週刊こぐま通信
「代表のコラム」架け橋期の教育を考える(5)
身体を使い、手を使い、頭を使って学びを深める 3段階学習法
第953号 2026年9月1日(火)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可
架け橋期の教育をめぐって公開され始めているカリキュラムの多くは、これまでの遊び保育の伝統を引き継ぎ、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」に沿ってカリキュラムが構成されています。私も2017年から2022年までの5年間、「大阪市保育・幼児教育センター」の活動に特別参与として関わった経験から、保育園・幼稚園の先生方と小学校の先生方が協力してカリキュラムを作成する現場に立ち会ってきました。いま公表され始めているパイロット園のカリキュラムも同じような考え方で作成されていますが、小学校へのつなぎとして考えた時、多くの保護者の皆さまが関心を持たれている「学力」の育成にどのような道筋で関わっていけるのかが明確になっていないことが、私が不満を感じている点です。もう少し具体的に述べると、一つには小学校に上がってからの学力問題がしっかりと分析されていないことがあります。そしてもう一つ、そもそも「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は遊び保育を基本としているため、将来の学力につながるプロセスが明らかになっていないということがあるのではないかと思います。日々の活動経験をどのように小学校の学びにつなげていくか・・・それが架け橋期の教育のはずなのに、架け橋を渡る前の姿しか明らかにしていないとすると、どのように橋渡しをするのか、そこが「教育」の力で引き上げる見せ所のはずなのに、学びの視点だけを提供する形で終わってしまっているのではないか、そうであるならば、小学校側からもっと幼児期の教育に注文を付けるべきだと思います。幼稚園では机に向かう学習はしない、逆に小学校では机に向かう学習しかしない・・・この間違った発想を変えていかない限り、架け橋期の教育は実現できません。そのことを考えると、私たちが年中から年長にかけての指導に用いている「セブンステップスカリキュラム」を年長と小1の架け橋期の教育プログラムに改編し、活用できるのではないかと思います。
ところで、前回のコラムで述べた教育方法についてもう一つ大事な視点があります。それは、私たちが「3段階学習法」として実践している手法です。いま幼児期の学びの多くがワークブックを使った方法で行われています。通信教育をはじめ、家庭用の学習教材もほとんどがワークブックですし、最近ではそれが進化してタブレット端末を使った学びへと発展しているように思います。しかし、これも前回述べているように、幼児期の学習は事物教育を基本とすべきですし、もっと言えば子どもたちの遊びや生活体験を基礎とすべきです。また、具体から抽象への道筋もしっかり踏まえないといけません。そこで私たちが考え出したのが「3段階学習法」です。すなわち、一つのことを理解させるのに、「身体を使い」「手を使い」「頭を使い」という3つのステップを踏まえた学習をするということです。たとえば未測量の「重さくらべ」では、次のように学びを深めていきます。
重さという目に見えない量を学ぶ場合、まず体で感じてもらうために、紙袋や箱を実際に持って重さを感じ、比較してみる。そして三者の重さの関係を、シーソーを実際に操作して考える。最後にその経験を生かしてワークブックで考え方を定着させる。特にシーソーを自分で操作し、試行錯誤しながら答えを導き出すところに一番時間をかけて行います。
現在の幼児の学びの多くが、最後の「頭を使い」のところから学びをはじめ、「身体を使い」や「手を使い」の部分を教育の課題としていません。その最たるものが、受験対策の指導で行われている「ペーパー」といわれるプリント学習です。つまり幼児の学習でありながら、小学校と同じ「教科書とノートを使って・・・」の方法しか行っていないのです。これでは、自ら答えにたどり着くために大事な「試行錯誤」する時間が与えられていません。こうした間違いに気付かないと、架け橋期の後半の教育が結局従来の小学校の学びのスタイルに陥ってしまう危惧さえ感じられます。「身体を使い」「手を使い」「頭を使い」の時間を大事にする幼児教育でないと、結局ペーパー主義の教え込みの教育が蔓延すう結果になってしまいます。3段階学習法は、子どもが物事を理解する道筋に沿った大事な学習方法だと確信しています。
