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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

合格に向けた夏休みの過ごし方

第681号 2019年7月5日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 秋の受験にとって、夏休みの過ごし方は大変重要な意味を持っています。これまで学習してきたことが本当に身についているかどうかを確認し、入試レベルの問題にも挑戦しなければなりません。いわゆる過去問特訓を相当行う必要があります。しかし、夏休みの過ごし方如何によっては、せっかくの頑張りが一番大事な直前2カ月の学習にマイナスに働く場合も少なくありません。入試本番を一番良い精神状態で迎えるためには、夏の過ごし方を工夫しなければなりません。そうした点も踏まえて、6月30日に年長児の保護者の皆さまを対象にセミナーを行いました。午前と午後の2回に分けて行いましたが、会員・一般合わせて90名の皆さまが参加されました。皆さまの熱心さがひしひしと伝わってきました。その意味で、お伝えする情報も一般的な話ではなく、可能な限り具体的にどうしたらよいかをお伝えしました。

「合格に向けた夏休みの過ごし方」
1. 秋の受験にとって夏休みの学習の意味
  1. 基礎学力総点検
  2. 過去問トレーニング
2. 子どもの学力の現状とその対策
  1. 質問の意味が正確に聞き取れない
  2. 答えの根拠を説明できない
  3. 作業して答えを導き出すに課題に差が出る
  4. 時間内に答えが出せない
3. 領域別 夏休みの学習課題
  • 【未測量】シーソー / つり合い / 個別単位
  • 【位置表象】四方からの観察 / 地図上の移動 / 飛び石移動
  • 【数】数の増減 / 一対多対応 / 交換 / 数のやり取り / 暗算能力
  • 【図形】図形構成 / 線対称 / 回転図形 / 重ね図形
  • 【言語】一音一文字の応用 / 動詞の理解 / 話の内容理解
  • 【生活 他】常識問題 / 魔法の箱 / 観覧車 / 変化の法則性
4. 夏の経験を合格につなげるために - 成功例から学ぶ
  1. メリハリのある生活をし、勉強漬けの毎日にしない
  2. 何をすべきかの課題を見つけ、それを徹底して学習する
  3. 努力目標を与える
  4. 本試験を一番いい状態で迎えるためのシミュレーション
5. 9月~10月 スランプに落ち込まないようにするために
  1. 8月にあまりがんばりすぎると、9月にその反動がくる
  2. むずかしい課題は、夏休みのうちに済ませておく
  3. 10月は基本にもどる ( ここで学習ボードが意味を成す)
  4. 学びが楽しいという感じを常に持たせることが大事

秋の受験にとって、夏休みの持つ意味は2つあります。
  1. 基礎学力を総点検すること
  2. 過去問を徹底してトレーニングすること
まず行うべきことは、これまで学習してきたことが本当に身についているかどうかを点検することです。自分の力で解くためには、考え方のプロセスを言語化するところまでやらなければなりません。会員の皆さまには、夏休みの家庭用教材で配布した「基礎学力点検ボード」を使った学習を最低2回繰り返し行うことをお願いしました。90枚ほどある学習ボードを1枚1枚ていねいに学習し、基礎が本当に身についているのかを点検してもらいます。その上で、志望する学校の過去問に挑戦してもらいます。入試問題はいろいろな領域が複合されて出てきますので、そうした問いかけに慣れてもらうこと、そして、何が理解できていて何が理解できていないのかをしっかり把握することが大事です。また、もうひとつ大事なことがあります。最近の入試問題には、その学校の過去問に一度も出たことのない問題が出されるケースが増えています。それは、ある学校で出された新しい問題が他の学校に飛び火し、全体として新傾向の問題を形成しているからです。例えば、慶應義塾横浜初等部で開校初年度に出された「つみ木を使った四方からの観察」が、それ以降多くの学校で出されています。このように、ある学校で出された新出問題が、形を変えて他校で出されていく傾向は、今後も続くはずです。飛び石移動・交換・魔法の箱のような問題が今多くの学校で出されているのは、そうした現状があるからです。そのことをお伝えし、そうした問題の学習の進め方を具体的な問題を使って解説しました。

