の関係を推理する - 推移律・置き換えの理解

今回は、最初にチャレンジテストの出題意図と、それがどのように入試対策につながっていくかを説明しました。テストの内容は以下のとおりです。

年中児対象「チャレンジテスト」の内容
  1. 大きさの系列化
  2. 位置の相対化
  3. 位置の対応(模様づくり)
  4. 観点を変えた分類(色・形・角)(※)
  5. 数の多少 (※)
  6. 図形模写・運筆・色ぬり
  7. 変化するつみ木構成 (※)
  8. しりとり
  9. 話の内容理解
  10. お話づくり (※)
  11. 間違い探し
  12. 方眼上の位置の記憶 (※)
  13. 量の保存(水量の移し替え) (※)
  14. 位置の移動(すごろく・飛び石)
  15. 方眼系列迷路(スピードトレーニング)
(※)・・・個別テスト

これまでの学習成果をみるための、偏差値や順位をつけるテストではありません。これから入試対策の学習をしていく上で、どうしても必要なレディネスをさまざまな観点でチェックし、基礎的な部分が本当に分かっているかどうかをチェックするためのものです。個別テストとペーパーテストを行い、一人一人の学習課題を明らかにしました。
16項目のテストの中で、正解率が20パーセント以下だった課題は次のとおりです。
  1. 位置の対応(斜めの線が入った模様づくり)
  2. 観点を変えた分類(3回視点を変えられるか)
  3. 立方体の模写
  4. 最初も最後も分からないしりとり(1分間で8つのものをつなぐ)
  5. 量の保存(水量の移し変え)
  6. 飛び石移動で1回に2つずつ動く跳び方
予想したとおり、「量の保存」の正解率は低く、25名中1名が正解でした。また、「飛び石移動」でウサギが2つずつ4回跳んで着いた場所を探す問題は、25名中5名しか正解できていません。「数の多少」「つみ木構成」「話の内容理解」「位置の記憶」などは、70パーセントの正解率であるにもかかわらず、視点を変えてものを見る 2. や 5. の問題になると、極端に正解率が落ちます。
また、6. のような作業能力を問われる問題も、同じような傾向が見られます。機械的なトレーニングで解決できる問題はある程度できているのに、思考力を求められる問題、作業能力が求められる問題になると極端に正解率が落ちます。それには、普段の学習法に問題があるように思います。ペーパーだけのトレーニングに終始し、か×だけを問題にしていくような学習では、思考力は育たないということです。昔はそれでもよかったのですが、現在の厳選された問題は、思考力と作業能力が問われる問題がとても増えています。こうした入試の状況と子どもの学力の現在を踏まえると、入試に向けた学習法をもう一度総点検する必要がありそうです。「ものごと」に関わり試行錯誤して答えを見つけ出す事物教育と、答えの根拠をいつも問いかけていく「対話教育」がいかに大切か・・・こうしたテスト結果を見ると、その想いを強く持たざるを得ません。

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