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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年の入試から何を学ぶか(1)

第363号 2012/11/9(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 都内の私立小学校の入試も峠を越し、慶應義塾幼稚舎や早稲田実業学校初等部などいくつかの学校の発表を待つばかりとなりました。また、今年が初めてとなる慶應義塾横浜初等部の入試がこれから行われます。今年の入試がどのように行われ、どのような合否判定がなされたか。補欠合格者の動きはどのようになっているか等については、現在調査中です。いずれ判明した段階で、入試分析セミナーを開催する予定ですので、ぜひご参加ください。今年は入試日程の変更がいくつかあり、その結果、従来のパターンで併願校の受験ができなくなりました。その意味で、今年受験した方々は大変苦労されたのではないかと思います。そうした点の情報入手も、来年以降受験される皆さんにとっては重要なことですので、ぜひ足をお運びください。間違った情報に振り回されないよう、正確な情報を身につけてください。どこまで難しい問題を学習すべきか等も、実際の入試問題の分析を踏まえて考えるべきことです。

本試験の日程上では併願が可能なはずなのに、10月に行われる面接で重なったり、また試験を行う月齢順が昨年までと変わったりして、受験できなかった方も多く見られました。そのため、名目上の倍率と実際の倍率では大きく異なった学校もあったようです。面接については、以前は理由があれば日程の変更も可能でしたが、現在はほとんどの学校で認めておらず、指定時間に来なければ棄権とみなす学校が増えているようです。全体として受験者が減っている現状で、第1志望校か否かをそうした面でチェックしているのでしょう。

問題の傾向については、聞き取り調査を終え、現在具体的な問題としてペーパーに落とし込んでいる段階ですので、もうしばらく時間が必要ですが、いずれまとまってくると思います。ペーパーが少なくなっている時代ですから、1問1問具体的に検討し、どんな能力が求められているかを分析する必要があります。その点をしっかり押さえて学習しないと、問題の形式が変わった時、対応できなくなります。全体として、ひとつひとつの問題は工夫された良い問題が多く出されていると思いますが、工夫された問題は子どもたちにとっては新出の問題として映り、簡単にできるものばかりではありません。そこが、学校側が問題を工夫するポイントだろうと思います。それに対応していくためには、基礎をしっかり身につけておくことが大事です。その基礎学力は、決して教え込みのペーパー学習だけでは身につきません。時間がかかろうとも、具体物やカードを使い、試行錯誤する時間を保証していかなければだめです。急ぐあまり、そうした子どもたちの能動的なものごとへの働きかけを排除したのでは、結局自分の力で問題を解くことができず、ましてや考え方を言語化できるはずはありません。ひとつひとつの問題を試行錯誤して解答に導けば、その考える過程を自分の言葉で説明できるようになります。それをしないで教え込んでしまっては、子どもの思考力を育てることはできません。間違った入試対策の最たるものは、学習の最初から過去問を課題とし、何の経験も積ませないでペーパーを使って解き方を教え込むやり方です。子どもがものごとをどのように理解していくかといったことなどお構いなしに、ただ新しいことを頭から叩き込んでいく受験対策が、どれだけ子どもたちを潰しているか・・・長年の教育相談から見えてくる間違った受験対策の弊害は、入学以降も引きずる深刻な問題です。そうしたことにならないよう、保護者の責任において正しい判断をしてください。

今、多くの学校で工夫している問題の多くは、きちんとした意図をもったまともな問題であり、振り落すための難問・奇問ではありません。今年の問題を分析していけば、必ずこうした問題が多く出題されていることが分かるはずです。学校側が問題を公表していない現状で、ひとつひとつの問題を分析するのは難しいことですが、それを行うことが私たち指導者の責任です。今年の入試から何を学ぶかは、まず「入試問題」の分析を通して学校側が求めているものを明らかにすることです。こぐま会では、聞き取った問題を分析し、過去の問題との比較も含め、今年度も学校別に「教室指導者からのメッセージ」を発行しますので、ご期待ください。

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