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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

未測量:重さの理解(白百合学園小学校)

第1号 2005/04/14(Thu)
齋藤 洋
未測量:重さの理解(2005年度 白百合)
  • 車の前後に紐がついていて、その先に大きさの異なる玉がついている。それが机の両端から下にぶら下がっている。車はどちらに動くか、矢印にをつける。
  • 2台の車に大きさの異なる玉がついている。それが机の片方の端から下にぶら下がっている。どちらの車が速く動くか、車にをつける。

 白百合は、変わった問題をよく出す学校です。その特徴は、子どもが実際には経験したことがないと思われる、一見無理のありそうな問題です。でも本当に子どもたちには無理な難問なのでしょうか。

 子どもたちは、生活の中でよく失敗をします。物を運んでいるときに落としたり、テーブルの上の物を持とうとして、ひっくり返してしまうなど、失敗の専門家です。特に物が重い時、軽い時の違いによる失敗は、数え切れないほど経験しているはずです。その体験と感覚を、ペーパー上の錘のついた自動車に当てはめることはできないでしょうか?

 こんな失敗が起こった時、「よく注意しないからだ。」と叱るだけでは、どうしてそうなったのを理解することはできないかもしれません。その失敗の理由として、ものの形状・重さ・手の力の入れ加減、移動する方向などなど、子どもに分かりやすい説明をしつつ、「気をつけて丁寧にね。」と促すことで、子どもは、「物と力の関係」を知る、そのきっかけをつかむことはできるはずです。

 また小学校受験対策としては典型的なものに、シーソーの重さ比べがあります。この学習の際に、実際に2つのものをシーソーに乗せて比べる経験をしている子は、重さの差が大きい時、勢いよく片方が下に下がることを知っているはずです。その経験が、車と錘の関係と同じことであることは分かりそうです。

 これは多くの幼児教室が行っているような、ペーパートレーニング中心の学習では、決して味わうことのできないもので、シーソーを実際に使っているからこそ感じることのできるものでしょう。2つ~4つのものの重さを比べる問題は、シーソーの典型的な入試問題ですが、ペーパーでの練習が多くなりがちで、どうしてもパターン学習になりやすいのです。実際に重さ比べをすれば、そのシーソーの関係推理以上の、もっとリアルな関係性の理解が可能なのです。勢いよくシーソーが反応するという経験から、錘の重さと車のスピードを関連付ける力です。

 このように、実際の経験の中から、物事の原理や、原因と結果を結びつける力を養うことは、将来必要となる、論理的思考能力を伸ばすために、幼児期には欠くことのできないことだと、我々は考えてきました。

 そして最近は、小学校の入試問題にも、その論理的思考能力を求める問題が、とても多くなりつつあるのです。まさに我々の考えに、時代が追いついてきたと感じています。

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