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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

架け橋期の教育を考える(4)
TRIAL AND ERRORの大切さ

第952号 2026年8月18日(火)
こぐま会代表  久野 泰可
 生活や遊びの中で経験したことを、学習の基礎として定着させるためには、教育の力が必要です。それは、なんでも経験させればいいという荒っぽい捉え方ではなく、経験を踏まえた系統的な学びです。その教育方法は、試行錯誤しながら自ら答えを導き出す「事物教育」です。事物教育では知識を与えるのではなく、自ら物事に働きかけ、ものの関係性を自ら発見していく経験を大切にしています。そうした経験で獲得することができる「考える力」は、紙やタブレット端末を使った知識の伝達や、解き方の教え込みなどで得られるものではありません。私がメソッドを構築するために学んだピアジェは、知識には次の3つの種類があると述べています。

 1 物理的知識
 2 社会的(慣習的)知識
 3 論理数学的知識

このうち、物理的知識と社会的知識については、その源は自分の外にあり、それを学ばなければなりません。ただ、論理数学的知識の源は自分の頭の中にあり、それは自らが物事に働きかけて物事の関係性(分類・順序づけ・数量的関係づけ・空間的関係づけ・時間的関係づけ)を自分で構成していかなければならないと述べています。つまり私たちが「生活 他」領域で設けている「理科的常識」や「社会的常識」は、その知識を学び吸収していかなければなりませんが、物事の関係性をつかむためには物事に働きかける試行錯誤の経験がどうしても必要です。

私たちは自分たちが受けてきた教育を振り返り、学校での学びは「教科書とノートと鉛筆」さえあれば可能であると考えがちです。しかし、架け橋期の基礎教育はそのイメージを壊し、日常生活で使う事物も大事な教材であると考えなくてはなりません。「自らの力で獲得する」ための「TRIAL AND ERROR」はペーパー教材では成立しません。そのため「架け橋期の教育」は、従来の学び方のイメージを壊し、「事物教育」を徹底する必要があります。

海外から視察に見える教育関係の皆さまがKUNOメソッドを評価してくださる最大のポイントは、この試行錯誤による学びなのです。学力世界一といわれるシンガポールの幼児教育関係の方も、またマレーシアで複数の幼稚園を経営されている園長先生も、KUNOメソッドによる授業をご覧になって、異口同音にこの「TRIAL AND ERROR」の学びを評価されていました。40年も実践を積み重ね、当たり前のように行ってきた「事物教育」がこれほど評価されるとは・・・逆に私たちの方が驚かされています。

では、実際どのような授業が行われているのか、「図形」領域のカリキュラムをご紹介します。
step2-4 図形 「立体構成」
 (1) 秘密袋

 右手と左手を両側から入れることができる袋の中に、いくつかの立体物が入っている。手探り(触索)をして、教師が示した形と同じ形を取り出す。

 (2) 立体の特徴

 球・立方体・直方体・円柱・円すい・三角すいなどの立体を比較して、似ているところと違うところを説明する。

 (3) 円柱・円すいづくり

 見本を見ながら、粘土で円柱や円すいを作る。

 (4) つみ木の構成

 8個の立方体のつみ木を使って、見本と同じ形を構成する。

・教師がつみ木を動かしているところを見て、一緒に動かす。 ・積まれた見本を見て作る。
・カードの見本(絵)を見て作る。 

図形の学習を大きく分けると、平面図形と立体図形になります。上の立体構成の授業では、まず「秘密袋」を使って、触索だけで形の特徴をつかむ練習をします。そのうえで、今度は立体物の中でも特徴的な円柱と円錐を、粘土で使って作ります。目で見て形の特徴をつかむだけでなく、実際にその形を粘土で作るという経験を持たせます。その後、立方体のつみ木8個を使って、見本と同じ形を作る練習をします。こうした経験の過程で立体の特徴をつかみ、立体感覚を身につけます。

私たちの教室では、これを年長児クラスで行っていますが、小1のスタートカリキュラムとして行っても十分意味があるものだと思っています。身の回りに図形感覚を磨く素材、例えば、粘土・つみ木・パズル・折り紙などがたくさんあるのに、小学校の図形学習ではそうしたものをあまり活用していません。図形に関する知識を教え込む授業が多いからです。私たちは架け橋期の教育は、ここに掲げたようにいろいろな具体物を使って学習すべきだと考えています。「TRIAL AND ERROR」の学習が、図形感覚を磨く意味でもたいへん大事だと思います。
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