週刊こぐま通信
「室長のコラム」夏の合格対策 女子校合格のために
第301号 2011/7/15(Fri)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

7月7日に行った第20回 合格カレンダー連続講座は、「主要女子10校 合格のための学習対策と夏休みの課題」と題して、ここ数年間の出題傾向を踏まえ、夏に行うべき家庭学習の課題をお伝えしました。
- 第20回 合格カレンダー連続講座
「主要女子10校 合格のための学習対策と夏休みの課題」 -
1. 主要女子10校 最近の出題傾向2010年度と2011年度の問題を分析して2. 主要女子10校 合格のための夏休み対策5つの合格対策3. 併願パターンと学習法神奈川県の学校との組み合わせ
1日校の中での組み合わせ
東京女学館小学校との組み合わせ
光塩女子学院初等科・立教女学院小学校との組み合わせ
共学校との組み合わせ
10校のテスト内容を一覧表にしてみると、分かってくることがいくつかあります。
- ペーパーの枚数は、6~7枚が平均的である
- ペーパーテストの内容は、枚数が少ない分、学校毎にかなり工夫された問題が多い。数においては一対多対応の応用問題、図形においては対称図形や重ね図形の出題頻度が高まっている。また、常識問題が以前より増え、内容も細かいことを聞いている
- 最近の傾向から見た出やすい課題を見ていくと、学校の枠を超えてひとつの傾向が見えてくる。前述したものを含め、領域ごとにまとめると以下のようになる
未測量 シーソーを含む関係推理・つりあい 位置表象 位置の移動 数 一場面を使った異なる問題・一対多対応の応用問題 図形 対称図形・重ね図形・回転図形 言語 長い話を聞いていろいろな問題を解く 一音一文字・しりとり その他 常識問題・手先の巧緻性 - 個別テストは今でも数校で行われているが、そのほとんどが会話力や説明能力を求める「話す力」に関するものである
- 行動観察は「自由遊び」が重視されている
少ないペーパーで、子どもにとっては初見の問題がたくさん出されています。昔のように知能検査的な問題は、ほとんど見られません。指示を聞き、自分で作業し、答えを導き出す「試行錯誤力」が求められています。知識を問う問題ではなく「思考」を問う問題が増えたということです。この点をしっかり把握して家庭学習に取り組まないと、現在の試験には対応できません。
こうした大きな流れの中で、もちろん各学校の独自な傾向があります。それは、過去問にあたることによって把握しなくてはなりません。だからこそ、併願校を考えた学習対策が必要になってきます。問題の難易度はどうか、よく出される領域はなにか、処理能力はどれだけ重視されているのか・・・・そうした情報もしっかり把握したトレーニングが必要です。
昨年から発行している、「教室指導者からのメッセージ」の2012年度版がほとんど出来上がりましたので、ぜひ、それぞれの学校の入試傾向を把握し、効果的な学習対策を行うようにしてください。教室現場で実際に指導にあたっている教師が問題を分析し、授業中の子どもたちの理解度を踏まえながら分析した資料集です。過去20年近い入試の傾向を領域ごとにまとめてみると、その学校でよく出される問題の傾向がはっきりしてきます。それをこそ、この夏の課題にしてください。
今回のセミナーでお話しした、主要女子10校の夏の対策を以下に掲げますので、参考にしてください。資料集を執筆した現場教師からの報告をもとに、「5つの合格対策」としてセミナー当日まとめて話したものです。
<学校別5つの対策>
- 聖心女子学院初等科の対策
- 話をよく聞く態度の育成(長い話の理解・1回の指示の理解)
- 数の暗算能力・一対多対応の応用問題
- 模写能力(線・平面・立体・欠所補完)
- 手先の巧緻性・製作・課題画・・・丁寧に取り組む姿勢
- 初めての友だちに話しかける会話力
- 雙葉小学校の対策
- 筋道立てて考える「論理的思考力」の育成
- 作業を通して考え、答えを探す方法を身につける(飛び石や回転位置移動など)
- 数における一対多対応とその応用問題のトレーニング
- ペーパー処理の正確さとスピードを上げる工夫
- 相談しあえる経験の蓄積
- 横浜雙葉小学校の対策
