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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏休みの課題

第630号 2018年6月22日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 秋の入試にとって大事な夏休みを控え、家庭学習の相談が増えています。焦る気持ちは分かりますが、教え込みのペーパートレーニングで解決しようとしても、今の入試には何も対応できません。では、この大事な夏休みをどう活用するか。これまでの経験を踏まえ、大事な観点をいくつかお伝えします。

こぐま会では7月16日から夏季講習会が始まりますが、それまでに入試に関わるすべての学習を終え、夏に備えます。その前提で、次のような点を考慮して夏の学習計画を立ててください。

  1. ステップ6までの基礎的事項をもう一度おさらいする。そのためには、夏季の家庭用教材としてお渡ししたリング綴じの「基本学習ボード」を、最低2回は繰り返す。90枚あるボードのうち、心配のない課題はリングから外し、完璧に分かっていない課題を3回繰り返す。この基本学習ボードは、入試2週間前から再度確認する
  2. 「聴く」力を高めるために、読み聞かせ・話の内容理解・指示の理解などを毎日30分程度は行う。また「考える力」は、自分で問題を解決するプロセスで身につくので、具体物やカードを使って試行錯誤させる。その過程で必要となる「作業能力」が、今一番求められている
  3. まだ十分理解できていない課題に関しては、具体物やカードに戻って考え方の基本をおさらいする。その上で、関連するペーパー問題にも取り組む
  4. ペーパーは数多くやるのではなく、1枚のペーパーを使ってさまざまな角度から質問し、深く学習する。そして、どのように考えて答えを出したのか、理由説明をさせる。最後に自分で発問し、保護者が答える
  5. ペーパーは、8枚を1セットにして実際の試験と同じテスト形式で行い、全部終わったら1枚1枚ていねいに答え合わせをする。その際は、各領域満遍なく組み合わせ、8枚のうち2枚は相当難しい問題をセットする。どんな問題をセットするかに親の力量が問われる。毎日何十枚とやる必要は全くない。8枚セットを1日に何回できるか。最低2回はできるようにしたい
  6. 間違えた問題の理由はしっかり把握し、子どもに伝え、関連問題を繰り返す。どこで間違えたのか、なぜ間違えたのかを親が把握できなければ、学習の課題は明確にならない。間違いには必ず原因がある。それを把握し、解決することが指導者の役目
  7. 学校別の過去問にも当然取り組む。過去問といっても難易度には差があるので、易しいものから取り組む。難しい問題はそれほど多くはないので、基本をしっかり抑え、みんなが得点する問題は、絶対に落とさない。難しいことばかりやっていると、基本問題をかえって難しく考え、間違ってしまうことが良く見受けられるので、基本問題もおろそかにしない。過去問は9月半ばまでに全部終了させる。その上で、できなかった問題を繰り返す
  8. 受験する学校の過去問トレーニングだけでは不十分。ある学校で出た問題が他校に波及することがよくあるので、新傾向の問題として押えておく。特に最近の問題では、「聖心女子学院初等科」「雙葉小学校」「慶應義塾横浜初等部」「筑波大学附属小学校」の問題は必ずやっておくこと
  9. 併願校の対策は、この夏にやるしか時間が取れない。特にペーパーを使わない試験を行う学校の対策は、夏に集中的に行うこと。ペーパーがないから易しいのではなく、ペーパーを使わない試験のほうが難しい場合があるということを頭に入れておくこと
  10. 夏休みには、ペーパー学習だけでなく、手先の巧緻性や絵画制作の課題にも取り組んでいただきたい。模倣体操は、ラジオ体操が一番効果がある。朝6時25分から放送しているテレビ体操をやってみるのが効果的。また、絵日記をつけるのも体験画の練習として効果があるので、取り組んでほしい
  11. 朝方の学習が一番効果的。実際の試験でも、朝早くから起きて準備しなければならない場合が多いので、その練習も兼ねて早起きを実行する
  12. 保護者の課題として願書・面接対策があるが、夏の終わりまでに願書書きは大体完成させ、添削を受けること。その意味でも、夏の経験を文章化しておく意味は大きい
  13. 出題根拠のない模擬テストで点数が取れなかったからといって、不安になる必要はない。生徒集めの手段に模擬テストが使われるケースがあり、極端に難しい問題を出してくる場合があるので要注意。どこまで難しい課題ができればよいかは、実際の過去問を分析すればよく分かる。根拠のない噂話で足元をすくわれると、基礎学力が身につかないまま試験を迎えることになるので、気をつけていただきたい。ペーパートレーニングですべてが解決できるほど、現在の入試は単純ではない。聴く力・考える力・作業する力は、ペーパートレーニングだけでは身につかない。ものごとに働きかけ、試行錯誤する時間を確保していただきたい

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