週刊こぐま通信
「室長のコラム」南京での講演会
第629号 2018年6月15日(金)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

6月7日から10日まで南京を訪問し、今年から始まったこぐま会南京教室を見学し、2つの講演会を行ってきました。一つは6月8日19時からの「こぐま会南京教室」に通われている保護者を対象としたもので、もう一つは、南京にある幼稚園の園長や主任クラスの先生方を対象とした、KUNOメソッドの内容と方法をお伝えする教育講演会でした。この講演会には、中国における学前教育(幼児教育)のリーダー的存在である、華東師範大学の教授と南京師範大学の2名の教授も参加され、私の講演の後、参加された60名近い幼稚園の園長や現場の先生方に、KUNOメソッドに対する感想を話してくださいました。また、私の著書や教材を出版予定の広西師範大学出版社幼児部門の副編集長からもこぐま会の教材についての感想を話していただきました。教室の隣にある南京ヒルトンホテルに、朝9時から予想を超える大勢の先生方に集まっていただき、「大切な幼児期に何をどう学ぶか」と題した話を1時間近くさせていただき、その後、大学の先生方からコメントをいただきました。3名の方からいただいたコメントは、以下のような内容でした。
- 黄教授 (華東師範大学 教育学部 副主任 教授)
- KUNOメソッドの内容をじっくり聞くのが今日が初めてで、とても光栄です。
久野先生の話をよく聞くと、KUNOメソッドの核心は「数学教育」と大いに関係していると思います。数学的言語に通じるものがたくさんあり、考え方自体も数学的思考が入っています。
中国の早期教育において、思ったことが2つあります。- 中国では、早期教育の大きな背景として「数学」は重点ではありません。この数学的な思考をベースとしたKUNOメソッドは、我々にとってとても参考になる教育方法であることは間違いありません。
- 「数学」は子どもの今後にとっては、とても大事な部分であり、それは中国の先生も保護者も気付いています。そういった意味で、KUNOメソッドは中国の子どもにも適用できるはずです。もし上海で開校したら、きっと爆発的な人気を得るでしょう。
- 張教授(南京師範大学の教授)
- 今日の講演を聞いて久野教育法の内容を知り、とても感銘を受けました。
KUNOメソッドは実に子どもの発達段階にあった学習法だと感じています。とくに数学の分野において実に素晴らしい、先程の黄先生のご意見に賛同します。
さらに言えば、久野教育法の教え方も大変素晴らしいものです。数学ベースではありますが、数学以外のもの(言語、常識など)も取り入れているところ、これがまさに現在我々が推進している幼児数学教育の理念に合致しています。
また、実物や教具などを多く使い、「生活の中の数学」という視点から子どもに数学的な概念を伝えるのも、とても魅力のあるところです。 - 李副編集長(広西師範大学出版社 幼児部門副編集長)
- 久野先生と知り合ったのが去年の年末辺りで、私は5歳児の母親なので、とりあえず久野先生の教材を私の子どもに与え、実践してみました。それがとても効果があって、特に数学の部分、先ほど久野先生と教授の方々のお話を聞いてなるほどと思いました。今回の講演会、実に勉強になりました。

その前日、6月8日の19時から行った、教室に通う保護者の方を対象とした講演会では、私の話と同じくらいの時間をかけて「質疑応答」が行われ、一つ一つの質問にお答えしました。質問の内容は、学習内容に関することよりも、学習態度や集中力の欠如、自己表現に関する心配事でした。

「遊んでばかりいて、学習に興味を示さないのですが、どうしたらいいですか?」
「他者とかかわることができず、みんなの前で話すことや発表することもできないのですが、どうしたらいいですか?」
「数は10以上数えられるのですが、ペーパーでの数の問題がよくできないのですがどうしたらいいですか?」
こんな質問が多く寄せられました。その一つ一つに丁寧に答えながら、間違った親の考え方も正しました。集中力の問題は、必ずしも子どもにだけ責任があるわけではありませんので、そのあたりを具体的にお伝えしました。日本での講演会ではほとんど質問が出ないのが常ですが、中国では必ず1人につき1つは質問してこられます。こうしたことはこれまでも何回か経験しています。国民性の違いなのでしょうか。

違法コピーの問題や契約の遵守など、中国事業には大きなリスクが伴いますが、一人っ子政策が解除され、海外から多くのメソッドが導入されている中国で、こぐま会の教育が大勢の方から支持を得られれば、こぐま会の海外進出が加速されると考えています。その意味で、当面はこの中国事業に力を注いでいきたいと思います。こぐま会の教育が海外でも支持されれば、日本の幼児教育に果たす役割がこれまで以上に出てくるはずです。日本発のメソッドが海外で支持されるのかどうか、中国での教室事業がひとつの試金石になるはずです。