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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎段階の学習を終えて

第103号 2007/05/25(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月から始まった年長ばらクラスは、先週までに基礎段階の学習を終えました。年間42週の授業を7つのステップにわけ、そのうちのステップ4までの学習が終了したことになります。子どもの発達段階を踏まえ、物事を理解していく道筋に学習内容を配列し、学んだことが次の学習のレディネスになっていくような螺旋型カリキュラムを10年以上もかけて完成させました。系統性を重んじ、学んだことが単に入試のためだけでなく、将来の教科学習の土台となるような指導を目指してきました。

 毎年感じることですが、「ステップ4」を終了した今の段階が、われわれ指導者にとっても、もっとも充実感を感じられる時期なのです。それは、これまで学習したことのない初めての問題に対しても、今までの学習で身につけたものの考え方を応用して、答えを導き出そうと挑戦してくれるからです。すべての子がすぐに回答できるわけではありませんが、理解が進んだ子が答えを発表するのを見て、自分もがんばろうという気持ちになるのか、教室全体が程よい緊張感に包まれます。入試問題の8割以上が解決可能になり、答えの根拠を求めても、論理的に説明できるようになってきています。

 11月の新学期にばらクラスに進級してくる子どもたちを見て、毎年「この子どもたち、数ヶ月後に難しい入試問題が解けるようになるんだろうか」と心配するのですが、半年あまりの基礎学習を終えると、驚くほどに子どもたちの考える力が成長し、初めての問題でも自分で考え、その考えを言葉で説明できるようになってきています。

 実際の入試のことを考えると、ペーパーを解くスピード性や丁寧さ・また取り組む態度や言語発表力なども、身につけないといけないし、「考える力」がついただけで合格できるわけではありません。しかし、だからといって、何の脈絡もなく、ただ過去問を解かせるだけのトレーニングでは、今の小学校入試で求められている「論理的思考力」を育てることはできません。

 「事物教育」や「対話教育」を実践するのは、幼児期の基礎教育に適した教育法であるばかりでなく、論理を育てる教育は試行錯誤を保証したこの方法しかないと考えているからです。それが35年間教室での実践活動を積み重ねてきた私の結論です。どう考えても、ペーパートレーニングだけで、幼児の思考力を育てるという結論には至りません。入試に向けた効果的な学習対策が、ペーパートレーニングだけで解決できた時期も確かにありました。30枚近くのペーパーを使っていた学校については、今考えれば笑い話になりますが、ペーパーをめくる練習をしたこともあります。パターン化された知能検査の問題が入試問題の中心になっていた時期にはそれでよかったのです。しかし、学校側の反省もあり、訓練によって身につけた能力ではなく、物事を筋道立てて考えていく思考力をどの学校も求めているのです。それなのに、今も小学校入試の対策はパターン化したペーパートレーニングだと勘違いしている指導者や保護者が大勢いるのはどうしてなのでしょうか。5~6歳児にふさわしいまともな基礎教育が、入試対策としても一番有効なことは、こぐま会の合格実績を見ていただければ、ご理解していただけると思います。

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