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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

学習環境の変化が子どもを潰す

第312号 2011/10/14(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年11月から行ってきました「合格カレンダー連続講座」は、夏季講座等でお休みをしていましたが、昨日最終回の講座を行いました。面接試験も始まっている時期ですので、最終回のテーマは「合格に向けた直前対策と入試当日のこと・合格発表・その後の学習」としました。

合格カレンダー連続講座 最終回
「合格に向けた直前対策と入試当日のこと・合格発表・その後の学習」
1. 最近の傾向を踏まえて、もう一度確認していただきたいこと
 最終確認ペーパー
2. 国立受験のために、最低準備しておくこと
 国立情報
3. 入試当日の迎え方(合格者からのアドバイス参照)
 健康管理
 送りだす時の言葉
 いろいろな失敗例
4. 合格発表後に起こる問題
 複数合格した場合の断り方
 補欠合格した場合
 不合格の場合の対策
5. 入試終了後の学習(これまでの学習をどう生かすか)
 就学準備
 ひまわりクラブ算数特進クラス・英語特進クラス

都内の入試を2週間後に控えた今、家庭での最後の学習をどうしたら良いのか、大勢の方から質問を受けます。この質問に答えるために、最近の傾向を踏まえた最も出やすい課題を参加者の皆さんに30枚のペーパーにしてお渡ししました。最近の傾向を踏まえ、必ず出される課題をまとめたものです。

1. シーソー
2. つりあい
3. 関係推理
4. 地図上の移動
5. 飛び石移動
6. 回転移動
7. 四方からの観察   
8. 方眼上の移動
9. 数の増減
10. 数のやりとり
11. 一対多対応
12. 交換
13. 話による場面の数の変化
14. 鏡映像
15. 対称図形
16. 重ね図形
17. 分割三角パズル
18. 一音一文字
19. 言葉つなぎ
20. 同音異義語
21. しりとり
22. 魔法の箱
23. 観覧車
24. 変化の法則性
25. じゃんけんゲーム
26. 断面図
27. 季節
28. 昔話
29. 折り紙を使った課題 (穴の位置・折り線のつき方・分かれ方)
30. 紐の結び方

これがすべてではありませんが、難しい問題の多くはこの課題の中から必ず出ます。この課題の学習をこれから2週間の間に繰り返すこと、そして、会員の皆さんに夏にお渡しした「基本学習ボード」を繰り返すこと、そして、暗算練習・スピードトレーニング・話の読み聞かせ・・・・これを毎日続けること。これが仕上げの学習の基本パターンです。この絞り込みを間違えると効果的な対策はできませんし、時間をかけた割には効果の上がらない学習をすることになります。
また今回の講座では、意外と知られていないペーパーテストの実施方法を主要校に絞ってまとめ、それを報告しました。その内容とは、ペーパーの大きさ・筆記用具・解答の際の印の付け方・訂正の方法・設問の方法・・・ 以上の5点です。これを昨年度の入試に即して一覧表にしました。これがなぜ大事か。模擬テストが終わるたびに、「家でやればできるのに、どうしてテストになると点が取れないのか」という質問を受けます。ケアレスミスと言ってしまえばそれまでですが、質問の聞き取り・答え方に関する正確さが、ペーパーテストの点数に大きく影響しているのです。をつけるところでをつけたり、緑で印をつけるところを青でやってしまったり・・・そうであるなら、徹底してその学校の出題方法を研究することです。例えばある学校は、B4の大きさ・青のクーピーと鉛筆・基本をつける・訂正方法は×・質問はすべて口頭。一方で別の学校は、A4の大きさ・鉛筆・×等・訂正方法は斜め二重線・質問は全てテープ。というように違います。こうしたことを家庭学習で生かすことが・・・、これが点が取れるところで落とさない訓練方法なのです。もちろん年によって変化はしますので、あまり徹底しすぎるのもリスクがありますが、数年来変わっていないところは多分今年も同じ方法で行われるはずです。

