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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「考える算数」をめざして

第383号 2013/4/12(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会では、幼児期の教育と小学校での教科学習を同じ考え方で繋げるために、「幼小一貫教育」を指導理念の一つに掲げ、その実現に向けて日々の教育活動を続けています。特に、受験が終わった後の「就学準備クラス」(年長1月~3月)においては、それまでの受験対策としても有効な「基礎教育」の内容に繋げながら、小学校で学ぶ四則演算の考え方を徹底して指導してきました。その結果、かけ算・わり算の考え方だけでなく簡単な計算もできるようになりました。暗算で数の変化を捉えるトレーニングを「ばらクラスの授業」でたくさん積んできましたので、それに数式の意味を繋げてあげればいいわけです。

たし算・ひき算の考え方は、「数の構成」「一対一対応」「数の増減」で学びました。また、かけ算の考え方は「一対多対応」「交換」で、わり算の考え方は「等分」「包含除」で学びました。それらを数式化してあげれば良いわけです。私は、海外に講演会に出かけると必ず本屋に立ち寄り、幼児向けにどんなテキストが販売されているかを調査してきましたが、多くの国で出版されているテキストを見る限り、そのほとんどが、「たし算」「ひき算」の数式から導入されています。つまり、小学校で学ぶ内容を易しくして、幼児期の子どもたちに与えているだけです。私たちは、数式を導入する前に、生活や遊びの次元までおりて考えさせ、数式の持つ意味を具体的に感じとらせながら、四則演算の基礎を作ってきました。日本で出版されている幼児向けの算数教材においても、そのほとんどが小学生を対象としたテキストを易しくして年齢を下ろしただけで、ほかの国のテキストとなんら変わることはありません。そのため、算数は計算を早く正確に行うことだと考えられ、「計算主義の算数」が広まっているのです。私たちは、決して「計算」を無視しているわけではなく、計算式に込められた数の操作の意味を、生活レベルまでおろして理解させることが、その後に続く応用問題でつまずかない有効な方法だと考えています。以前にも書きましたが、下のように同じ数字を使った式の意味の違いをきちんと説明できてこそ、計算が解ったということになるのですが、その意味の違いもわからないまま、計算だけが独り歩きしているのが、今の日本の算数教育の実態です。

6+2   6-2   6×2   6÷2

これでは、論理が求められる問題や、式を立てることに重点をおいた問題に対処できるはずはありません。かけ算九九が言えても、「3×4」と「4×3」の意味の違いが理解できている子は少ないのです。この状態で高学年の文章題に進んだら、まったくのお手上げという状況は目に見えています。

こうした状況を踏まえ、「生活に根差した算数」「考える算数」の実践をしてきましたが、このたび、幻冬舎エデュケーションより「100てんキッズ」シリーズの一環として、4冊の問題集を出版しました。その内容は、『幼児のたしざん・ひきざん 1』『幼児のたしざん・ひきざん 2』『幼児のかけざん』『幼児のわりざん』の4冊です。すべて、こぐま会で実践している「就学準備クラス」の経験を踏まえて作りましたので、子どもたちにとっても使いやすいはずです。ここで意図した最大の目的は、計算式に入る前に、その計算の意味を生活や遊びのレベルで理解させ、それを踏まえて計算の仕方を伝えるものです。特に『幼児のかけざん』『幼児のわりざん』は、そのタイトル自体も目新しいと思いますが、なぜ小学校2年生や3年生で行う計算を幼児期から取り上げたのかと言えば、子どもたちの生活行為の中に、その基礎があるからにほかなりません。また、小学校入試においては、ほとんどの学校がこの内容に関する問題をたくさん出しており、私たちの考える、算数の基礎を作るにはとても良い問題ばかりだという現実があるからにほかなりません。計算のレベルまでくれば、あとは繰り返しのトレーニングで「速く・正確に」を求めていくつもりですが、その前にやっておかなければならない学習を徹底するように、内容を厳選し、構成しました。
就学前の子どもたちだけでなく、この4月に入学した新1年生の皆さんにも使っていただきたい問題集です。


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