週刊こぐま通信
「室長のコラム」いよいよ応用段階の学習です
第574号 2017年4月28日(金)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

11月から始まった「ばらクラス」の授業も、今週からステップ5の学習に入りました。ステップ4までの学習が基礎段階の学習で、これから始まる応用段階の学習は7月まで続きます。夏休み前までにすべての課題の学習を終え、それ以降11月の本試験までは総合トレーニングを行う予定です。
入試問題の8割は、これまで学習したステップ4までの内容に関連しています。入試問題は、多くの領域が絡んだ複合問題ですので単純ではありませんが、それでも出来具合を見ていくと、基本的な事項がしっかり理解できているかどうかが解決の分かれ目になります。たとえば、交換の問題の出来不出来は、一番基本となる「一対多対応」が理解できているかどうかにかかっていますし、飛び石移動の問題に関しても、複雑な旅人算的発想の前に、一番基本となる動き方の作業段階で躓いている子どもが多くみられます。難しい地図上の移動の問題も、単純化した一つの交差点の曲がり方が理解できているかどうかにかかっています。もっと基本的なことを言えば、左右関係の理解の中で、他人の右手・左手が分かっているかどうかによって決まります。難関校を目指す方々にとっては、お子さまにより難しい問題が解けるようになってほしいと願うのは当然ですが、解けない理由の多くが、基礎が分かっていないというところに大きな原因があるということをしっかり把握しておく必要があります。難しい問題の解き方を教え込んでも意味はありません。自分の力で解いていけるような主体的な学習をするためには、やはり基本が何かをしっかり把握しておかなければなりません。多くの方々の学習相談にのってきましたが、その点の理解が不十分のように思います。
ところで、ステップ4までの学習を終えた現在、子どもたちの学力にどんな問題があるのか、われわれが指導している6領域に沿ってまとめてみました。
- 1. 未測量
- シーソーの四者関係で、2番目・3番目に重い(軽い)が分かるかどうか
- 言葉による関係推理は、説明の仕方によって難しい
- 量の保存の理由付けがまだわからない子が多い
- 2. 位置表象
- 他人の右手・左手の理解ができているかどうか
- 地図上の移動で、特に話を聞きながら移動する場合のとっさの判断ができない
- つみ木を使った四方からの観察で、反対や上から見たりする場合の理解ができるかどうか
- 3. 数
- 数が内面化されていないため、まだ指を使った操作をしてしまう
- 8以上の数の構成に時間がかかる
- 一対多対応の応用である交換やつり合いが、まだ十分理解できていない
- ペーパーで線を使って考える作業(絵どうしをつなぐ、囲うなど)の意味が分からないまま行うため、作業はできても答えで間違えてしまう場合が多くみられる
- 暗算能力が十分身に付いていないため、話の内容理解に数の問題が絡むと数の操作ができない
- 4. 図形
- 図形模写能力に相当の差がみられる。特に立体物の模写
- 大きさの違う三角パズルの構成に時間差が見られる
- 1枚ずつ動かして形を変化していく図形構成が難しい
- 5. 言語
- 一音一文字の応用課題である、言葉づくりや言葉つなぎが難しい
- しりとりのルールをしっかり理解する必要のある「逆しりとり」になると、まだ理解できていない
- 話の内容理解で、記憶する要素が4を超えると極端にできなくなる
- 6. 生活 他
- 水の浮き沈みや野菜の成長する場所、種の大きさや形状など、理科的常識に関する問題が未整理の子が多い
- 分類における理由説明がまだ不十分
- 法則性の理解に関し、どんな法則かを自分で解説することができない子が多い
これまで学習したステップ4までの基礎段階で、壁にぶつかっている問題を領域ごとにまとめてみました。こうした弱点を克服してから応用問題に取り組まないといけません。自分の力で解くためには試行錯誤の時間が必要ですが、それは、具体物やカード教材を使って行うのが一番好ましいと思います。ペーパーで解き方を教え込むやり方では、工夫された良い問題を解くことはまず不可能でしょう。出題する学校の入試担当の先生方が知恵を絞って工夫した新しい問題は、考える力の根幹を問いかけた良い問題ばかりです。こうした問題に対応するためには、基礎段階の学習をしっかりやらなければなりません。過去問だけを追いかけてきた学習をいったんここでストップし、本当に理解しているのかどうかをしっかり点検してください。