ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今、どんな能力が求められているか

2005/03/03(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可
 昨年12月の入試結果報告会に引き続き、年が明けてから会員・外部生を対象とした学校別分析セミナーを開催してきました。各学校ごとに出題された問題を分析し、一体何が求められているのか、どんな学習をすればいいのかを、具体的にお伝えしてきました。会員むけのセミナーはほとんど終了しましたが、外部生対象のセミナーは、3月末まで続きます。

 最近の問題を見ていくと、実に工夫されたいい問題がたくさん出されています。いい問題というのは、子どもにとっては厄介な問題で、一度もやったことのない問題と映ります。それだけ学校側も入試問題の作成には神経を使っているようで、相当研究しているのではないかと思います。33年間、小学校の入試問題を追いつづけ、子どもを指導する立場から分析してきた経験から言えば、これからの入試問題は、あらゆる面で、「論理的思考力」が求められていくのではないかと予想しています。知能検査の問題がベースになっていた時代・たくさんのペーパー問題が課せられていた時代・その反省の上にたって個別テストが盛んに行われていた時代・そして行動観察が重視され、少ない枚数ではあるけれども「論理的思考力」が身についているかどうかが問われている現在の入試。入試問題の変遷は、ある意味で時代の学力観を反映しているといっても過言ではありません。
 現在の入試で問われている能力は、パターン化したペーパートレーニングによって身についた能力ではなく、具体物に即して、ものごとを筋道立てて考えていく「論理的思考力」です。それは言葉を変えて言えば、ある物事を違った視点で捉えたり、時間を戻して考えたりといった、「可逆的」思考力(ピアジェ)です。私が担当している雙葉小学校の今回の入試問題を分析していくと、話の内容理解の問題にも、数に関する問題にも論理的思考力が求められていることがはっきりと見て取ることが出来ます。そうした問題が出されていく背景には、日本の子ども達の学力が低下している最大の原因は、応用力のなさ、つまり論理的思考力の欠如があるという認識を学校側がもっているからに他なりません。

 このように、学校側が子どもたちに求めている能力に変化があるにもかかわらず,相変わらず小学校の入試対策はペーパートレーニングで十分と考え、毎日過去問を何十枚とこなすことが入試対策だと考えている指導者や、母親が多いのには驚きます。そんなトレーニングで合格できた時代はもう過去の話です。今は、どの学校も年齢にふさわしい、論理的思考力をしっかり身につけた子どもを求めています。機械的なペーパートレーニングではなく、物事に働きかける経験を十分もたせ、試行錯誤させる中で物と物との関係を発見し、一つの物を違った視点で見ることのできる能力を育てることが要求されています。そのためには、どうしても「事物教育」・「対話教育」が必要です。過去問を解く方法を教え込むのではなく、初めての問題にぶつかっても、自分の力で解いていくだけの応用力を系統的な指導で育てていく事が大事です。

PAGE TOP