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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

一つの経験が、子どもを変える

第397号 2013/7/19(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 長い夏の講習会が始まりました。これから8月31日まで、7週間の「夏の挑戦」の始まりです。基本クラス単位で行う、お弁当持参の「総合力完成講座」を中心に、「学校別対策講座」「行動観察対策講座」「考える力を育てる難問講座」を始め、今年から新たに行う「女子難関校共通 新傾向の問題講座」等も予定しています。夏の受験対策は、「自立した思考・自立した行動」を徹底して身につけることです。幼児だから教え込めば良いと考え、ペーパー対策も行動観察も、徹底した教え込みを行うのが受験対策だと勘違いしている方が非常に多いことが、今学校側でも大問題になっています。教え込まれた学力・教え込まれた表現型などは、入学後には使いものにならないと、教育現場の先生方は感じています。そのために、入試問題を相当研究し、どんな課題においても、自立的な問題解決能力を検証しようとしています。ペーパーテストにおいても、また行動観察においても、そうした観点で子どもたちを評価しようとしています。だからこそ、自分の力で考え、自分たちの力で問題を解決することを求めているのです。

入学以降始まる「教科学習」のためのレディネスは、決して教え込まれた能力ではありません。学校側が求めている「自立した思考」「自立した行動」を身につけるために、夏にすべき課題ははっきりしています。1つ目は基礎学力の点検、2つ目は過去問・難問への挑戦、3つ目は自主的な問題解決行動のための「集団活動」の積み上げ・・・この3つがうまくかみ合った時、夏の学習は実を結びます。15日から始まったお弁当持ちの「総合力完成講座」では、この3つの課題を解決するために、

  1. 出題頻度の高い最重要課題を、具体物やカードを使った授業でトレーニングする
  2. 基礎学力の点検と過去問トレーニングをペーパーで行う
  3. 暗算の総仕上げのための10分間トレーニング
  4. 踊りの練習と発表を通して身体表現の楽しさを味わい、引っ込み思案な子どもの表現力を高める
  5. 5日間かけての「劇づくり」を通して、友だちと協力して一つのものを作り上げる経験を積む

以上の内容を核に、毎日4時間の活動を連続して5日間行っています。毎週1回の基本クラスを経験している子どもたちが、5日間連続顔を合わせ、お弁当を一緒に食べたり、最終日にお母さま・お父さまに見てもらう劇のために、配役を決めてセリフの練習をしたり、劇に使う小道具を一緒に製作するなど、日常の教室では経験できない活動を行ってきました。その中で、いつもの授業では見せないそれぞれの個性がぶつかり合い、子どもたちの関係に変化が見られ、普段の学習では生かしきれなかった、それぞれの子どもの良さが表現され、このお弁当持ちの講習会の後、教室での取り組みが全く変わっていく子どもたちを毎年大勢見てきました。一つの経験が人間関係を変え、そこで得た自信がさまざまな面に効果的に表れてくるのでしょう。ある瞬間から子どもが大きく変わるということが本当にあるということを毎年9月以降の教室で実感しています。その点を考えると、踊りや「劇遊び」といった身体表現の持つ教育的効果は、幼児の場合相当高いものがあると思います。

こうした良い意味での変化を遂げていく子どもを大勢見る半面、これまでの学習の仕方に問題があったのか、子どもに相当のプレッシャーがかかり、今後の取り組みが懸念される子も少なからずいます。

  1. チック症状が見られる子
  2. ペーパー問題になると最初から身構え、少しでもできないことがあると涙ぐむ子
  3. 自分で考えようとせず、常に周りの子どもの様子を気にする子
  4. 答え合わせをするたびに「お母さんに叱られる」のつぶやきを連発する子
  5. 早ければ良いと思っているのか、の描き方一つをとっても丁寧にできない子
  6. 答えは合っているのに、その根拠を説明できない子

こうした子どもたちの原因を調べていくと、そのほとんどが普段の学習の仕方、とりわけ学習をめぐる大人との関係、もっとはっきり言えば、受験勉強をめぐる「母子関係」からくるプレッシャーです。お母さんにほめられたい一心で頑張る子ども。しかし、その努力が受け入れられず、常にしかられ、叱咤激励される学習面での母子関係が、こうした異常な行動をとらせているのです。理屈では解っていながら感情的になり、一生懸命頑張ろうとしている子の気持ちを逆なでするような行動が、原因のほとんどです。最近は、それが塾の教師との間で頻発し、そのいやな経験を背負いこみながら、学習に向かっているのです。専門的な素養を持たない、お母さん感覚の教師が増えた結果、こうした事態が起こっているのでしょう。

こうした人間関係の中から子どもを救ってあげないと、楽しいはずの勉強が、つらい勉強に変わってしまいます。そうならないことを願いながら、これから入試本番までの良好な母子関係づくりが合否の分かれ目になるということを、よく知っておいてください。


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