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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

教育業界に偽装はないのか

第38号 2005/12/08(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 連日テレビや新聞で、耐震強度偽装問題が報道されています。生きていくうえで一番基本となる「住居の安全」が確保されず、命の保障すらない当事者の皆さんのことを思うと、ひとごとでは済まされない、怒りがこみ上げてきます。思えば、こうした偽装工作はこれまでも食べ物を中心に、たびたび起こっていました。野菜や魚の産地の偽装や牛肉の偽装問題も記憶に新しいものです。今回の耐震偽装問題が報道されたとき「またか」という思いを強くしましたが、これまでと違って、「命の安全」がストレートに問題になっている分、深刻です。利潤だけを追求する企業体質が生み出す最悪の事件だといってしまえばそれまでですが、信頼関係を基にした経済活動が、モラルの崩壊によって成立しないとすれば、私たちはどのように考え、行動すればいいのでしょうか。

 目に見え販売されている商品がそういう状態であるとしたら、目に見えにくい医療サービスや教育サービスでは、もっと手の込んだ偽装工作がなされているのではないかと思わざるを得ません。実際私たちが従事している幼児教育業界においても、私はたくさんの偽装工作を見てきました。たとえばこんなことがあります
  • 合格者の数を偽装して発表する
  • 他人の教材をコピーして、「これはうちが開発したものです」と生徒に売りつける
  • 他人が開発した教材を、自分たちが開発したかのようにホームページに公開する
  • 実際に出題されたこともない難しい問題を偽装して公開模擬テストで出し、「これができないと合格できませんよ」と脅して、自分のところの講習会に参加させる
 こうした偽装工作は、日常的に行われていることです。命に別状はありませんが、根っこのところは、今起こっていることとなんら変わりありません。利潤追求を第一の目的とし、教育を商売の道具と考え、最低限のモラルすら持ち合わせない人たちがこの業界に大勢関わっていることを忘れてはなりません。有名な塾の経営者が、こぐま会の教材を無断でコピーして独自教材だと偽って使用したり、販売したりしているという連絡が、その塾に通う保護者の方から、実際にありました。また、こぐま会が開発した教材を無断でホームページに掲載し、さも自分たちが開発した教材であるがごとく宣伝した塾もありました。合格者数の水増し発表などは,日常的に行われています。私はこうした不正行為を、これまでもことあるたびに警告してきましたが、まだまだ改善されていません。こうした、状況の中で、何が本物で何が偽者かの判断は、保護者の責任において行うしかありません。美辞麗句を並べた宣伝文や勧誘に惑わされない、確かな眼を持っていただきたいと思います。そして、しっかりした教育理念を持ち、信頼できる教師が指導にあたっている教育機関であるということを、親の責任において実際に確かめる必要があります。

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