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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏季講習会でみられた子どもの弱点とその対策 (3)
- 数のやりとり・交換の問題は、あと一歩の努力 -

第494号 2015/8/7(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 毎年夏休み中に解決を目指す数の難問の中で、今年も子どもたちが苦労しているのは、「数のやりとり」と「交換」の問題です。我々がこの問題にこだわるのは、入試でたくさん出されているということ以上に、「論理的思考力」が求められているからです。その上この問題は、子どもに考え方のプロセスを説明をさせるには、とても良い素材であるということも見逃せません。これまでも、実際の入試問題を何度か紹介しましたが、ここに最近の問題をいくつか紹介します。

数のやりとり-1
男の子と女の子が5個ずつアメを持っています。
【問題】
  • 男の子が女の子に1個あげて、女の子が男の子に3個あげたら、2人の持っているアメはいくつになりますか。その数だけそれぞれのお部屋にをかいてください。
数のやりとり-2
【問題】
  • オセロは、片面が白、もう片面が黒になっています。それぞれのお部屋のようにオセロが並んだとき、白と黒のどちらを何個裏返しすれば、白と黒は同じ数になりますか。裏返しするほうのお部屋にその数だけをかいてください。
交換-1

左側の絵を見てください。絵本1冊と、鉛筆2本、消しゴム4個は、同じ値段です。花子さんは絵本を2冊買いました。
【問題】
  • 絵本2冊と同じ値段で買えるものが入っているカバンを下から探して青いをつけてください。
交換-2
ポンタ君とポンコちゃんとポンキチ君は、葉っぱを持ってお買物に行きました。
  • 大きい葉っぱ1枚は、木の実3個と換えることができます。
  • 小さい葉っぱ1枚は、木の実1個と換えることができます。

【問題】
  • ポンコちゃんは、大きい葉っぱ1枚と小さい葉っぱ2枚を持っています。木の実何個と取り換えることができますか。
  • ポンタ君は、木の実を7個持っています。どの葉っぱの組み合わせで取り換えることができますか。葉っぱのかいてあるお部屋にをつけてください。

  • ポンキチ君は、大きい葉っぱ2枚と小さい葉っぱ3枚を、木の実に取り換えたのですが、食いしん坊のリスさんに何個か食べられてしまい、5個しか残っていません。リスさんは何個食べましたか。

この2つの課題「数のやりとり」と「交換」の難しさは、以下のようにまとめることができます。

1. 数のやりとりの問題は、増えた方だけでなく、減った方にも着目できるかどうか、つまり、2つの視点を同時に持つことができるかどうかが最大の課題である

2. 交換の問題は、あるものを仲立ちにして考えることができるかどうかという点がまず一つ、その上で、交換の約束が子どもにとって身近であるかどうかも難易度を決める要素になっている。例えば、重さでは分かっても、値段となると同じ条件でも分かりにくくなるということである

3. また、過去に出された問題の中で、雙葉小学校のハンバーガーの問題(下記参照)が難しいのは、それまでは1種類のものと1種類のものが交換できる約束が、1種類のものが2種類のものと交換できるという条件になった途端、子どもたちにとっては、厄介な問題に変わってしまったということが言える

ですからこの3つの観点、すなわち「2つの視点を持つ」「仲立ちの理解」「交換条件の捉え方」を解決すれば、難しい課題も解いていけると考えています。

そのために、どのような経験を積めば良いのか。それを夏季講習会の課題として、次のようなゲーム化した内容で学習しました。

じゃんけんゲーム
  • はじめにおはじきを5個ずつ持って、勝つと相手から1個おはじきをもらう約束でジャンケンする。その後2回、3回と続け、最後にどちらが何個多く持っているか推理する。

このゲームは、「1個相手にあげれば差は2個になる」というところが難しく、なぜそうなるのかを実物を使って調べさせます。それが今回のじゃんけんゲームの大きな意図になります。

交換に関する問題は、大分よく分かってきました。今回は基本的な考え方を銀行ゲームとして行い、その上で雙葉小学校の難しい問題に挑戦させました。

一対多対応の応用(銀行ゲーム)
  • クマのコイン1枚で、ウサギのコイン2枚と換えてもらえます。
  • ウサギのコイン1枚で、カメのコイン3枚と換えてもらえます。
【問題】
(1) クマのコイン3枚でウサギのコイン何枚と換えてもらえますか。
(2) カメのコイン9枚でウサギのコイン何枚と換えてもらえますか。
(3) クマのコイン2枚で、カメのコイン何枚と換えてもらえますか。

置き換えの応用(動物村のパン屋)
動物村のパン屋さんは次のようにパンを取り替えてくれます。
  • メロンパン1個はドーナツ2個と換えてもらえます。
  • 食パン1斤はメロンパン2個と換えてもらえます。
  • ハンバーガー1個は、メロンパン1個とドーナツ1個と換えてもらえます。
【問題】
(1) ドーナツ4個は、メロンパン何個と換えてもらえますか。
(2) 食パン2斤は、ドーナツ何個と換えてもらえますか。
(3) ハンバーガー4個は、食パン何斤と換えてもらえますか。

この雙葉の有名な問題に即して言えば、「メロンパンからドーナツ、またはドーナツからメロンパンに変える」、同じように、「食パンからメロンパン、またはメロンパンから食パンに変える」ことはよくできます。次の課題は、「食パンとドーナツの関係を、メロンパンを仲立ちとして考えることができるかどうか」です。例えば、

1. 食パン2斤はドーナツ何個と換えてもらえますか?
2. ドーナツ12個は食パン何斤と換えてもらえますか?

置き換えを伴うこの問題は、シーソーにおけるつりあいの考え方につながっています。1.の聞き方はかけ算の考え方につながり、2.の聞き方はわり算の包含除の考え方につながっていますが、やはり2.のほうが難しいようです。

この問題の次に解決しなければならないのが、「ハンバーガー4個は、食パン何斤と換えてもらえますか」という問題です。この問題が今の時期に解き方の説明も含めてできるのは、まだクラスの半分以下です。答えが出せても説明できない子が多く見られる問題です。家で何度もやっているうちに、答えまで覚えてしまったのかもしれません。そういう場合は、「ハンバーガー8個は、食パンいくつ?」と数を変えて行います。そうすれば本当に理解している子はできますが、家で4個のハンバーガーだけで訓練されてきた子にはできません。これが教え込み教育の限界です。

さて正解できない子がどんな答えになるのか、一番多いのが4個、次に多いのが2個です。しかし、答えは違っても正解に向かってかなり努力した結果の誤答です。そこまで考えることができた努力を認めてあげることがまず大事です。その上で足りなかったことを自覚させることが必要です。「数のやりとり」と「交換」の問題は、9月初めまでには解決できるようにしなければなりません。

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