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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今乗り越えなくてはならない課題

第398号 2013/7/26(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 7月15日から始まった夏季講習会も、現在は「Bクール」の授業が行われています。先週のAクールの講習会には私も現場に立ちましたので、その時の子どもの取り組みの様子から、今壁になっている課題は何かをお伝えします。

ところで、お弁当持ちの4時間の講習会「総合力完成講座」は次のような構成になっています。

1. 具体物やカードを使った、難問トレーニング
2. 6枚のペーパーをテスト形式で行い、基礎学力・応用学力をチェックする
3. 6枚のペーパーを素材に、解答に至るまでの考え方を説明させる
4. 暗算トレーニング
  (お弁当)
5. 記憶の練習
6. 常識問題トレーニング
7. 5日目に発表する劇づくり
8. 劇に使う大道具・小道具の製作
9. 身体摸倣、踊りの練習

午前中は「学力を高める学習」、午後は行動観察対策として、「自分で考え、自分で行動するための経験の積み重ね」ということになります。入試を控えた今の時期から考えれば、ペーパーを中心とした学習に重点を置くべきですが、あえてペーパー学習の前に、カードやボードを使って考え方をトレーニングしなければならないのは、それだけ子どもたちにとって未解決な問題がたくさんあるからです。

今回、ペーパー学習の前に取り上げた難問トレーニングは、

1. 地図上の移動
2. じゃんけんを使った関係推理
3. 三角パズル・つみ木を使った形の変化
4. 置き換えを伴う交換
5. 回転推理(回転テーブル・回転位置移動)

以上の5つの課題です。この5つを取り上げた理由は、最近の試験で良く出されている点と、まだ多くの子が完璧に解決していない問題であるからです。

また、毎回6枚のペーパートレーニングでみられた、出来具合に差のでる問題、全体としてもう少しトレーニングしなければならない問題は、次のような内容です。

(1) 鏡の映り方と、反対から見た見え方の違い
(2) お話によって場面の数が変化した場合の数の操作
(3) しりとりを最後から戻って考える、「逆しりとり」
(4) つりあいの場面も入ったシーソーの四者関係
(5) 数のやりとり(同数からスタートした時の数のやりとり)
(6) 地図が見えない状況で話を聞く、「地図上の移動」
(7) 飛び石移動(旅人算的追いつき問題)
(8) 一対多対応の応用問題・仲立ちを伴う交換問題
(9) 差をつけた数の分配
(10) 複数重なる半分折りの重ね図形

最近の傾向を踏まえると、特に(2)・(5)・(7)・(8)・(10)の問題が重要です。また、ペーパーを使った学習の仕方にも工夫が必要です。特に仲立ちを伴う(8)の交換の問題で見られるように、どの問題にも正解には至らなかったけれども、あと一歩で正解に至るという子が多く見られます。答えを導き出した子に、「どうしてそうなったのか」と尋ねると、どこまで正しく理解し、どこから解らなくなっているかが良くつかめます。こうした場合、途中まで正しく考えられていたその事実を認めてあげることが大事です。○か×かで言えば確かに×ですが、それだけで判断してしまうと、考え方を積み上げてきた子どもの努力を台無しにしてしまいます。最終的に正解に至らなくても、正解に至る道筋をしっかり踏まえている子には、それなりの評価をしてあげることが大事です。それをつかむためには、考えのプロセスを言語化させることです。1時間に何十枚ものペーパーをこなすトレーニングは、指導する教師も○か×をつけるのが精いっぱいで、子どもの思考過程まで入り込んだ指導はできません。1枚のペーパーの○つけが終われば、「はい次の問題にいきますよ。間違えたところは、家でちゃんとやっておいてね」・・・たぶんそんな指導でしょう。しかし我々は、そこで求められる考え方を身につけさせるために、1枚のペーパーの答え合わせに相当の時間を割いています。そこで、子どもの考え方にまで入り込み、どこまで解り、どこから解らなくなっているかをしっかり把握し、間違いの原因を子どもに伝えてあげることです。あと一歩で正解に到達する子どもの理解力を、×で切り捨ててしまってはいけません。ペーパー主義の間違いは、合っているか間違っているかの判断だけで、なぜ間違ってしまったのかを子どもに伝えず、また途中まで正解している子どもの努力を切り捨ててしまっている点です。教室での授業が、ペーパーを使った学力点検だけならば、子どもたちは一体どこで飛躍できるのでしょうか。難しい問題であればある程、ペーパー問題の取り組みの仕方を工夫し、1枚のペーパーを深く理解する学習が必要です。

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