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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏の合格対策 80のチェック項目(2)

第300号 2011/7/8(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 2005年1月から本格的に書き始めたこのコラムも、今回で300号を迎えました。毎週1回書き続けるのは多少の努力が必要ですが、書く行為よりも書くテーマを探すのに苦労しました。このコラムでは、幼児期の基礎教育の在り方を実践を通して考え続け、一方で、教育の原則を踏み外した「間違った受験対策」のあり方を糺すことを意識して書き続けてきました。受験生の皆さんに今どんなことを伝えたらよいのか、保護者の皆さんは今何を必要としているのか・・・・教室に通う子どもや保護者の皆さんの様子を感じ取りながら、書くテーマを探してきました。間違った受験対策は、教科書もなく情報が開示されていないのが最大の原因です。ですからこのコラムを通して、できる限り正確な入試情報を伝えるよう心がけてきました。生徒集めのために行われる誇大広告を糾弾し(その最たるものは合格者数のカウントの仕方)、教え込みの指導ではなく、子どもの発達を踏まえた「まともな教育」で受験対策ができることを具体的に示してきたつもりです。今後もこの姿勢を変えないで書き続けていくつもりです。

さて、前回に引き続き、夏の学習で行う各領域のチェック項目についてお伝えします。前回は、未測量・位置表象・数について述べましたが、今回は残りの、図形・言語・記憶・推理・常識・手先の巧緻性についてです。

図形の点検項目

学習内容対応するひとりでとっくん
36基本図形の名称を理解し、それぞれの特徴を言語化できる 
37基本図形や他の形を4~5片にばらばらにしたものを再構成することができる95.絵と模様の構成
98.図形構成
38いくつかの基本図形を組み合わせて、見本と同じ形を作ることができる31.つみ木パズル(基礎編)
32.つみ木パズル(応用編)
三角パズル
ツートンパズル
こぐまパズル
39基本図形や組み合わされた図形を正しく模写することができる19.図形模写
40秘密袋を使った触索活動ができる 
41立体図形を見て、その特徴を言語化したり、模写したりすることができる88.立体と展開図
42立体をいろいろな方向から見たらどう見えるか理解できる。また、立体と展開図の対応が出来る88.立体と展開図
43立方体をはじめとするいろいろな形のつみ木構成ができる18.8個のつみ木
82.ドームつみ木
44見取り図を見て、つみ木の数が正確に数えられる65.つみ木の数
45同図形発見がスムーズにできる(記憶による同図形発見も含む)11.同図形発見
46いろいろな点図形が正確に描ける1.点図形1
2.点図形2
3.点図形3
47図形をいくつかの基本図形に分割することが出来る36.図形分割
96.図形分割2
97.図形分割3
482つ折り・4つ折りの折り紙から対称図形を切り取ったり、方眼を使った対称図形を描くことができる39.線対称
49重ね図形が理解できる47.重ね図形
51.重ね点図形
50図形を指定された方向に回転したらどうなるか理解できる52.回転図形
図形領域は図形構成が中心ですが、最近の傾向として、線対称・重ね図形・回転図形といった難しい問題がよく出されます。従来からあった問題ですが、図形構成―図形分割が中心だった入試問題に変化が起きているように思えます。図形領域は他の領域と違って、問題がパターン化しにくい点があります。その分学校独自の問題がつくり易い領域でもあるのです。そのために、教え込みのトレーニングではなく、子ども自ら試行錯誤する時間を保証し、図形的なセンスを磨くことが大事です。結果を教え込んでも応用はききません。パズル・折り紙・つみ木等を使って「遊ぶ」「働きかける」ことの意味がとても大事な領域です。

■ 言語の点検項目

学習内容対応するひとりでとっくん
51一音一文字・同頭音・同尾音の考え方が理解できる27.一音一文字
28.同頭音・同尾音
52ペーパーを使った難しいしりとり問題ができる48.しりとり1
94.しりとり2
53動きを表す言葉を理解することができる77.動きことば
40.短文づくり
54対になる言葉(反対言葉)を理解することができる60.ようすことば
55いろいろな指示を1回で聞き取ることができる25.聞き取り練習1
26.聞き取り練習2
56登場人物とその言動・順序・数など話の内容を正確に聞き取ることができる14.話の内容理解1
15.話の内容理解2
57話を聞いて、そこに出てきた場面を絵に描くことができる 
58何場面かの絵を時間的順序にしたがって並べることができる85.時の系列
59具体物や1~4場面の絵を使ってお話を作ることができる40.短文づくり
13.お話づくり1
87.お話づくり2
60昔話の内容や登場人物について理解を深める78.昔話
言語領域は、聞く力・話す力・日本語の理解の3つが柱になります。聞く力の代表としての「話の内容理解」、話す力の代表としての「お話づくり」、そして「しりとり」に代表される「言葉遊び」を通しての日本語の理解、この3つが将来の国語科の基礎として入試で問われています。その中でも、すべての教科の基礎としての国語を考えると「聞く力」が一番重視されています。最近では、いくつかの学校で絵本を使って問題づくりをしたり、長いお話の中に全ての領域の問題を投げ入れて解かせる学校も出てきました。それだけ「聞く力」がより重視されているということでしょう。お話づくりの方法も最近いろいろ工夫されてきています。従来は、4枚の絵カードを時間的順序に並べてお話をするケースがほとんどでしたが、最近では1枚だけの絵を使ってお話をさせたり、3枚のうち真ん中が消えていて、そこで何が起こったかを想像して話をつくらせたり、表情の変化を読み取って(泣いている子が次の場面で笑っている)話をつくらせたりする問題が増えています。
言葉遊びの典型として「しりとり」が毎年どこかの学校で出題されていますが、言葉遊びというより「しりとりのルール」を論理的にとらえることができるかを問いかける問題が増えています。その理解の前提となる「一音一文字」「同頭音」「同尾音」の問題も良く出されています。また、動きを表す言葉も、将来の作文教育との兼ね合いで重視されています。

