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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

オリジナル教材を作成する立場から

第120号 2007/09/28(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 現場からの発想を大事にしようと、教室での授業経験をふまえて作成してきました「こぐまオリジナル教材」も、取り扱い書店が9月現在全国で126店舗に達し、大勢の皆様に使っていただいております。幼児期の基礎教育のために作成した教具・教材ですが、小学校受験のためのテキストとしてだけでなく、障がい児教育の教材としても広く使われていることを知り、作り手をしてこの上もない喜びを感じています。

もともと、教科前基礎教育という考え方を提唱したのは、数学者の遠山啓氏でした。遠山氏は八王子の養護学校での実践記録を「歩き始めの算数」という本にまとめ、その中で、幼児期の算数を「原数学」という考え方で推し進めるべきだと主張しました。

私は遠山氏の考え方に賛同し、36年間にわたり教室での実践活動を積み上げてきました。その過程で生まれたのが、「こぐまオリジナル教材」です。これらは教室で使用している手作りの教具や教材をもとに、家庭学習用に作り直したものです。作り手として一番気を配ったのは、子どもの発達に見合ったものであること、そして学習内容の系統性がしっかりと確立されていることの2点でした。

また、具体物教材やカード教材を充実させたいと考えているのは、「幼児期の認識は、物事に働きかけることによって育つ」というピアジェの考え方に賛同しているからです。繰り返しの試行錯誤を保証するのはペーパー教材ではありません。作っては壊し、壊しては作るその繰り返しの中で、幼児期の子どもたちの認識は深まっていくということを実感しているからです。

ペーパー教材の代表である「ひとりでとっくん」シリーズも、小学校受験で出題されたから・・・という理由で内容や単元を考えてきたわけではありません。小学校入学後から始まる教科学習を支える土台として、どうしても必要だと考え、その内容を単元別にまとめたものです。ですから「一音一文字」のような単元は、入試で出される前から私たちは文字指導の際の重要な単元として考えてきました。しかし現在では「一音一文字」は入試における重要な内容になっています。このように、私たちが考えた問題の多くが、今や入試で取り上げられるようになってきています。

多くの受験塾や個人の先生方がこぐま会のテキストを「家庭用教材」として推薦していただいているという話を聞いて、大変ありがたく思っていますが、一方で、私たちの作成した教材をコピーして「独自教材だ」と偽って教室で使用したり、コピーして販売している有名な塾や教師もあると聞き驚いています。コピーが得意などこかの国の話ではないかと耳を疑いましたが、そうした悪質な行為が本当に行われているとしたら、警告を発しなくてはならないと考えています。

教材を書店で扱ってもらってからすでに13年が経過しました。最近類似商品がたくさん出回っているようです。ビールひとつにしても、ある会社が新商品を販売すれば類似商品が各社から出されるという時代ですから、われわれの業界でも当然起こりうることだと割り切っています。そして、やはり最後はオリジナルなものだけが残っていくはずだと考えていますので、真似されたところであまり心配はしていません。真似されたら、より新しいものを作り出せば良いだけです。こぐま会では、皆さまにより良い教材を提供し続けるために、今後も次々と教材を企画し、開発を進めていきます。

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