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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年の入試から何を学ぶか(1)

第506号 2015/11/13(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月1日から始まった都内小学校の入試も一段落し、多くの学校で合格発表がありました。今年の入試がどのように行われたか、また、昨年とどう変わったか等、現在聞き取り調査をしていますので、全容が解るまでにはもう少し時間が必要です。今年の入試に関しては次のような点を明確にするために、受験が終わった保護者の皆さまにご協力いただいて、聞き取りを続けています。
  1. 志願者は前年対比で増えたのか、減ったのか
  2. 入試問題にどのような変化が見られたか
  3. 行動観察重視の傾向は続いているのか
  4. 合否判定は、何を重視して行われたか
  5. 補欠合格者の動きはどうか
合格発表が終わると、大勢の皆さまから「合格」の連絡を受けます。しかし、送り出す私たちにとって一番つらいのは、力がありながら合格に結び付かなかった子どもたちのことです。健康状態は良好だったのか、また、行動観察のグループ内で何か問題が起こったのか、聞き取りミスはなかったのか・・・幼児ですからいろいろな条件が重なって、コンディションに変化が見られます。そうしたこともひっくるめての入試ですから、単にペーパーさえできればよいというのではありません。実際、テストでいつも上位にいる子が、今現在合格の通知を受け取っていないという現実を突きつけられると、一体何が悪かったのか、どんな評価がされたのか・・・考えざるを得ません。そこが小学校入試の難しさだと言ってしまえばそれまでですが、この疑問に答えられなければ受験指導も成り立ちません。そうした点も含めて、今年の入試の全容を明らかにしていくつもりですが、小学校側からの情報公開がない限り、こうした地道な聞き取りしか明らかにする方法はありません。以前とくらべると、かなり入試に絡む情報も公開され始めていますが、まだまだ間違った噂話が出てくることを考えると、十分ではないと言わざるを得ません。

これまで伝わってきている情報を総合すると、

  1. 志願者は、どの学校も昨年より少し増えたのではないか。ただそれが実質の倍率か、名目上の倍率かは、しっかり見ておかなければならない。
  2. 入試問題は、全体として易しくなっており、基本問題が多く出されている。こぐま会のセブンステップスカリキュラム ステップ4までの内容が良く理解できていれば、十分対応できるような内容になってきている
  3. 行動観察の内容は、予想した通り課題がはっきりしてきている。学校によってやる内容は違うが、一つの例として、運動会の練習をイメージしていただければ良いと思う。体を使った活動の中で、協力したり、一つのものに一緒に取り組み、みんなで解決したり・・・と集団での行動のありかたが問われている。その中においては個人の主張よりも、集団での「和」が大事だという印象を強く持つ。集団で創作ダンスをしたり、和を乱さずゲームをしたり・・・そうした活動を通して、指示がしっかり聞けているかどうか、また、人の立場に立ってものごとを判断できているかどうかなどが評価されている。
  4. 面接試験は特に大きな変化はないが、質問にどう答えたかではなく、三者で醸し出す家庭の雰囲気、特に母と子の関係を重視しているように思う。家庭と学校との相性を見ようとしているのかもしれない。
  5. 学力があっても行動面で問題がある子は、やはり合格できていない。問題があるということは、
    (1) 自己主張が強く、人の話がよく聞けない
    (2) 友だちと良好な関係が築けない
    (3) また一方で、自分の気持ちや考えを言葉で表現できない場合も不利

これこそ、小学校受験の特徴です。昔は、ペーパーを30枚~40枚も出した時期もありました。その流れをくんで、現在も「小学校受験はペーパートレーニングだ」と信じて疑わない人たちが多いのも驚きですが、それは昔の話。今は、ペーパーは多くても10枚前後、一般的には6~8枚前後です。この事実を知らされないで、毎日毎日ペーパートレーニングこそが受験対策だと考えていると、行動観察につながる大事な観点を忘れ、模擬テストで高得点を取っても合格できないという現実が起こるのです。ここをしっかり押さえておかないと、これからの入試対策は間違った方向に進むだけです。

これから集まってくる今年の入試情報を分析し、正しい受験対策ができるよう正確な情報をお伝えしたいと考えています。今年の入試をあらゆる角度から分析する「入試結果報告会」を12月13日(日)に予定していますので、正確な情報を身につけ、来年の入試に向けて正しい受験対策をしていただきたいと思います。

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