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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

なぜ予想問題が的中するのか

第313号 2011/10/21(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 神奈川の学校ではすでに合格発表もはじまり、都内の学校も面接が始まりました。いよいよ入試本番です。東日本大震災を経験した後の初めての入試です。出願する方も合格判定する方も、通学上の問題をどう解決するのか・・・その点がこれまでの入試と全く違うところですが、予想した通り、ほとんどの学校で出願者は減っているようです。もともと今回の震災に関係なく、2008年度あたりから私立小学校の受験者が減る傾向にありましたが、今回の震災が学校選択に与えた影響は少なからずあるはずです。女子校の多くが軒並み競争率がダウンしている現状は、学校側にとっても深刻な問題だろうと思います。合格を出しながら辞退される事態をどう防ぐのか・・・学校側も悩みの多いところです。すでに始まっている面接の方法をみると、これまでと違った学校側の意思が読み取れます。子どもの学力だけで合否が決まっていかない現実がより鮮明に出てきたと思います。どんな家庭環境で育ったのか、子育てに父親がどれほどかかわっているのか・・・入学後に指導方針を巡って考え方の違いが表面化しないように、受け入れる学校側は、願書を詳しく読み、面接でどんな家庭かを見抜く方法を編み出しているようにも思えます。

ペーパートレーニングだけを積めば良いと考えてきた家庭にとっては、思わぬ落とし穴が待ち構えています。教え込まれたメッキをはがそうと、学校側はかなり工夫した問題を用意しているはずです。新しい校長になって2~3年経った学校は要注意です。その校長の考え方が入試に反映するからです。基本的には子どもの学力を求めながら、一方でその学校の教育方針に反するようなことを平気で行うようなご家庭を排除しようという意思が働くのは当然です。学力においてもまた、行動面においても、入試のためだけに形を教え込まれた子どもたちを学校側が拒否するのは当然です。自由遊びが行動観察の中心になるのには大いにわけがあるのです。将来にわたって伸びていく子をどう発見するか、入試問題はその観点で作られているからです。バランスを欠いた発達を学校側が要求するはずもありません。ですから異常ともいえる「教え込みの教育」で身に付けた能力を求めているのではありません。楽しいはずの学習が、強制された環境の中で、時に恐怖心さえ植え付けられながら学習した子が入学後どうなるかは、誰が考えても明らかです。幼児期の大切な時期に入試のためにと行った学習が、結果として学習嫌いな子どもを作っているとしたらこんな罪深いことはありません。

小学校受験は、特別な訓練が必要な特別な受験ではありません。情報が開示されていない事を良いことに、業者側が自分たちに都合のよいように勝手に作りだした小学校受験のイメージを今こそ払拭しなければいけません。まともな生活とまともな基礎教育を受けてきた子を学校側が求めているのは当然のことです。受験者が減り少数精鋭になった受験で、学校側がどんな判断を下すのか。その現実をしっかり見て、歪んだこの業界が正常化されていくことを願っているのは、私だけではないと思います。子どもを「ひとりの成長する人間」としてとらえることなく、「商品」・「売上」としか見られない発想からは、まともな教育が生まれるはずはありません。そんな環境で学習してきた子を学校側が好ましく思わないのは当たり前のことです。ゆがんだ受験勉強で、ものの見方・感じ方さえもゆがんでいく子どもにならないよう、家庭でしっかり守ってください。正確な情報を得て、冷静な判断を下すこと・・・これにつきます。その意味で保護者の皆さんの責任は重いのです。

ところで、横浜で行われた今年の入試問題をみると、私が「合格カレンダー連続講座」の最終回でお話しした、最近の傾向を踏まえてどうしても外せない「基本となる30項目」の中から、相当数出題されています。特にある学校で昨年出された新しい発想の問題が他校に波及しています。この波及の速さは問題を予想した私でさえ驚いていますが、やはり連続セミナーで主張してきたように、どの学校も他校でどんな問題が出されたかを相当研究していることがうかがえます。だからこそ、何の話し合いがないにもかかわらず、新傾向の問題が類似してくるのです。昨年は、数の問題が減り、図形の問題が増えました。また、新しい「言葉遊び」の問題も増えました。こうした流れは今年も続くでしょう。40年間も入試問題を分析してきた私にとって、学校側の問題作り、出題意図は手に取るようにわかります。だからこそ、予想問題が的中するのです。私がつくった「ひとりでとっくん365日」が、いまなぜ小学校受験の教科書的存在になっているか。それは、この問題集がどのような手法で作られてきたかを見ていただければ当然の帰結なのです。もう一度、前回掲載の第312号のコラム(「学習環境の変化が子どもを潰す」)をお読みいただきたいと思います。こぐま会が今年の受験生の皆さんに送る最後のメッセージがここにあります。

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