次に、子どもの学力の現状を分析し、その対策をどうするかが大事です。特に作業能力を見る問題が増えている背景と、具体的にどんな問題として出題されているのか、そのためにどのようなトレーニングを積めばいいのかを伝えました。そのうえで、夏休みに力を入れるべき課題を領域別に示し、8月末までに入試レベルの問題が完璧に解けるような学習をすることをお勧めしました。それと連動させて80項目に及ぶ領域別の学力チェック表をお渡ししました。

そのあとで、夏の経験を合格につなげるために、合格者からのアドバイスをご紹介しました。

合格者からのアドバイス「夏休みの過ごし方について」
夏の全体目標をまず決め、次に1週間ごとの目標を決め、それぞれ目標を達成するために必要な問題集や勉強方法を具体的にピックアップしておく。必ず達成できるとは限らないので、夏の最後の1週間は予定していたが出来なかったことをする期間としてとっておきました。
この夏は、今までコピーしてまとめておいた問題の間違え問題を分野ごとにまとめ直し、それをもう一度解くこと、苦手な分野を重点的に行うこと、過去問を解くことを主としました。
基本学習点検ボードと8月のおけいこは、夏の講習が始まる前に1回解いて間違えたところをチェックしておきました。日付入りの問題も夏の初めの方で全部一度やってしまいました。夏の終わりに、夏のまとめとして、8月のテスト問題、ステップ別のテストを解きました。
夏季講習の問題はその日のうちに必ず復習。間違えた問題については、類似問題をこぐまの他の問題集で探して解きなおすなどしました。
夏は、1日最低3時間勉強してくださいとの久野先生のアドバイスに従い、毎日欠かさず最低3時間行いました。これはペーペーのみ3時間ということではなく、暗算練習や具体物を使った練習、絵や工作、手先の巧緻性なども含めての時間です。朝は早起きして、公園で遊んだり運動をしました。
夏休みも父母ともに仕事をしておりましたので、いつもと変わらず保育園へ行っていました。ですので、効率よく学習するために夏までに行われたテストや模試をすべて集め、娘の苦手分野とできている分野をエクセルにまとめて分析しました。すると、娘の傾向がよくわかったので、まずは苦手分野をなくす努力をしました。根気よく少しずつ、でも毎日苦手なものに触れさせていたら、そのうち得点源になりました。具体物→ペーパーと丁寧に何度も繰り返したのが良かったと思います。講習会は総合力完成講座と学校別+行動観察の2クールを通い、他は自宅学習(と言っても日中は保育園ですが・・・)にあてました。こぐま会から配付された夏休みプリントは毎日やりました。
夏休み中の学習は、早寝早起きを徹底し、朝学習2時間を集中して行いました(休憩を3回くらいとりながら)。午後は理科的常識の実験、シーソーや回転、三角パズルを使って、子どもが納得するまで具体物を使い学習を行いました。夕方~夜は、親子での制作活動、絵日記、言葉遊びなど取り入れて、子どもが楽しく向上心を持って学ぶことができるように努めました。夏季講習は、ばら総合Cクールと学校別クラスDクールでした。朝学習で夏のがんばりトレーニングと講習会の復習に取り組みました。多くのプリントをこなすことよりも、1枚1枚をしっかり理解して着実に力をつけられるよう努めました。
受験前の夏休み。たくさんペーパーをやらなければ!と、焦る気持ちが一番増える時期かもしれません。そんな時こそ勇気を出して「実体験する夏」「遊びの中で学ぶ夏」をモットーに過ごしてみてください。「机上のペーパーで詰め込んだ知識」は夏の終わりと共にあっという間に崩れ落ち、秋の気配を感じる頃にはさらなる焦りを生み出します。実体験で得た知識は受験の時のみならず、その後小学生となっても活きていることを今もなお実感しています。たかが40日されど40日、夏休みはチャンスです。ぜひお子さまとたくさん遊び、家族皆の心に笑顔残る夏休みの思い出を作ってください。

受験経験者のこうしたアドバイスには学ぶべきことがたくさんあります。一方で、9月~10月にスランプに落ち込まないように、気をつけるべきことがたくさんあります。勉強漬けの毎日では、9月になるとその反動が表れて集中力が極端に落ちます。やる気をなくすと、分かっていたことも分からなくなり、聞き取りの面で問題が生じます。その意味でもメリハリのある生活リズムを守り、よく学びよく遊びを実行する事が大事です。難しい問題は少し背伸びしてでも夏休みのうちに済ませ、10月は基本問題に戻り、自信をもって試験をむかえられるようにすることが大事です。

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