ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

正しい合格者数の発表を

2005/02/10(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可
 先日ある大手の資格試験予備校が合格者数の水増し発表で摘発され、公正取引委員会の排除命令が出される予定であることが報道されました。私は,かねてから民間の教育機関が発表する合格者数の取り扱いに深い疑念を持っていました。とりわけ、小学校入試にかかわる合格者数の発表の仕方はまったく不透明であるとしかいいようがありません。私は以前、中学校入試の指導にも携わった事もあり、私塾の集まりにも参加したこともあります。その時、中学校入試の合格者数の発表の仕方について、ある申し合わせ事項のようなものがあったように記憶しています。「その塾の基本クラスにある一定期間在籍し、定期的に授業を受けた者を合格者数としてカウントする」というような取り決めがあったように記憶しています。今は、中学校入試には関わりがありませんので、塾間でどのような取り決めがあるのか分かりませんが、小学校入試については多分そのような動きすらもないのが現状ではないかと思います。ですから、公開模擬テストを1回でも受ければ合格者数にカウントしたり、正確な数字を出さないで、定員の何パーセント合格とあいまいな表現をしたり、パンフレットの片隅に小さく5年間の累計であるとうたったり・・・といろいろな細工をしています。

 また、ある塾のチラシを良く見ると、一人の子どもが漢字と・カタカナで表記されていたり,友達の名前を貸してくれないかと合格者のお母さんに頼んだり・・・とまったくひどい状況です。小さな塾や個人塾の先生方が正直に合格者数を発表しているのに、講習会や模擬テストで大勢の子どもたちを集めている大手塾が、水増しがまいの合格者数を発表していたのでは、まじめに発表している塾の数字すらも、保護者の方から信用されなくなってしまいます。早急に、ルール作りをしなくては、業界全体が疑いの目で見られてしまいます。

 こぐま会では、これまで会員のみの合格者を発表してきました。ただ会員といっても2年以上在籍している子もいますし、ごく少数ですが年長の4月以降に入会する子もいます。ですから、今年からはっきりと「5カ月以上在籍し、定期的に授業を受けた子ども」の結果を合格者数として発表するという自主ルールを掲げました。私たちは昨年9月、吉祥寺に分校を開校し、直前講座も行いました。入試まで、6~10回の講座を受けた受験生が120名ほどいます。その子たちの合格実績は地域性を反映して、恵比寿本校では見られない合格校の傾向がありますが、その結果は外向けに発表している23期生の合格者数(別掲)にはカウントしていません。2ヶ月だけの在籍で合格者数に入れるのは、教育期間としてあまりにも短すぎると考えるからです。

 ところで、こぐま会ではテスト会員というシステムがあり、定期的にテストを受ける受験生が毎年120名ほどいます。入試が終りますと、こちらからお電話で入試結果をお尋ねすることがありました。しかし、それは合格者数にカウントする為に電話調査をしているのではなく、来期のテスト時の資料として、何点取った子はどこの学校に合格したかをお知らせする資料作りのために行ってきたわけです。

 1回テストを受けただけで会員とし、合格者にカウントするという神経は、現場に立って子どもたちの教育にかかわっている者から見るとまったく異常としかいえませんし、そんな感覚でいい教育など出来るはずもありません。しかし、幸いなことに、子どもの教育を真剣に考えている保護者の方たちは賢く、しっかりと見抜いていますから、そんな合格者数を信じて入会することはまずありません。

 入試を目指す子どもたちを預かる教育機関にとって、合格者数はその塾の評価を左右する重要な指標です。だからこそ、どの学校に何名合格したかが大事なわけですが、その数自体が正確さを欠いていたのでは、誇大広告といわれても仕方ありません。子どもに真実を教えるはずの教育機関が、合格者数を偽って発表していたのでは話になりません。そんな教育機関で、子どもにとっていい教育が出来るわけがありません。

PAGE TOP