今回の講座ではこのほかに、入試当日の迎え方や合格発表後に起こる問題等を「合格者からのアドバイス」にもとづいてお伝えしました。都内の入試まで残すところあと2週間。体と心の健康管理に留意して、一番良い状態で入試本番を迎えたいものです。例年、健康管理を徹底しすぎて、入試当日までの1週間~10日間、幼稚園や保育園を休ませて本試験に備える方もいますが、これだけは絶対にしてはいけません。子どもの一番大事な生活を奪って試験を迎えることほど、学校側の求めるものと反対の方向を向いたことはありません。入試まで淡々と、いつもと同じ生活を送ること、それが大事です。生活環境や学習環境を変えることがどれだけ子どもの心の負担になっていくか考えてみてください。けがをさせたくない・風邪をひかせたくない・・・そういう想いは理解できますが、そのことが幼稚園や保育園を休ませることまで徹底しすぎると、子どもにとって一番大事な心の健康さを奪ってしまうことになります。試験当日まで普段と同じ生活を続けることが大事です。学習環境の変化が子どもをどれだけだめにしてしまうか・・・9月以降そうした子を大勢見ています。それまで元気だった子が突然口を閉ざす・・元気に教室に入ってきた子が入口でぐずり始める、暗算でほとんどの問題を解いていた子が突然指を使い始め、その結果時間内に解決できない、学習意欲が突然なくなり、いつも元気に発表していた子が手を挙げなくなってしまう、ペーパー試験でいつも偏差値60以上を取っていた子が、急に点が取れなくなる、今まで隣の子の動きなどに左右されなかった子が、急に横を見始める・・・授業中のこうして子どもの変化は、1年近くも毎週見てきた私たち教師はすぐに気付きます。その原因の多くが、学習環境が変わった結果のマイナス変化なのです。9月以降学力が心配になったので、家庭教師をつけたり、他塾の直前講座に参加したり、家庭学習の時間を急に増やし、ペーパートレーニングの量を倍増させたり・・・・・こうした結果の変化です。そもそも教育に対する考え方も指導法も全く違う他塾の講座に9月以降行き始めると、不思議なくらい同じ症状が出てきます。母親の心配は理解できます。しかし、教育に対する考え方も指導法も全く違う環境に子どもを置いたらどうなるかくらい想像してください。一番の被害者は子どもです。こうして潰されていった子どもを毎年どれほど見てきたことか。結果は明らかです。第一志望校に合格するはずはありません。違う指導法の中に身をおいて、動揺してどうしたら良いのか迷った状態で試験を迎えたら、その子どもの心の動揺はすぐに試験官に伝わります。そんな子を学校側が求めているはずはありません。母親がもっと賢くなって、何が子どもにとって一番良いのか考えるべきです。

これまで続けてきた学習を横において新しい指導を取り入れても、何の解決にもならない事は冷静に考えればわかるはずなのに、周りの人たちの動きに動揺し、冷静な判断ができなくなっているのです。こんなやり方では合格できません。先生を信頼し、これまでの頑張りを信じ、同じ方法で徹底するしか合格への道はないのです。お母さんが「良い」と思ってしたことが子どもにプレッシャーをかけ、自信をなくす結果になっていくということを知っておくべきです。学力の伸びが心配になったら、まず家族一丸となって家庭で解決する方法をとらなければいけません。家庭で徹底すべき継続的な学習を放棄し、高いお金を払って行う「教育の外注化」は、親の安心にはなるかもしれませんが、子どもにとって決して良い結果を生みません。9月以降学習環境を変えて、子どもの様子がおかしいようならば即刻元の環境に戻してください。生活環境も学習環境も変えないで、淡々といつもと同じ生活を繰り返すこと・・・この当たり前のことを最後まで実行することが何よりも大事であるということは、毎年の入試で痛感していることです。

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