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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

教育の成果としての合格者数の発表を

第311号 2011/10/7(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 先日上海を訪問した際、提携校のオーナーからある相談を受けました。それは「昨年有名小学校への合格者数をホームページに掲載したところ、古くからある同業他社も合格者数を発表した。しかし、どう考えてもありえない偽装した合格者の数字であった。今年の入試結果もすでに集計済みで、外部からの問い合わせも多いが、発表するのをやめようかと思っている。偽装された数字と同じ土俵で、うちの正確な合格者数も偽装していると疑われたらこんなバカな話はない・・・」

表向きには小学校受験はない中国ですが、やはり人気の有名小学校があって、面接と称して学力試験も行われているようです。その小学校に入学させたくて、上海の提携校に通ってくる子どもたちが最近増えているというのです。そこで、合格者の情報をホームページに載せたところ、古くから「思考力訓練教室」をやっているところが、対抗措置としてどう考えてもありえない合格者数を発表したようです。今年も合格者数は集計してあるが、偽装された数字と比較され、自分たちも偽装していると疑われるくらいなら、ばかばかしいので発表そのものをやめようかと思う・・・という相談でした。日本と全く同じことが上海でも起こっていることを知って、苦笑してしまいました。

受験を目標にしている以上、その教育機関からどの学校に何名の合格者を出したかは、正確に情報開示されるべきだと思います。しかし、それが偽装された数字であるとするなら

  1. 正しく情報が開示されていない
  2. そのことによって、生徒集めの宣伝に使うとすれば、明らかに詐欺行為である
  3. 一部の大手塾の偽装工作によって、正確に公表している中小塾の数字すらも信憑性が疑われる

少なくともこの3点において、教育機関がすべきことでありません。私は40年近くこの業界で仕事をしてきましたが、学校側が情報を開示しないことを隠れ蓑に、最近はより手の込んだ悪質な水増し発表が行われています。数年前に「不当景品表示法」で摘発された教育機関がありましたが、私は、この小学校受験の業界こそメスを入れて浄化されるべきだと思います。教育現場に身を置く者として、どう考えても「模擬テスト参加者」を合格者にカウントする感覚は理解できません。他の教育機関で指導を受けているものが、たまたま模擬テストに参加しただけでその塾の合格者にカウントされるという不正行為は、誰が見ても明らかです。こんなごまかしを堂々とやっている感覚が理解できません。ビジネスとは言え、あまりにも次元の低いごまかしで生徒集めをしている様子を見ていると、私自身も上海の教室責任者同様、もう発表することはやめてしまおうか・・という気持ちにさえなってきます。

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