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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

テスト問題作成の現場から

第108号 2007/06/29(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 6月17日と24日の2日間にわたり、「第1回合不合判定テスト」を実施しました。こぐま会最大規模のテストで、例年500名前後の受験生が参加します。9月には第2回目の合不合判定テストがありますが、毎年この2回のテストの結果を踏まえ、志望校を絞り込んでいきます。ところで、こぐま会では目的に応じていくつかのテストを実施しています。年長クラスのテストは、次の通りです。

(1)ステップ別発達診断テスト(年6回)
 会員専用のテストで、基本クラスのセブンステップスカリキュラムに即して、学習したことの理解度をチェックする目的で行うものです。
(2)こぐま会公開実力テスト(年5回)
 会員だけでなく外部にも公開されるテストで、受験準備1年間の学習進度にあわせ、実施しているものです。出題範囲を指定することで、系統だった積み上げ学習ができるように工夫したテストです。入試対策用テストですので、ステップ別テストより若干問題が難しくなっています。
(3)学校別模擬テスト(年4回)
 それぞれの学校の入試傾向に合わせた模擬テストです。
(4)合不合判定テスト(年2回)
 こぐま会最大のテストで、前年度の入試結果をもとに、何点でどの学校に合格しているかがわかる資料を公開しています。
(5)個別学力診断テスト(随時)
 一対一で受けていただくテストです。子どもの理解力を分析し、テスト終了後に面談を行い、合格にむけた学習対策をアドバイスします。

 以上5つの柱で子どもの学力チェックをしていますが、外部生の皆さんが大勢参加するテスト問題の作成については、出題する問題や、問題の難易度を決めるのに相当神経を使っています。会員専用のテストは、学習したことの理解度をチェックするもので、受験者は一応出題範囲に関する学習をしてから受けますから、公平性が保てます。しかし、外部生が受験するテストは、共通のカリキュラムで学習をしてきているわけではありませんから、会員の学習進度に合わせてしまえば、外部生が不利になります。そうしたテストでは、結果の公平性が保てませんから、工夫が必要です。入試直前の9月~10月ならば、受験生のほとんどが入試で出される問題の学習を終えていますから、模擬テストの意義は十分果たせます。しかし、夏休み前のテストでは、出題範囲の学習を既に終えている子と、そうでない子とでは理解力に差が出ますし、そのことは明らかに結果に反映します。大手塾が行うテストが会員に有利になるのは、塾生が学習したことを前提に問題が作られているから当然ですが、私たちはそうしたことがないように、いくつかの工夫をしています。

  1. 公開実力テストは、あらかじめ出題範囲を公開する。
  2. 学校別模擬テストは、その学校で出されている問題を入試資料として明らかにし、その中でやさしいものから難しいものへと問題を配列する。年4回実施し、基礎から応用へと問題を配列する。
  3. 学習の進度に応じて問題を少しずつ難しくし、過去のデータを参考に、その時期の子どもの発達度や学力の完成を見越して、できるだけ平均点が7割前後になるような問題を作成する。
  4. >点数化した結果表を保護者に渡すだけでなく、子どもがテスト中にどのように答えたかのか記録をとり、それを補足資料として保護者に渡す。

 テストの公平性を保ち、テスト結果を有効活用した受験対策ができるよう、以上のような工夫をしています。この中でテスト問題を作る側が一番神経を使うのが、(3)の平均点を100点満点中70点前後にするための問題作りです。

 受験準備を始めたころの70点と、夏休み前ごろの70点、また入試直前の70点では意味が違います。子どもたちが学習をして理解度を深めていくわけですから、当然です。私たちが平均点70点にこだわる理由はいくつかあります。それは、

  1. 実際の入試問題の難易度は、平均点が7割前後の問題であること。
  2. やさしくしすぎてもいけないし、難しくしすぎても、入試対策にはならないこと。
  3. テストを受験準備のために有効活用させるには、ちょっと背伸びすれば解決可能な問題のレベルにすることが必要であること。

 私が教育相談を受けていていつも感じるのは、極端に難しい問題を出し、受験生の保護者を不安にさせる模擬テストが最近増えてきたということです。模擬テストが子どもの入試対策のためではなく、塾の宣伝や営業活動に使われていることがないのかどうかということを懸念しています。夏休み前のこの時期に出題するには無理があるような難しい問題が、年々競って出題されていることを見聞きするたびに、テスト問題を作る立場の人間から見て、きわめて危険な風潮であると言わざるを得ません。業者テストの受験者勧誘合戦が激化し、入試の実態を離れて、問題が難問化すればするほど、そのしわ寄せは子ども自身に及びます。教育者が絶対にしてはならないことが、現実に起こりつつあるということを大変危惧しています。

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