記億の点検項目

学習内容対応するひとりでとっくん
61具体物やカードを使って、具体物を5~8個記憶ができる73.具体物の記憶
62位置・方眼を使った記憶ができる83.3×3方眼上の記憶
63パズル・つみ木などを使った図形の記憶ができる 
644・5桁の数の復唱、3・4桁の数の逆唱ができる 
65やや長い文を間違えずに復唱できる 
記憶の問題が単独で出されることは少なくなりましたが、集中力・記憶力は将来の学習の基礎になりますので、「聞き取り」を含め、多かれ少なかれ小学校受験では重視されている内容です。見て記憶する・聞いて記憶するタイプがほとんどですが、秘密袋を使って触ったものを記憶するという問題も出始めています。特に、位置の記憶が一番よく出されていますので、よく練習してください。

推理の点検項目

学習内容対応するひとりでとっくん
66具体物や図形がどのような規則で並んでいるか理解できる9.図形系列
67観覧車・ルーレットなどを使った回転推理が理解できる42.回転推理
68魔法の箱を使った法則性が理解できるか41.魔法の箱
69オセロ・あみだくじなどいろいろな約束事を決めたゲームができる45.ゲームブック1
79.ゲームブック2
70事象を逆にとらえる事ができる100.逆思考
推理として括る内容はどこかの領域に収まる内容ですが、法則性を発見したり、与えられた条件でゲームしたりと、他の領域とはやや異なる思考法が要求される問題です。最近は、ゲームのルールをよく理解し、関係性を考えて解いていくような問題が増えています。パターン化しにくい分、学習も工夫が必要です。1回の指示で約束事を理解することができるかどうかがポイントです。

常識の点検項目

学習内容対応するひとりでとっくん
71季節に関する知識が身についている74.季節
72野菜の断面・風向き・影のでき方など理科的常識が身についている54.理科的常識1
55.理科的常識2
73道徳的判断・伝統行事・標識・などの社会的常識が身についている53.常識
91.常識2
74鏡にものが映ったときの映り方を理解することができる81鏡映像
75物の数え方や色の混合などを理解している 
最近特に増えているのが、この常識に関する問題です。理科的常識・社会的常識・一般常識の3つに分けられますが、やはり多いのが理科的常識問題です。自然観察等の体験が減っていることに学校側が危機感を持ち、普段の生活の見直しを受験生に求めていることも一つの背景にあるように思います。こうした常識問題の出題は増えている傾向にあります。生活の中で学びとっているかどうかを点検しているのかもしれません。考える力云々という問題ではありませんので、生活の中で経験し、学びとっていくという姿勢が大事です。

手先の巧緻性の点検項目

学習内容対応するひとりでとっくん
76ひも通し・ひも結びができる50.ひも通し2×6(見本帳)
77直線・曲線のはさみ切りがスムーズにできる22.はさみ切り(基礎編)
23.はさみ切り(応用編)
24.はさみ切り(実践編)
78いろいろなものをはしを使って摘むことができる 
79直線・曲線をスムーズに描くことができる66.線の模写
80足りない所を補って、見本と同じ線や形を描く67.欠所補完
手先の巧緻性は将来の運筆等に影響するため、入試でも重視されています。基本となる技術力が身についていないと小学校に入ってからも困るため、はさみ・箸・紐を中心に工夫された問題が出されています。常識問題同様、最近出題が増えていますので、自分の身の回りの処理やお手伝いを通して、「手を使った作業」に意図的に取り組んでください。

以上2回にわたり、夏休みの大きな課題である「学習点検」の項目を領域別にお伝えしました。これだけで全て解決するわけではありませんが、形を変え、まったく初めての問題が出されても、基礎がしっかり身についていれば解いていくことはできるはずです。この基礎がしっかりできていないのに、難しい問題ばかりをトレーニングし、解き方そのものを教え込んでいく方法では、現在の多様化した試験問題にはとても対応できません。試行錯誤する時間を与え、自ら考えて問題の解決に至るプロセスを大事にしてあげてください。また、入試前3~4か月の時期ということを考えれば、答えの根拠を説明させることは必ず実行してください。子どもがどのように考え、またどこでつまづいているかを知ることは、家庭学習をするうえでとても大事なことです。

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