ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

09年度 私立小学校入試総括(1)

第177号 2008/12/5(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月29日に全職員が集まり、今年の私立小学校の入試問題を分析する報告会を行いました。聞き取り調査を担当した教師から各学校別に入試問題や合否判定に関する報告があり、その分析を踏まえて来期の講習会の内容の見直しを始めました。
私も参加し、それぞれの学校の報告を聞きながら全体として大きな変化はなかったものの、これからの指導に活かさなくてはならない大事な観点をいくつか発見しました。2時間半におよぶ報告会に参加してまず感じたことは、

  1. 例外はあるが、全体として難問は減り、基本問題が多くなった
  2. 学力重視の学校と、常識問題や手先の巧緻性に象徴される生活や行動重視の学校とがはっきり分かれてきた
  3. 行動観察重視の傾向は変わらないが、今年は例年になく「自由遊び」が増えた
  4. 合否判定に関しては、特に大きな変化はないが、実力重視の女子校・男子校と関係者有利の共学校という従来の傾向がますます強まった
  5. 補欠合格者の出し方等は昨年度とほとんど変わらないが、2次補欠や番号のつかない補欠合格など、外部からはわかりにくい不透明な部分が残った

こうした感想を裏付けるためにひとつひとつの問題にあたり、出題者の意図の分析に取り掛かるつもりです。また問題分析だけでなく、合否判定のあり方も合格者と不合格者の比較などを通して、一体何が合否を分けたのかの分析もしなくてはなりません。
ひとりひとりの日常授業での様子、模擬試験の結果、関係者か否かの調査、また複数校合格した子の追跡調査、問題の難易度などあらゆる角度から分析し、その上でどのように合否判定がなされたかを判断していきます。あらゆる情報が開示されていない現在の小学校入試をできる限り客観的に分析するには、そうした在籍時の子どもの様子やテスト結果などと合否の結果をつきあわせて分析するしか方法はありません。

なぜ、全体として問題がやさしくなったのか。なぜ、指示行動や集団活動でなく自由遊びが重視されたのか。また、公明正大にすべき補欠合格者の発表の仕方が学校によってなぜこうも違うのか。大学までつながる多くの共学校が、関係者有利のままの合否判定で試験の公平性はどう保てるのか。解らないことが多いのが小学校入試と言ってしまえばそれまでですが、1~2年も頑張って結果を得られない子どものことを思うと、「入試の公平性とは何か」が問われなくてはならない時期に来ていると思います。小学校入試が一般化した時代だからこそ、情報公開も含めて入試改革が必要なのではないかと思います。

PAGE TOP