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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

ひとりでとっくん365日」を教科書に

第244号 2010/5/21(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 小学校入試がほかの入試と一番違うのは、「教科書のない入試」であるということです。これが間違った受験対策がはびこる最大の理由です。教科書はないけれども試験問題は存在する。そこに、学習の順序性が明確でないまま、また子どもの理解の道筋を無視した、教え込みの教育がはじまる原因があるのです。その教科書のない小学校受験において、こぐま会が製作・発行している「ひとりでとっくん365日」が教科書代わりに広く使われているようです。教室での指導と検証を踏まえ、100冊の「ひとりでとっくん」を20年近くかけて完成させた後、学習の順序性を踏まえた教材がどうしても必要と考え、開発した教材がこの「ひとりでとっくん365日」シリーズです。こぐま会の教材の中では常に年間のベストセラーであり、昨年度は中国においても販売を開始しました。小学校受験がほとんどない国ですが、多くの保護者から「思考訓練」の教材として支持されています。

日本において、小学校受験を目指す大勢の皆さんに使われているひとつの理由は、「学習の系統性」を踏まえたペーパー教材であるということでしょう。入試対策において、「学習の系統性・順序性」はこれまであまり重要視されてきませんでしたが、幼児が対象の指導である以上、入試対策といえども大変重要な視点であると思います。ペーパーのみの過去問トレーニングから始めるような入試対策では、子どもの考える力を育てることはできません。「基本から応用へ」「具体から抽象へ」「単純なものから複合されたものへ」といった学びの順序は、入試対策だからこそしっかりと踏まえて行わなくてはなりません。「教科書のない入試」である以上、指導者はその点をしっかり踏まえて1年間の学習内容を組み立てなくてはなりません。ところがどうでしょう。過去問を何の秩序もなくやりこなす「ペーパー主義」の訓練は、そうした大事な視点を全く無視したトレーニングであると言わざるをえません。その方法の誤りに気付いた指導者や保護者が、学習の順序性を踏まえた「ひとりでとっくん365日」を教科書代わりに使用しているのだと思います。

実はこのシリーズは、「ひとりでとっくん」を使って学習している全国の皆さんから「どれから学習を始めたらよいのか」という質問をたくさん頂戴したことが契機となって生まれたものです。100冊の「ひとりでとっくん」は20年近くかけて作りました。そのため、1番から順に学習すればよいというものではありません。その時期に必要と考えた教材を作り続けて、100冊になった教材です。ですから、どれから始めたらよいのか・・・という質問は当然出てくると思います。ペーパー教材に学習の順序性をつけるにはどうすればよいか・・・いろいろ議論した結果、私たちが教室で実践している「セブンステップスカリキュラム」に沿って作るのが一番良いという結論に至りました。私自身の教室での実践経験がその背景にあるという点を考えても、ベストセラーになる資格は十分備わった問題集であるはずです。
ところで、1年間かけて実際の教室での指導に合わせて作った問題集であるということから、年中11月から年長10月までの1年間の学習教材となっています。東京の場合、教室での最後の1年間の指導が年中11月から始まる関係で11月号からスタートしていますが、受験される皆さんの実際の運用は、入試の時期のずれも踏まえて、年長の7月いっぱいで12冊が終了するように進めていただくのが一番現実的だと思います。ですから、12冊の使用時期を次のように考え、実行していただくのが良いでしょう。

受験を目指す場合の学習プラン
  • 基礎段階の学習
    年中11月~年長4月:「ひとりでとっくん365日」1~8号まで
  • 応用段階の学習
    年長 5月~年長7月:「ひとりでとっくん365日」9~12号まで

5月連休前までに基礎を終え、7月夏休み前に応用を一度終え、夏休みには十分理解できなかったことを繰り返し復習するという学習プランが、受験生には一番効果的だと思います。そして、直前の2カ月間でもう一巡して復習し、答えの根拠を説明させるといった使い方が良いでしょう。年中の段階で12冊すべて終えるといった間違った使い方にならないよう、くれぐれも気をつけてください。また、受験はしないけれど幼児期の基礎教育のテキストとして使用する方は、11月から始めて10月で終わるプランで十分だと思います。

もうすぐ6月です。「ひとりでとっくん365日」の内、9号から12号までが応用段階の学習内容ですから、夏休み前までにぜひ仕上げるよう頑張ってください。教室に通わず、ご家庭での学習のみで受験を目指す方が増えていますが、その家庭学習の指針になれば、この問題集の作り手としてこの上もない喜びを感じます。ただいつもお願いしていることですが、ペーパー教材の前に、具体物やカードを使った試行錯誤の経験を必ず持たせてください。「ひとりでとっくん365日おけいこカード」は、そういう想いで作ったカード教材ですので、ペーパー学習の前に必ず使ってください。考える力の基本トレーニングが備わっている教材ですから、ペーパー教材での学習に必ず生きてくるはずです。

教科書のない入試だからこそ、指針が必要です。「ひとりでとっくん365日」が入試のための教科書として実際に活用されている現実をみると、多くの受験生の皆さんが、どれだけ「学習の順序性」を必要としているかがわかります。無秩序なペーパー教材に一本の道筋をつける意味でも、ぜひ正しい使い方をお願いいたします。

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