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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎から応用への橋渡し

第243号 2010/5/14(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月から始まったばらクラス(年長児・受験生クラス)の授業も、4月いっぱいで基礎段階の「ステップ4」を終了し、今週から応用段階の学習に入りました。7月の夏休み前までにすべての応用学習を終え、夏休みの「難問対策」および「過去問トレーニング」に備えます。今年は学習の順序性をより明確にした「合格カレンダー」を掲げ、例年より早めに授業を進めてきました。従来9月初めまでかかっていた「応用段階の学習」を夏休み前までに終えるために、日曜日にも数回、基本クラスの授業を行ってきました。こうした年間の学習計画に基づき、5月連休前までに「基礎段階の学習」を終了し、5月3日から3日間の休みを利用して、「基礎学力総点検」のための講座とセミナーを開催しました。そこで、あらゆる角度から基礎がしっかり身についているかどうかの点検をしました。セミナーにおいては、基礎学力を点検するための「家庭用点検教材」を提供し、7月まで続く応用段階の学習を支える「考え方の基本」の再点検をお願いしました。

ところで、この6カ月間に各領域4回ずつの学習を終えたことになりますが、その中で子どもたちにとって難しく、テスト等で出来 - 不出来の分かれる問題は次のような内容であることが判明しています。

(1)未測量シーソー・言葉による関係推理・量の三等分
(2)位置表象左右関係の理解・地図上の移動・四方からの観察
(3)数暗算能力・数の構成・一対多対応・あまりのある等分
(4)図形立体模写・図形構成・斜めの線の多い点図形・図形分割
(5)言語多様化したしりとり問題・話の内容理解・お話づくり(発表力)
(6)その他回転移動・手先の巧緻性・鏡映像・課題画

ここに掲げた内容の理解度をひとつひとつ家庭で点検し、理解が不十分なところは繰り返し練習し、「考え方の基本」をしっかり身につけておかなければなりません。これから始まる応用段階の学習は、すべてこうした学習が基礎になって、初めての問題でも自分の力で解いていけるようになるのです。教え込みの指導は簡単ですが、自らの力で解いていくための指導は容易ではありません。一人一人がどこまで理解しているかを把握し、それぞれの子どもに適切なアドバイスをしなければ解決しないからです。また、これまでの学習は事物教育を中心とした「働きかける経験」を積ませることに時間を割いてきましたが、これからの学習においては、これまで以上にペーパー教材を使った学習が増えてきます。基礎学習が終了した今だからこそペーパー教材での学習に意味があるのです。最初からペーパーで学習してきた子との決定的な違いは、初めて出会う問題に対して、自分の力で解き方を工夫できることです。「教え込みのパターン練習ではいけない」と言っている意味は、本番の試験ではそれまで練習してきたものと同じ問題はまず出ないと考えた方がよいからです。初めての問題に自信を持って取り組んでいくためには、「自ら考える経験」をたくさん積んでおかなくてはなりません。

具体から抽象への橋渡しは「数の内面化」に象徴されるように、具体物操作によるイメージ化、言語による定着化にどれだけ時間をかけられたかが大事です。考える力の基礎を事物教育によって積み上げ、その上で抽象化されたペーパー教材での繰り返しのトレーニングによって、応用力がついていくからです。これまで、幼児期の教育指導の原則を外れ、ペーパーを先行させたトレーニングをしてきた方は今からでも遅くありません。一度具体物操作にまで戻って、イメージ化する源を豊かにしてあげてください。夏前にこれをやっておかないと9月以降学力の後退に直面します。その意味で、ここ1~2カ月の「基礎から応用へ」の橋渡しが大変重要です。

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