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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

笑顔が消えた子どもたち

第216号 2009/10/2(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 都内の私立小学校の願書受付が始まり、いよいよ入試本番です。神奈川の方ではすでに面接が終わったところもあります。9月は願書の提出準備で子ども以上に忙しかった保護者の皆さんも、10月に入り願書提出が終わると、最後の学習に力が入る時期でもあります。ここであまり頑張りすぎて子どもが自信をなくさないよう、舵取りをしっかり行ってください。

入試1か月前に行うべきことは、いかにして一番良い状態で本試験を迎えるかどうかというコンディションづくりです。体の健康管理だけでなく、心の健康管理にも注意しなくてはなりません。1年前とは見違えるように成長した子どもたちは、親の気持ちを読み取ったり、周りの状況を察知したり、今まで無関心だったテストの成績等についても気にするようになったり、知的能力の発達だけでなく、精神面でも大きく成長しています。

入試のことを子どもにどう伝えるかはそれぞれのご家庭で考え、子どもに精神的な負担を掛けないよう工夫してきていることだと思いますが、無頓着だった1年前とは違い、子ども同士の会話の中でも受験が話題になるほどに状況は変化しています。両親の心配顔をみて、自分が何か悪いことでもしているように感じ取ってしまう子もいます。お父さんお母さんにほめられたい一心で、子どもたちも精一杯頑張っています。その緊張した精神面でのバランスが崩れると、学習への拒絶反応や取り組む姿勢の変化、無表情な態度などに表れてきます。今、一番心配なのは、それまで笑顔を絶やさなかった子どもがまったくの無表情になったり、取り組む意欲をなくしたりすることです。

成績が落ちてしまったと相談に来る子の多くが、気持ちにゆとりが感じられず、いつも何かに追い立てられているように、自信のなさと戸惑いをみせることがあります。自信を持って落ち着いて取り組める子と、何か落ち着かず、常にプレッシャーを感じている様子を垣間見せる子と、私たちにははっきりわかります。親の焦りや心配事が子どもに乗りうつり、これまでのような明るい笑顔が見られない子が増えています。これから入試本番までは、いつもと変わらぬ生活リズムを持続し、基本的な学習を繰り返す中で自信を取り戻してください。

最近の行動観察重視の試験は、ペーパー試験の結果だけで合否が決まるわけではないことを私たちに教えています。子どもらしさ、自信に裏付けられた物事に取り組む態度、相手のことを思いやる心、そしてなによりも子どもらしい生き生きとした表情が大切です。笑顔がなくなったら、その背後にいる大人の子育ての仕方が問題視されかねません。どうか特別な1か月にしないよう、これまでと同じ生活リズムで入試本番を迎えてください。

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