- お弁当持参の長時間テストなので、行動観察が重視される
- 絵本を使った話の内容理解が出されているので、長い話をしっかり聞いて、細部まで理解できるように、また順序性をつかめるようにする
- 言語領域の動詞・ようす言葉・一音一文字等の出題が多い
- 図形は、ペーパーだけでなく個別テストもあるので、構成に関する問題の対策をしっかり取る
- 運筆課題を含めた手先の巧緻性や見本製作・指示製作の対策を行う
- 白百合学園小学校の対策
- 立って行うペーパー試験に慣れる(2011年度は座って行いましたが、今後復活することも考えられる)
- 個別テストとペーパーテストの出題が同じくらいになっているので、個別テスト対策もしっかり行う
- つりあい・長さ比べ・水量の変化など、未測量領域問題が難しい
- 一対多対応・数のやり取りなど、論理的思考力が求められる問題が多い
- 常識問題は、電車通学の子が多いため、電車の中でのマナーがよく聞かれる
- 田園調布雙葉小学校の対策
- 行動観察の比重が高い。じゃんけんを使った遊び・身体摸倣がよくでる。集団制作による約束事を忘れない
- ペーパーテストは、基本的な考える力が求められる
- 聞く力を問う問題がポイント。私は誰でしょう・言葉による三者関係・位置の記憶・話の内容理解など
- 説明する力が、個別テストでみられている
- 横浜雙葉の問題の影響が強い。横浜雙葉の過去問に当っておくこと
- 東洋英和女学院小学部の対策
- ペーパーには練習問題があるので、その練習を通して問題の意図をしっかりつかむようなトレーニングを積む
- 数の問題は一場面の絵を使っていろいろな問題が出されるので、どの部分をしっかり見ればよいか、聞き取りをしっかりする
- 図形の問題は毎年出されるが、線対称や重ね図形がよく出されているので要注意
- 課題製作は、ぬり絵とはさみ切りの練習をしっかり行うこと。また、課題画は何を描いたのかを言語化する練習をしっかり行うこと
- 行動観察は30分の自由遊びがポイント。遊ぶ機会をたくさんつくる
- 日本女子大附属豊明小学校の対策
- ペーパーは基本問題が中心だが、処理するスピードが求められる
- 図形については、「重ね図形」「線対称」「回転図形」「図形構成」など難問が多い
- 自分の考えを伝える「言語力」と「表現力」をしっかり身につける
- クーピー1色で描く課題画、色の濃淡を含めた運筆課題はおろそかにしない
- 行動観察は、課題に対する目的意識の高さ(無駄のない動き)がポイント
- 東京女学館小学校の対策
- 母子活動・体育館での活動・ペーパーテスト・絵画製作の4つの部屋をグループごとに回るテストであるため、ペーパ-対策だけでは合格できない
- ペーパーは基本問題なので、ミスがないようしっかり得点できるようにする
- 位置表象の問題はかなり工夫されているので、しっかり練習する
- 話の内容理解は、短い話をぜんぶ覚えるつもりで取り組む(話の記憶)
- 独特な母子活動の対策をしっかり取る。日頃からいろいろな活動を通して信頼関係を構築すること
- 立教女学院小学校の対策
- 数の問題は基本問題であるが、一場面の中にいろいろな絵があるので、数え間違いなどないようにする。最近は一対多対応の問題が多い
- 図形はペーパーだけでなく具体物を使った問題も難しい。特に台形を使った重ねパズルは何度も出されている
- 常識問題は毎年出題される重要課題。理科的常識や社会的常識などさまざまな問題が出ている
- 2日目の個別テストでは、手先の巧緻性が必ず出る。箸・紐を使った課題が中心
- まりつき・縄跳びがよく出される。目標は50回ぐらい
- 光塩女子学院初等科の対策
- 未測量領域の出題が多い。三~四者関係の聞き取りがポイント
- 位置の対応(方眼)で、置き換え・記憶・回転・移動の要素が加わり難問化。四方からの観察も重要
- 数の領域は雙葉同様、一対多対応が中心であり、シーソーのつりあい・交換など難しい問題をやっておく
- 図形は、図形構成と図形分割が中心であるが、最近は折り紙を使った線対称・重ね図形や回転図形なども増えている
- 魔法の箱に象徴される、法則性の理解はかなり難しい問題が多い。移動・回転・反転・増減・倍・半分・線対称・重なりなど、変化の内容が豊富である