ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム《

シンガポールでこぐま会の教育が始まります

第575号 2017年5月12日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 5月4日から8日まで、シンガポールに行って来ました。今回の訪問目的は、シンガポール在住の日本人を対象とした幼児教室を開校するために、講演会と体験授業を行うことでした。講演会では「幼児期の教育はどうあるべきか《というテーマで、「KUNOメソッド《の内容と方法をお伝えしました。

大切な幼児期に何をどう学ぶのか
1. なぜ、今幼児教育が注目されているのか
  • ジェームズ・ヘックマン教授の「5歳までの教育が人間の一生を左右する《
  • 「学びが学びを呼ぶ《理論
  • 幼児教育の重要さが叫ばれても、何をどうすればよいかが分からない
    特に日本の場合は、幼児期における「知育《が軽視されている
2. KUNOメソッドの内容と方法
  • 3つの教育理念 : 教科前基礎教育・事物教育・対話教育
  • 3段階学習法 : 体を使い・手を使い・頭を使って
3. 数・図形に強い子をどう育てるか
  • 考える力を育てる
  • 量の概念を踏まえた、数概念の獲得
  • 空間認識を踏まえた、図形感覚の習得
4. 国語教育の基礎づくり
  • 読み・書きの前に、聞く力・話す力をしっかり育てる
5. 賢い子に育てるために、家庭ですべきこと
  • 遊びや生活体験がすべての学習の土台
  • 物事に働きかける経験のないところで認識は育たない
6. DVDによるこぐま会授業風景の紹介

こぐま会は、この10年間で中国(上海)・韓国・ベトナム・インド・タイにおいて提携教室を開校し、KUNOメソッドに基づく教育活動を行ってきました。駐在する日本人のみならず、現地人を対象としたクラスも行ってきました。シンガポールにおいても、日本人向けと現地人向けの両方を開校する予定です。シンガポールでは、小学校から中学校に進級する際に将来の進学コースを方向づける大事なテストがあり、それに向けた準備教育が過熱気味のようです。ですから当然小学校に入る前の幼児期の教育も過熱気味ですが、そこで行われる教え込みの教育に反対する保護者が多く、「考える力《を育てるKUNOメソッドに期待する声が多いようです。

5月5日はシンガポール日本人会ホールで講演会を行い、そのあとセントーサ島にある幼稚園「Eis Sentosa校《で体験授業を行いました。17~18吊ずつ2つのグループに分け、「秘密袋《と「一対一対応《の課題に取り組みました。以前に一度、香港の日本人幼稚園で体験授業を行ったことはありますが、それ以来久しぶりとなる海外での体験授業です。

年長の子どもたち全員に参加してもらいました。日本のこぐま会で学ぶ子どもたちと違って、集団での学習を初めて体験した子どももいたはずですが、みなさんとても意欲的に取り組んでくれました。秘密袋を使った触索や三角パズルを使った「山手線ゲーム《には、大変興味を持って取り組んでいたようです。触索だけで形を紙に描く課題は大変難しいですが、私たちが予想した以上に正確に描けました。ご家庭によっては、すでにこぐま会の教材を使って学習している子どももいましたが、ほとんどが初めてです。そうした子どもたちが、大変集中して取り組んでくれたことを思うと、事物を使った学習は、幼児期の子どもたちの物事に取り組む姿勢を育てるには、間違いなく有効な方法だということが改めて確信できました。受験を動機づけとした学習活動だけではなく、普段幼稚園や保育園で生活を送っている子どもたちにとっても、「事物教育《が学ぶ姿勢を育てる大変意味のある教育法であることが証明できれば、KUNOメソッドは幼児教育を変革する有効な方法だということができます。幼児教育は大事だと言いつつ、具体的な教育内容が明らかになっていない現在の上毛な幼児教育改革議論に問題提起できると確信しています。2つの体験授業を終え子どもたちが降園した後、幼稚園の先生方への研修として、1時間ほど「幼児教育の方法論《について、私が実践してきたことを述べました。日々、子どもの指導に当たっている先生方と意見交換できたことは大変有意義でした。

5月7日は、学習塾「KOMABA《において講演会と体験授業を行いました。5日のセミナーに参加できなかった多くの方々にお集まりいただき、同じテーマで講演会を行いました。日曜日とあって、ご両親で参加されているご家庭が多く、関心の高さを実感しました。そのあと、年少~年長までの混合クラスで、「秘密袋《と「三角パズルの構成《を行いました。こちらは年長だけの参加ではありませんので、難易度を考え、3歳児にも取り組める課題に変えながら実践しました。どんな様子になるのか皆目見当がつきませんでしたが、集中して取り組む子どもが多く、特に困ることもありませんでした。事物があれば、混合クラスでも楽しく学習できることを経験できました。その意味で、今回の体験授業は私にとっても初めての経験が多く、大変勉強になりました。

体験授業終了後、1時間半ほどシンガポールに駐在している教育関係者向けの勉強会を行いました。塾の先生、日本人学校の先生、教材を開発している方、これからシンガポール人を相手に「KUNOメソッド《を実践しようとしている方など、参加者は多彩でした。
日本を離れると、同業の方々が日本の子どものために手を取りあって、教育環境を整えることに努力されているのが良くわかりました。とても意味のある素晴らしいことだと思います。

シンガポールで開校すれば、これで海外6カ国において「KUNOメソッド《による幼児教育を展開することになります。日本発のメソッドが海外に根付いていけば、今まで海外のものばかりを輸入してきた日本の幼児教育が少し変わっていくのではないかと、期待しています。それは、幼児期の子どもたちの教育に対する保護者の皆さまの意識変革にもつながっていくはずです。受験があるから勉強するのではなく、将来の学習の基礎として幼児期の基礎教育が大事であるという認識が浸透していけば、「KUNOメソッド《が活用される機会が増えてくるのではないかと、ひそかに期待しています。

PAGE TOP