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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試が変わる(2) 情報公開に積極的になった学校

第482号 2015/5/15(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 40数年間の受験指導の中で、私が学校側に一番強く訴えてきたのは、「間違った受験対策にならないよう、入試に関する情報を公開してほしい」ということでした。コラムで訴えたり、学校関係者が集まるセミナーで訴えたりしてきました。しかし、学校側は一切の情報を公開してきませんでした。おそらく、受験に関して学校側が話せば、余計に受験競争に拍車がかかると考えてきたのでしょう。その結果、塾側から流される情報が正確さを欠いたり、根も葉もない噂話が飛び交い、時にはある思惑が絡んで情報が操作されたりしてきました。そのようにして、子どもたちの成長を阻害するような指導が「受験教育」の名のもとに横行し、その詰め込み教育が、学習嫌いの子どもを生み出してきたのです。その結果は明らかで、学校生活がスタートする時点で、すでに学習意欲をなくしてしまっているのです。そうした入学後の子どもたちを見て、いま学校側は、小学校受験に携わる「受験産業」に対して、さまざまな角度から警鐘を鳴らし始めているのです。

いつ頃から始まったのか記憶は定かではありませんが、中学校入試では当たり前のように行われてきた、学校側が塾に対して説明会を行うということが、小学校入試でも行われるようになってきました。まだすべての学校ではありませんが、今年から始めた学校もあります。さすがに、学校側が塾に出向いて、保護者に入試問題など試験の詳細を説明するということまでには至っていないようですが、今後はあり得ない話ではありません。今までかたくなに情報公開を拒否してきた学校が、塾を対象といえども受験に関して説明会を開くようになったのは一歩前進だと思います。そこでは、学校の教育方針だけでなく、受験で出題する問題に関するかなり正確な情報、例えば昨年出題した問題、今後出題する問題の傾向等の話も出てきます。ここまで詳しい情報を出してくる背景には、定員割れを起こすことも珍しくなくなった小学校受験ですから、学校側の生徒集めの思惑も働いていることは間違いありません。こうした学校側の話が、塾を通して正確に保護者に伝わるのであれば大変好ましいことだと思いますが、商業的な発想から、それが歪曲されて伝わらないように願っています。また同時に、受験を特別な教育と考え、合格さえすれば何でも許されるとして、子どもたちの成長を阻害するような受験指導を売り物にしてきた教育機関に大きな反省を促しているとも言えます。「カリスマ教師」を仕立て上げ、権威づけをして、保護者に有無を言わせず詰め込み教育を強要してきたこれまでの受験指導の在り方に、学校側が「NO」を突き付けているのです。

子どもたちが大きく羽ばたく未来を信じ、次代を担う子どもたちを育てようとする小学校側が、詰め込み教育で疲弊し、学習嫌いになってしまった子どもたちを望むはずもありません。小学校に合格することが最終目標ではなく、入試がこれから長く続く学校生活のスタートであると考えれば、決して将来に傷を残すような受験指導をすべきではありません。子どもたちを送りだす塾側と、子どもたちを受け入れる学校側が、同じ考えで子どもたちの教育にあたらなければいけません。これまでかたくなに情報公開を拒否してきた学校側の姿勢が大きく変わり始めた今こそ、その実現が現実のものとなりつつあるように思います。これから始まる学校説明会においても、学校側が考える「望ましい子ども像」の話が出てくれば、間違った受験対策が是正され、保護者の皆さんもゆとりを持ってまともな幼児教育に打ち込むことができるのではないかと期待しています。

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