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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

その他:手先の巧緻性と行動観察(桐朋学園)

第59号 2007/02/02(Fri)
齋藤 洋
その他:手先の巧緻性と行動観察(桐朋学園)
◎トンネル作り

※見開きの新聞紙をひとり1枚ずつもらう。

半分に折ってから、真ん中に自分が通れる大きさの丸い穴があくように、手でちぎる。


※失敗したら、先生に言えば何枚でも新聞紙はもらえるので、うまくいくまで挑戦する。

 特に難しい課題には感じられないかもしれませんが、実は大人でも失敗する場合がある作業活動です。どこが難しいのでしょうか?

 まず第1に、その作り方です。半分に折ってちぎり、穴を開けるので、線対称の考え方が必要になります。折った部分を含む半円にちぎることで、開いた時に中心に円ができるのです。図形課題の中でも難問です。
 第2に、半分に折るので2枚重なっていて厚くなっている点です。これをちぎるのは、幼児の力ではかなり大変なことです。
 第3に、自分が通れる大きさが、どれくらいなのかという判断ができるかどうかです。幼児であっても余裕で通れる大きさの穴はかなりの大きさになります。でも実際に通ってみないと分からない子が多いでしょう。
 第4にちぎる作業量が多いことです。折紙をハートにちぎるくらいは経験したことがあるかもしれませんが、この課題はその比べものになりません。
 第5に、1から4までは何とか大丈夫だとしても、何度も失敗する可能性が高いのです。それは新聞紙という素材だからです。お母さま、お父さまも、実際にやってみてください。すぐに分かります。

 新聞紙の紙の繊維は縦方向に並んでいます。ですから縦方向には、直線的に裂きやすいのですが、逆に横方向に思い通りに裂くことは、不可能に近いのです。
 問題では、「丸い穴を開ける」とあります。横方向どころか、新聞紙の縦方向の繊維の並び方を無視して、あらゆる方向にちぎることになります。それをうまく行うためには、縦方向に裂けようとする新聞紙の裂け目を、両手の指全部を使って押えつつ、少しずつ向きを変えながら、親指と人差し指でちぎり進んでいくしかありません。幼児の小さい手でこの作業をするには、忍耐力と集中力が極めて重要な要素になります。新聞紙は何枚でももらえますが、それでもできなかった子もたくさんいたはずです。

 手先の巧緻性の課題には、3つの種類があります。それは次のように分類できます。

 (1) 小学校入学後の作業活動につながる力を見る課題
 (2) 日常生活の中で必要な、巧緻性を身につけているかを問う課題
 (3) 明らかに難しいことに、どのように取り組むかを見る行動観察的な課題

(1)は、以前からよく出題されていた次のようなものがあげられるでしょう。

ハサミ切り・色塗り・運筆

 幼稚園や保育園によっては、この作業活動をよく行っている場合といない場合があり、受験を目指すならばあえてしっかり練習しておかなければならないものです。

(2)もよく出題されているものですが、これは家庭や幼稚園・保育園で、必ずやっていること、またしっかりやっていて欲しいことです。例えば箸使い、衣服の着脱、お片づけです。お片づけの中には、次のようなものも含まれます。

洗濯物をたたむ・入れ物にものを入れる(詰める)・紐結び・紐通し・束ねる 等

(3)は、最近の入試に少しずつ増えてきたものです。全く手が出ないということはないのですが、幼児にはやや難しい作業活動が含まれているため、工夫や頑張りが求められています。そして上記のトンネル作りは、これに分類できるものです。  これは行動観察です。できるできない以上に、その取り組み方が見られています。初めは失敗しても良いのです。でも次にどのようにしたら良いか考え、いろいろ工夫し、そしてさらに最後まで諦めないで一生懸命取り組むことが大切です。

 最近の子どもたちは結果を急ぎ、だめならすぐ諦める傾向が強いようです。そのあたりを桐朋学園は一人一人の作業活動からチェックしようとしているのでしょう。こぐま会の手先の巧緻性教材だけでなく、普段の生活の中で巧緻性課題にできるだけたくさん取り組ませてください。

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