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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試はゴールであり、また新たなスタート

第366号 2012/11/30(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月23日の午前中、入試が一段落した方々を対象に、1月から始まる「就学準備クラス」に関する説明会を行いました。これまで、合格を目指して頑張ってきた学習を、4月から始まる小学校での学習にスムーズに繋げていくための「就学準備」の講座です。これまでの日常の学習は、未測量・位置表象・数・図形・言語の5領域を中心に、「教科前基礎教育」として行ってきましたが、入試に対応するだけでなく、入学後から始まる教科学習の基礎を身につける大事な学習でもありました。最近の入試問題は、特別な訓練を必要とするものではなく、「幼児期の基礎教育」として考えられる内容をしっかり身につけていけば、十分対応できるようになりました。それは、教え込まれて形だけを身につけてきた子には対応できない「考える力」が要求される問題が増えてきたということです。そのため、合格を目指すには基礎をしっかり身につけ、新出の問題も自分の力で解いていけるような指導が必要です。こぐま会では教え込みの教育にならないよう、事物教育と対話教育を通してものごとに働きかけ、試行錯誤させる経験をたくさん持たせてきました。

入試のためとはいえ、この1~2年間がんばってきた学習を、次のステップに繋げてあげることがこれからの課題です。入試が終わった途端に学習をやめてしまったのでは、これまでの頑張りが生かせません。例えば、数の領域の学習を振り返ってみれば、たし算・ひき算につながる「一対一対応」「数の増減」を学んできましたし、かけ算・わり算につながる「一対多対応」「等分」「包含除」「交換」等、かなり難しい課題にも挑戦してきました。数式こそ使いませんでしたが、四則演算の考え方は、現実の生活や遊びにテーマを求めて、しっかり学んできたはずです。その考え方を数式にスムーズに置き換えれば、たし算・ひき算だけでなく、かけ算もわり算も一挙に解決できるのです。そのつなぎ方こそが、私たちが主張している「幼小一貫教育」なのです。これまで学んだものを、次のステップに繋げられれば、今批判の対象になっている「計算主義の算数」を乗り越えた、真の意味での算数学習に繋げていくことができるはずです。「計算はできるけれど、文章題になると解けない」というのは、子どもの能力の問題ではなく、指導する側のプログラムの問題です。例えば、インド式のかけ算が暗算できても、「2×3」と「3×2」の意味がわからないようでは困るのです。

就学準備は、算数・国語・英語の3科目で行いますが、例えば算数では、次のようなプログラムで幼小一貫の大事な橋渡しを行うつもりです。このプログラムをスタートとし、かけ算の九九を覚える練習等も含め、小学校3年生までに学ぶ四則演算の基礎を、数式も含めて、これからの1年間の学習で完成させるつもりです。それが可能になるのは、入試対策として行ってきたこれまでの学習で、基礎がしっかりできているからにほかなりません。

<就学準備クラス 「算数」カリキュラム>
第1回「たし算・ひき算って何?」 数の構成とたし算・ひき算
一対多対応・数の構成・数の増減復習/3つの部屋の数の構成/足だし式の練習/話を聞いて式を立てる
第2回「たし算・ひき算の計算法」 音読と聞き取り
数の増減・足だし式・3つの部屋の数の構成復習/暗算練習/プラス・マイナスの記号の理解とその計算法
第3回「隠れた数を探せ」 ブラックボックス・逆思考
逆思考の問題復習/10の構成/3×3方眼による数の構成(数字で行う)/魔法の箱を数字で行う/を使った式(空欄を埋める)
第4回「かけ算って何?」 一対多対応とかけ算
一対多対応の復習/絵を使ってまとまりを作る練習/かけ算の式の立て方(一あたり量×いくつ分)/立式練習
第5回「わり算って何?」 等分や包含除によるわり算
等分除・包含除の復習/わり算の式の立て方/立式練習
第6回「かけ算って答えをどう出すの?」 かけ算の計算法
×式の意味/かけ算九九表/一対多対応暗算とかけ算/簡単なかけ算 5の段・2の段
第7回「わり算って答えをどう出すの?」 わり算の計算法
÷式の意味/等分除・包含除の意味/暗算練習とわり算の答え方
第8回「話を聞いて式を立て、解いてみよう」 文章題の基礎
短文を聞いて式を立てる/長文を聞いて式を立てる/立てた式を解いて答える
第9回「文を読んで式を立て、解いてみよう」 文章題の基礎
短文を読んで、式を立てる/長文を読んで、いくつかの質問に答える/文章題解決のコツ
第10回「10週授業の総まとめ」

私はこれまで、小学校の受験対策のための学習が、幼児期の基礎教育の「動機づけ」になると言ってきましたが、それは、こうしたプログラムがあってこそはじめて可能です。これまでの学習習慣を継続し、また、これまで学んだことを本当に生かすためにも、小学校へのつなぎ、すなわち「就学準備」をしっかり行っていただきたいと思います。そのつなぎの内容は、決して計算やひらがな、漢字練習だけに終わらせてはいけません。あくまでも将来の学力の基礎となる「考える力」を育てることを念頭においた内容でなくてはなりません。

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