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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

言語領域の問題に大きな変化が

第104号 2007/06/01(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 年長クラスの保護者を対象に定期的に開いている「合格のための連続講座」の第4回目が、5月25日に行われました。今回は「言語領域の新しい問題」と題して、最近の入試における言語領域の問題を分析し、その対策をお伝えしました。

 言語領域の入試問題は、昔から「話の内容理解」「お話づくり」「言葉の学習」の3つが中心でした。この3つの柱は今も変わりませんが、その内容と出題方法については最近大きく変わってきています。その変化を踏まえて、対策を考えなくてはなりません。この言語領域の問題は、将来の国語科につながる内容ですから、その視点から見れば学校側の出題意図がわかるはずです。もともと国語科の内容は、指導要領において「聞く力」「話す力」「読む力」「書く力」の4つにまとめてありますが、幼児の発達を考えれば、「読む力」と「書く力」を入試において求めるのは適切ではありません。ですから、入試問題の中心はおのずから、「聞く力」の代表としての「話の内容理解」、話す力の代表としての「お話づくり」にならざるを得ないのです。その上に、日本語としての言葉の理解が加わるのです。

 「話の内容理解」が変化しつつあるのは、どんな内容の話を聞かせるかという点と、どんな質問を課すかという点においてです。結論から言えば、聞かせるお話は、相当長くなりつつあります。時には市販されている絵本を使う場合もあります。また、質問内容は、「登場人物」「順序」「数」「登場人物と行為の関係づけ」といった昔からある質問だけでなく、従来は独立した問題として出されていた「私は誰でしょう」や「地図上の移動」「三者関係の理解」などが質問内容として出されたり、記憶さえしておけば解けた数の問題が、数の操作を要求するようになってきています。つまり話の内容理解の形をとっていながら、実は数の問題であったり、関係推理の問題であったり、位置移動の問題であったりするわけです。このように見てくると、話の内容理解は国語科の基礎という意味合いだけでなく、すべての教科の土台としての「聞く力」という側面を強く持ち始めたということであるし、見方を変えれば、小学校の教科学習を支える「レディネス」として、入試において学校側が最も重視していることが伺えます。

 では、話す力としての「お話づくり」はどうでしょうか。試験方法として「個別テスト」を実施していない多くの学校では、お話づくりを試験に課すことはできません。しかし、言葉を介した「表現発表力」は、どの学校でも重視したいと考えています。それは、今の子どもたちの最大の欠点だからです。ですから、お話づくりができなくても、それに変わるものを考え始めています。出題する学校側は、いろいろな方法を工夫していますが、その中の典型的なものをいくつか紹介しましょう。

  1. 事物の説明や、二者の異同などを通して、説明能力を見る
  2. 描いた絵について発表させる
  3. クイズなどの形式をとりながら発問させる
  4. 行動観察中に、活動の内容について個別に質問し、答えさせる

 つまり、あらゆる場面で自分の考えていることや感じていることを、言葉で表現させようとしています。こうした変化は、新しい指導要領がすべての学力の基本に「国語力」をおき、論理的思考力を育てようとしている流れと、全く一致しているのです。

 最近私は、小学校や中学校で国語を担当している先生方の研究会に参加しました。今教育の現場で何が問題になり、その解決のためにどんな実践活動がなされているのか。そのことが、小学校入試の問題に影響しているのではないのか・・・そうした想いを持ちながら参加しましたが、今現場の先生たちが直面している子どもの国語力の現実を知れば知るほど、小学校入試で出される言語領域の問題変化の背景が理解できました。

 すべての教科の土台としての国語力。小学校入試では、どちらかといえば数や図形が問題の中心になりがちですが、今後は、「国語力」につながる「聞く力」と「話す力」に関する問題が、重視されてくるのは間違いないと確信しています。特に、言語表現力を見る問題が確実に増えていくことでしょう。

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